基本的に誰も教えてくれないがとても重要なこと

日本の外食産業は大きな転換期を迎えています。これまで国内の飲食市場は、日本人を主なターゲットとして成り立ってきました。しかし、少子高齢化の進行により、これから日本人の胃袋の数は間違いなく減少していきます。そうした状況の中で、多様な食文化を受け入れる「フードダイバーシティ対応」が料理人にとって大きな差別化ポイントとなる時代が訪れています。

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日本人の胃袋が減少する中で、インバウンドが経営の鍵に

日本の人口は減少の一途をたどり、それに伴い飲食店の潜在的な国内顧客数も減っています。この流れを考えれば、これまでのように「日本人客だけで成り立つ」ビジネスモデルは限界を迎えつつあります。こうした中で、海外からの旅行客、いわゆるインバウンド市場の獲得は今後さらに経営上の重要なポイントとなります。

特に、ベジタリアン、ヴィーガン、ハラール、グルテンフリー、アレルギー対応など、多様な食のニーズに応えることで、訪日外国人に選ばれる飲食店になれる可能性が広がります。この視点を持つことが、料理人にとっても経営においても必須のスキルとなるでしょう。

料理人の上司や先輩はフードダイバーシティについて教えてくれない

現在の日本の飲食業界では、上司や先輩からフードダイバーシティ対応を学ぶ機会はほとんどありません。なぜなら、彼らが飲食業界に入った頃は、食の多様性に対応しなくても経営が成り立っていたからです。「外国人客の対応は面倒」「食材の調達が大変」「知らないことに手を出したくない」「何かあっても責任取れない」「うちの料理が食べられない人は来なくていい」といった考え方が根強く残っています。

しかし、今の時代においては、こうした姿勢を続けていると競争力を失うリスクが高まります。若い世代の料理人は、この分野を避けるのではなく、新たなスキルとして積極的に学び、実践することが重要です。

料理学校ではフードダイバーシティを学べない(学べても知識のみ)

料理学校では、基礎知識や調理技術は学べるものの、フードダイバーシティ対応についてはほとんど教わる機会がありません。仮に学ぶとしても、基本的には座学中心で、実践的なアプローチには乏しいのが現状です。

フードダイバーシティ対応に関して、「Can eat」(食べられるもの)を知ることは比較的容易です。しかし、本当に求められるのは「Want to eat」(食べたいと思うもの、旅の目的地にしたいと思うもの)を提供することです。これは、単なる知識ではなく、実際に試行錯誤し、経験を積み、探究し続けることでしか習得できません。

ちなみに、アメリカの有名な料理学校では、ヴィーガンをはじめとするフードダイバーシティに関する授業が週に1回、通年で行われており、非常に重要視されています。

フードダイバーシティ対応は若い世代の料理人の差別化ポイントになる

これまでの世代の料理人がフードダイバーシティ対応を重視してこなかったからこそ、 若い世代の料理人にとっては差別化のチャンス です。例えば、一般的な調理スキルに加えて「ヴィーガンメニューが作れる料理人」「ハラール対応ができる料理人」というスキルを持っていれば、国内外のレストランやホテルで求められる人材になることができます。

さらに、フードダイバーシティ対応は 単なるビジネスチャンスではなく、食文化の発展にも貢献 します。日本の食文化を世界に広めるためには、多様な価値観を受け入れ、それぞれのニーズに応える柔軟性が必要です。

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「こうでなくてはいけない」という考えではなく、柔軟性を持つことが重要

伝統的な料理の世界には、「こうでなくてはいけない」「こうあるべきだ」という固定観念が根強く残っています。しかし、 これからの時代を生き抜くためには、柔軟な思考が不可欠 です。食の多様性を受け入れることは、料理の可能性を広げ、新しい顧客を獲得することにもつながります。

例えば、「出汁はかつお節を使うべき」という考えに固執してしまうと、何も変えることができません。しかし、昆布や干し椎茸をはじめとする、現代にある様々な食材を活用すれば、美味しくて満足度の高いヴィーガン対応の出汁を作ることができます。このように、 伝統を守りつつも、新しいニーズに対応するための工夫を取り入れることが重要 です。

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まとめ:フードダイバーシティ対応ができる料理人は、これからの時代に必要とされる

日本人の人口減少が進み、インバウンド市場がますます重要になる中で、 フードダイバーシティ対応ができることは、料理人にとっての大きな強みになります。 料理人の上司や先輩も、料理学校も教えてくれない分野だからこそ、 自ら学び、経験を積むことが差別化につながる のです。

フードダイバーシティ対応は「特別なこと」ではなく、「これからの時代を生き抜くために必要なスキル」です。 「こうでなくてはいけない」という固定観念を捨て、柔軟な視点を持つことが、これからの料理人に求められる資質 なのかもしれません。