「飲食事業者等における ベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」を読み解く
こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。
2020年4月2日に観光庁が下記を発表致しました。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_000326.html
協会、議連、認証、動物愛護団体等様々なプレイヤーが混沌とする状況下で、観光庁がいよいよ「飲食店等における外国人ベジタリアン・ヴィーガン対応ガイド」を発表致しました。
本日はこちらについて、フードダイバーシティ株式会社として考察したいと思います。
ベジタリアン・ヴィーガンの人口は、総人口の伸びに対しては増えてないが、欧米では20年で約2倍に増えている
昨対+1%の増加率だと少し分かりにくいので、20年対比で計算をしてみました。欧米で考えると1998年3,700万人が、2018年で7,200万人となっており、この20年で見ても+94.6%(約2倍)の成長となっています。
数字上は2018年、ベジタリアン全体比でいくとアジア(大半がインドや台湾で主に宗教的な理由)が79%なので、メインの市場はアジアではありますが、1998年から2018年の伸び率でいくと+11.0%です。人口増加率と比べても市場を押し上げているのは欧米という整理ができます。個人的にも今後環境対策や動物愛護などの観点から欧米のベジタリアンは増え続けることが予想しています。
参考)弊社のまとめた各国のベジタリアン・ヴィーガンレポート
・香港レポート
https://fooddiversity.today/article_45572.html
・台湾レポート
https://fooddiversity.today/article_24246.html
・インドレポート
https://fooddiversity.today/article_10389.html
・ニューヨークレポート
https://fooddiversity.today/article_35487.html
・シドニーレポート
https://fooddiversity.today/article_43563.html
・北京レポート
https://fooddiversity.today/article_50196.html
日本人のベジタリアン・ヴィーガン率が4%、まずはしっかりと狙うべき国内需要
(参考値となっておりますが)日本人の25人に1人である4%がベジタリアン・ヴィーガンということを考えると、まずは国内需要をしっかりと見据えた戦略を作るべきだと思います。インバウンドのベジタリアン・ヴィーガン数は145万人~190万人ですが、日本人口1億2,000万人と計算して4%であれば480万人、且つ当たり前ですが長期滞在者ですので、優先順位の高さは明らかです。
続いてインバウンドで考えると隣国台湾にベジタリアン(宗教的な理由)が多いのは周知の通りですが、中国の4%も見逃してはいけない数字でこの隣国2つで全体の約60%です。また、今回のコロナウイルスの影響で、個人的には今後中国人のベジタリアンも増えていくのではないか予測しております。
「要望があればベジタリアン対応する」だと約半数のベジタリアン・ヴィーガンが来店前に離脱
とても重要なポイントです。「要望があればベジタリアン対応する」という方針のお店様も多いですが、当然それを一切否定するわけではありません。しかしベジタリアン対応ができるということをサイトや店頭などでアピールしないと「約半数のお客様を取りこぼしますよ」という話です。どうやってアピールするかについては、店頭に表記をしたり、ベジタリアン・ヴィーガン表記の入ったメニュー表を作ったり、TripAdvisor、GoogleMAP、HappyCow等に登録することなどが挙げられます。もちろんこれはベジタリアンが混じっている団体にも適用する話であり、例えば10人の団体のうちに1人がベジタリアンだとした場合に「要望があればベジタリアン対応する」だと1人ではなく、10人の団体ごと取りこぼしてしまう可能性があります。ここを取りこぼしているお店さまは非常に多いと私は感じていますので、対応できるお店はまず表記から是非とも進めていきましょう。
肉や魚との調理器具併用は21%の人が許容できない
これもとても興味深い数字です。単純比較は出来ませんが、感覚的にイスラム教徒でいくと95%以上が嫌がるであろう調理器具の併用について、ベジタリアン・ヴィーガンについては21%が入店しないということです。仮説ではありますが、併用を嫌がるのは動物愛護背景のベジタリアン・ヴィーガンの方々ではないかと推測しています。もちろんその21%のお客様を獲得したければ、調理器具等をしっかりと分ける必要はありますが、まずは79%のお客様からスタートするというのも一つのやり方ではないでしょうか。調理器具問題で検討に詰まるケースは多いですが、こういう数字が出てくると企業はとても検討がしやすくなると思います。
ニーズをしっかりと捉える重要性
ベジタリアン・ヴィーガンの方はどういったものを食べたいのか?やはり一般外国人と同様で食べたいものは「日本人が普段カジュアルに食べている和食」です。
おにぎりが3位?味噌汁が5位?普通の日本人の感覚では「それでいいの?」という感じだと思いますが、数字がニーズの高さを証明しています。
ベジタリアン・ヴィーガンのお客様だからといって、日本側は未知の領域で料理に挑戦するわけではありません。「日本人が普段カジュアルに食べている和食」を少しアレンジするくらいです。ちなみに「サラダ、生野菜」などはランク外であり、そういったものを求めているわけではないことも分かります。
また、ベジタリアンオプションがないために食べなかった人は55%となりますが、海外ではメニューに「Can be changed Veg」などはよく表記されており、お肉をキノコなどに変更するサービスが一般的です。それだけで半数以上を取りこぼさないので、変更できる場合はそのような表記をしっかりと行うことを強くお勧め致します。
明確で分かりやすい対応方法、手順
何から始めるべきか、どこまで対応すべきは各お店さまが決める話です。「あれが正しい、これが正しい」といういろんな意見が飛び交う分野ではありますが、国の方針通りABCの手順通りでまずはスタートラインに立つことができます。
圧倒的な口コミの信頼度
おそらく一般的な外国人のお客様よりも、集客においては口コミ及び、口コミサイトが重要になります。
特にHappyCowでのコメントを見ていると、味や接客の前に「このお店はヴィーガンのことをよく分かっている」などのコメントが目立ちます。ベジタリアン・ヴィーガンにとっては「安心して食べられるお店」だということを注文前にしっかりと示してあげることがポイントになります。そうなると「あのお店はしっかりと分かっている」と周りの方に伝わっていきます。もちろん「あのお店は全く分かっていない」となった場合、悪い噂もすぐに広がるので要注意です。
以上となります。
以上、長文乱文となりましたが、ベジタリアン・ヴィーガンのことを正しく理解し、正しく訴求することがとても重要だと考えております。
ご覧になっていただいた皆様のベジタリアン・ヴィーガン事業がうまくいくことを心より願っております。