精進料理の影響を受けたメニュー構成

2021年6月10日の営業再開をきっかけに「ヴィーガンレストラン」としてリニューアルオープンした米ミシュラン3つ星レストランの「Eleven Madison Park」。

海外メディアの報道によると、リニューアルオープンして早々15,000人が予約待ち状態という人気ぶりです。今回はBloomberg(ブルームバーグ)の記事を参考に、気になるコースの中身について解説していきます。

店内の様子(Bloombergから引用)

参考記事

・We Ate Eleven Madison Park’s $335 Vegan Menu, and Here Is What It’s Like
https://www.bloomberg.com/news/features/2021-06-11/eleven-madison-park-new-vegan-menu-review-from-opening-night

・米NYのミシュラン3つ星レストラン「Eleven Madison Park」がヴィーガンレストランに変更!その理由とは?
https://fooddiversity.today/article_88972.html

節々に感じる日本文化

結論から言うと、Eleven Madison Parkのメニューは「精進料理」「日本文化」に強い影響を受けています。

オーナーシェフのダニエル氏は、リニューアルオープン前のメニュー作りの際に、3ヶ月間、精進料理人の指導を受け、今回のオープンを迎えたそうです。

ダニエル氏はBloombergのインタビューに対して次のように答えています。

「”時間”こそ贅沢の新しい定義だ。神戸牛は高価ではあるが、レア(めったにないもの)ではない。一方で100年以上発酵させ続けているソースこそレアな存在だと思う。(Time is the new definition of luxury. “A piece of kobe beef is expensive but not rare. A 100-year-old fermented sauce is rare” )」

「精進料理人から学んだ仕込みの1つに、すり鉢で胡麻を擂るプロセスがある。毎朝1時間かけてすり胡麻の準備を行っている。」

Eleven Madison Parkのメニューには40人のシェフたちが費やした「時間」も表記されており、ダニエル氏の「時間」と「手間」に対する強い拘りが垣間見れます。

胡麻豆腐のグリル焼き カレー風味のカボチャソース和え(Bloombergから引用)

また、UmamiやDashiに対しても研究を重ねており、以前はカツオで味付けをしていた所をマッシュルームに切り替え土っぽさを演出し、プロバイオティクス食(良い細菌を含む食品:味噌、コンブチャ、テンペ等)を活用することで、より深いUmamiを引き出す工夫を凝らしています。

2日間かけて仕込んだ茄子のトマトとコリアンダー添え(Bloombergから引用)

ダニエル氏には「フェイク」や「もどき」に寄せないという拘りがありますが、1品だけ例外があります。それは、Umamiと塩味を引き立てるのに「とんぶり」を使用しているそうです。

とんぶり(キャビア風)エンドウ豆クリームとベビーレタス添え(Bloombergから引用)

今回の解説記事を執筆するに当たり、Bloombergの記事を参考にしましたが、”Shojin”や”Umami”といった、日本の食文化にまつわるキーワードが繰り返し使用されていたことに驚きました。ダニエル氏への取材記事からも分かる通り、世界の有名シェフも「プラントベース」×「日本の食材・食文化」に注目し始めていることが伺えます。日本の生産者や食品メーカーにとっては新たな商機を掴むチャンスとなるかもしれないので、ぜひ今後も世界の食文化のトレンドをチェックしていきましょう。

著者

山崎寛斗(やまざき・ひろと)
プラントベースジャパン株式会社 代表取締役
「プラントベースで日本と世界を繋ぐ」をテーマに事業を展開。 海外のプラントベース企業の日本誘致や訪日ベジタリアン向けメディアなどの事業を手掛ける。 著:東京食素!美味蔬食餐廳47選、關西食素!美味蔬食餐廳55選、東京および関西のベジタリアンガイドブックを台湾で販売中。
https://www.plantbased-japan.com/

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