フードダイバーシティ対応で見落としがちな落とし穴とは?
インバウンド需要の回復や食の多様化への意識の高まりを背景に、ヴィーガン・ハラール・グルテンフリー・アレルギー対応など、フードダイバーシティへの取り組みを始める飲食店・宿泊施設が全国で増えています。
しかし、現場での支援を通じて私たちフードダイバーシティ株式会社が何度も目にしてきたのが、「やったつもり」で終わってしまうことです。お客さまに求められているのは、提供者側の「やっている」ではなく、お客さま側視点でニーズを満たしていること、そして安心できることです。
メニュー開発はあくまでもスタートライン
「ヴィーガンメニューを作りました」「ハラール対応の●●を用意しました」
確かに、それは大きな一歩です。しかし、メニュー開発はスタートラインにすぎません。提供するまでの流れ、スタッフの理解、表示・発信、接客の準備など、“安心して提供できる”ための工夫が不可欠です。
ニーズのないメニューを作っていませんか?
「対応したのに注文されない」とよく相談をいただきます。よくよく話を聞いてみて、メニューを見せてもらうと残念ながら「これはニーズのないメニュー」というケースがほとんどです。つまり「Can Eat(食べられるもの)」ではあっても「Want to Eat(お金を払って食べたいもの)」ではないということです。
実際に求められているメニューは何か?対象の消費者はどこにいて、何を使って情報を探しているのか?どういった料理に喜んでお金を払うのかといった“お客様目線”の調査と設計が不可欠です。
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現場の意思疎通が取れていない
調理場は理解していても、ホールスタッフは説明できない。逆にホールスタッフは理解していても、調理場のオペレーションが間違う。
料理をつくる人とサーブする人の間で認識がズレていると、せっかくの対応がリスクにもなり得ます。フードダイバーシティ対応は、関わる全てのスタッフが共通認識を持ち、適切に連携できる体制があってこそ活きてきます。
オペレーションが追いついていない
メニューができたはいいけれど、材料のストック、提供時間、注文方法、スタッフの動線など、実際のオペレーションに落とし込まれておらず、現場では「実際には出せない」というケースが多く見られます。
たとえば、専用メニューに必要な材料の在庫管理がされておらず、注文が入った時に材料がない。あるいは、調理に通常の倍以上の時間がかかってしまい、ピークタイムには対応しきれない。さらには、注文方法が複雑で、スタッフも説明できず、お客様が戸惑う。そして、厨房とホールで情報共有がされておらず、現場が混乱する――このような“現場のリアル”は、決して珍しいことではありません。
「対応しているはずなのに、お客様からクレームが来てしまった」「特別対応の注文が来ると現場がピリつく」というような事態も、オペレーションと現実のギャップが生むものです。
やった“つもり”ではないフードダイバーシティ対応とは、メニュー開発だけでなく、日々の営業に無理なく組み込まれるオペレーション設計と、それを支える体制づくりが不可欠です。
社内で知識が属人化している
フードダイバーシティに関する知識や対応方法を把握している人が不在の際、お客様からの質問やリクエストに十分に応えられないというケースがあります。たとえば、ベジタリアンやヴィーガンの方が訪れても、「詳しい者がいないので対応できません」となってしまっては、せっかくの対応が無意味になってしまいます。
情報が届いていない
せっかく素晴らしい対応をしていても、ターゲット層に情報が届いていなければ存在していないのと同じです。ヴィーガンやムスリムのお客様は、SNSやレビューサイト、検索エンジンで「自分に合った店」を探しています。対応内容を多言語で、正確かつ魅力的に発信することで、ようやく「選ばれる選択肢」として認識されるのです。
よくPR TIMESなどのプレスリリースサイトで「ヴィーガンメニューを始めました」などのリリースを見ることもありますが、残念ながらそれがヴィーガンのお客さまに届くことはありません。
“続けられる”仕組みを整えるために
フードダイバーシティ対応に必要なのは、「理解している人が1人いること」ではなく、誰でも対応できる体制を整えること。
そのためには、現場の声に寄り添いながら、調査、設計、実行、発信を一気通貫で進めていく必要があります。
フードダイバーシティ株式会社では、全国の飲食・観光事業者とともに、実効性のある伴走支援を提供しています。やった“つもり”で終わらせない、成果をしっかりと出すための対応を是非とも一緒に取り組んでいきませんか。