2022年のベジタリアン・ヴィーガン市場を予測

こんにちは、フードダイバーシティ株式会社の守護です。弊社はベジタリアン・ヴィーガンをテーマにメディア、コンサル、商品開発事業を展開しております。

2020年のコロナ突入を皮切りに、世界的に「代替肉」や「ベジタリアン・ヴィーガン」需要が急成長を遂げており、2021年の9月現在においても止まる所を知りません。

時期的にはまだ少し早いかもしれませんが、今回は弊社が考える「2022年のベジタリアン・ヴィーガン市場予測」というテーマで6つの予測をまとめました。

2023年のベジタリアン・ヴィーガン市場予測はこちら

1.代替食品メーカーのジャンルが細分化されていく

インポッシブルソーセージ(VegNewsから引用)

近年の海外メーカーの動向を確認すると、「代替肉」の中でもジャンルが細分化されてきています。例えば、ビヨンドミートやインポシッブルミートも代替ビーフに次いで、代替チキンや代替ポークの販売を開始しました。また、代替肉メーカーが代替魚や代替乳製品を販売するケースも増えてきており、今後は「肉・魚・乳・卵」など、種別の垣根を超えた陣取り合戦が加速すると予想しています。

NEXTツナ(Next Meats PRリリースより)

ビヨンド・ミートがヴィーガンチキン市場に本格参入
https://fooddiversity.today/article_94393.html

インポッシブルフーズからソーセージ
https://fooddiversity.today/article_96557.html

ネクストミーツが代替肉に続き代替シーフード
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000062184.html

2.脱代替?加工度の低い商品に注目が集まるようになる

Actual Veggies HPより引用

製品情報データプラットフォームの「LabelInsight」は、2021年6月、主要小売企業のオンライン検索データを分析し、「代替肉」のトレンド調査を行いました。調査によると、「Meat Alternatives(英語で”代替肉”の意味)」の月間検索ボリュームは、Amazon内だけで「44,000件」を上回りました。本物同様の代替肉製品が増加する中、Amazon検索では「Bean Burgers(豆を使ったハンバーガー)」の検索数も1ヶ月で45%増加し、一部消費者の間では「加工度の低い商品」を求める層も一定数存在していることが分かりました。フードテックの発展により「リアルさ」に期待が集まる一方で、「ありのまま」を求める動きも増えてくるでしょう。

アマゾンの「代替肉」検索が急上昇?
https://fooddiversity.today/article_95907.html

日本の代替肉業界のこれまでとこれからを予測
https://fooddiversity.today/article_79941.html

3.日本のOLDフードテックが世界から注目される

とんぶり(キャビア風)エンドウ豆クリームとベビーレタス添え(Bloombergから引用)

米ミシュラン3つ星レストランの「Eleven Madison Park」が2021年6月の営業再開をきっかけに、ヴィーガンレストランとしてリニューアルオープンし、大きな話題を集めましたが、当店のメニューは「精進料理」や「日本文化」に強い影響を受けています。UmamiやDashiに対しても研究を重ねており、メニュー作りの際に、3ヶ月間、精進料理人の指導を受け、リニューアルオープンを迎えたそうです。

メニューの完成にあたって、二人の精進料理シェフを3か月レストランに招きました。私たちは7世紀の京都のお寺で培われた、野菜を美味しく食べる技術を学びました。
In preparation for the menu’s debut, two shojin chefs spent three months at the restaurant. The plant-based cuisine, which dates back to 7th century monasteries in Kyoto, is focused on rituals around cooking vegetables.
引用:Bloombergより

またヴィーガン対応レストラン世界1位に輝いた自由が丘 菜道の楠本シェフも「精進料理」や「日本の伝統的な食文化」に活路を見出しています。

「そもそも和食には精進料理という文化がある」という。「我々が日常的に食べている“がんもどき”は元々精進料理です。がんは鳥のつみれのことで、お坊さんが鳥のつみれの代わりに豆腐を丸めて揚げたんですね。『菜道』には鰻もどき料理があって外国の方にもすごく喜ばれるのですが、私の料理は精進料理を現代風にアレンジしたもので“上書き”している感じなのです」
引用:FNNプライムオンラインより

楠本氏は、日本の食文化の奥深さが、ヴィーガン対応の料理を開発する上で役立っていると分析する。例えば、菜道で使用する食材。各地域で使われている、乾物などの伝統食を活用している。九州産の干タケノコで作ったメンマは、独特の味わいや食感で好評を博しているメニューだ。
引用:事業構想より

世界のトップクラスのシェフは今「プラントベース」と「日本の伝統文化」の掛け算に注目し始めています。日本の生産者や食品メーカーにとっては新たな商機を掴むチャンスとなるかもしれません。

OLDフードテックとNEWフードテックについて
https://fooddiversity.today/article_93871.html

米ミシュランのヴィーガン対応
https://fooddiversity.today/article_92821.html

4.プロのシェフが参戦するようになる

Orsa & Winston ジョセフ氏(VegNewsより引用)

Eleven Madison Parkに加え、多くのミシュランレストランが次々にプラントベース市場に参入を決めています。ロサンゼルスでミシュランレストラン「Orsa & Winston」を営むJosef氏は、看板メニューで使用するチーズをヴィーガン仕様に変更し、海外メディアの取材に対して「お客様がヴィーガンか、フレキシタリアンかに関係なく、より多くの選択肢を提供していきたい」と語っています。

また、ロンドンでフレンチレストラン「Gauthier Soho」を展開するアレクシス氏は、Eleven Madison Park同様、リニューアルオープンに際し、完全ヴィーガンレストランへと業態変更を決めました。

プロのシェフが参戦することで消費者はより「質」を求めるようになるでしょう。

5.プラントベースの定義に対する見解が分かれ市場が混乱する

消費者庁 HPより引用

2021年8月20日、河野太郎氏が記者会見にて、「プラントベース食品表示の明確化」について言及しましたが、消費者庁のQ&Aを確認すると、「動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含めることとします。」という回答が掲載されています。Plant-based Foods Association(米国)をはじめ海外の関係団体はプラントベース=植物性100%と定義している場合が一般的であるため、消費者庁のような見解は世界的に見ると極めて稀な展開です。従いまして、今後プラントベースの定義に対する見解が分かれ、市場が混乱することが予想されます。

プラントベースフード協会 HPより引用

The Plant Based Foods Association defines plant-based as ‘foods made from plants that contain no animal derived ingredients’.(プラントベースフード協会はプラントベースを「動物性原材料を含まず、植物から作られた食品」と定義します)

日本政府がプラントベース食品表示の明確化を発表
https://fooddiversity.today/article_97006.html

6.自治体公募案件の「ベジタリアン単体」案件が減少する

2021年の時点で既に傾向が出てきているように感じますが、今後は以下のような理由から「ベジタリアン単体」よりも「食の多様性(フードダイバーシティ)の一環」という形でベジタリアン・ヴィーガン対応を推進するような動きが強まっていくでしょう。

立ち上がったばかりのときには特に何もないのですが、結果が出て注目され始めると「特定の主義・宗教への配慮」という声が地域から出てくることがよくあります。もちろん地域にはお肉やお魚に関係する事業者も多くいらっしゃるので、これらの動きを面白くないと感じる人も多く、その声は後押しもされやすいです。しかしハラールやアレルギー等も含めた「食の多様性(フードダイバーシティ)の一環」という形でバランスよく進めると、地域からの上記反対の声などなく進めていくことができます。つまりベジタリアン・ヴィーガン対応は「One of them」感を出しましょうという話で、自治体・行政が公平さを保つことで持続可能な取組みになっていくと考えています。(【自治体・行政・公共機関向け】ベジタリアン・ヴィーガン”単体”での取り組みをお勧めしない理由より

この記事のまとめ「2022年の市場予測」

    ①代替食品(肉、魚、乳、卵)内のジャンル細分化、垣根を超えた陣取り合戦が激化する
    ②「リアルさ」に期待が集まる一方で、「ありのまま」を求める動きが増え、「脱代替」や「加工度の低い商品」に注目が集まるようになる
    ③海外から日本の伝統文化に注目が集まる
    ④プロのシェフが参戦することで消費者はより「質」を求めるようになる
    ⑤世界と日本の間でプラントベースの定義に対する見解が分かれ市場が混乱する
    ⑥自治体公募案件の「ベジタリアン単体」案件が減少し「食の多様性(フードダイバーシティ)の一環」という整理が一般化する

著者

守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師

1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。

お問い合わせ
info@food-diversity.co.jp