ゴールから逆算して行動を決める

食の多様化を支援するフードダイバーシティ株式会社の守護です。

飲食店や宿泊施設がヴィーガンやハラールといったフードダイバーシティに対応する際、ゴールを「対応すること」とするのか、それとも「対応して結果を出すこと」とするのかによって、必要な取り組みが大きく異なります。

野球で例えると「野球のルールを学びバットを持つこと(対応すること)」と、「打席に立ってヒットを打つこと(対応して結果を出すこと)」に該当します。

重要となるゴール設定

ゴール=対応すること

ゴールが「対応すること」とする場合、基本的にはヴィーガンやハラールに関するルールや基準を学び、それを守ることが求められます。このアプローチでは、提供する商品がそれぞれの要件を満たしているかどうか、つまりCan Eatの状態になればそれ以上のことは考える必要はありません。

野球でいうなら、野球のルールを知って、ヘルメットを被り、バットを持った状態です。

ゴール=対応して結果を出すこと

ゴールを「対応して結果を出すこと」とする場合、単なるルールの遵守だけでは不十分です。このアプローチでは、お客様のニーズや味の嗜好をしっかりと把握し、それに応じた商品やサービスの提供をする必要があり、さらには内部のオペレーションも負荷がかからない形で作る必要があります。

野球でいうなら、相手投手の研究を行い、バッティング練習もして、試合に臨む状態です。

事例として

例えば、最近このようなことがありました。

ある飲食店様から、ハラールの対応に際して「ハラール醤油が手元になかったので、代わりに塩でメインの味付けをしました」と言われました。もちろん、ゴールが「対応すること」であれば、塩も当然ハラールなので特に問題はありません。しかしながら塩メインの味付けだと、多くのイスラム教徒のお客様に「Salty(塩味が強い)」と言われ、残される可能性が高くなります。

※日本人の塩摂取量は世界でもトップクラス(塩分摂取量の国際比較より)のため、日本人の塩味感覚は世界標準ではありません。

つまりゴールが「対応して結果を出すこと」であれば、このあたりの知識をしっかりと持っておく必要があります。

「対応して結果を出す」ために必要なこと

・基礎的な知識
・お客様のニーズや味の嗜好をしっかりと把握すること
・効率的なオペレーション作り
・社内教育、スタッフトレーニング
・適切な情報発信
・経営者から「長期的に取り組む」という明確なメッセージ
・ホール現場と料理現場の連携
・新しい情報を学ぶ意欲
・真剣さ
・お客様のとの信頼関係構築
・接客(必要最低限の英語対応等)

総じて、フードダイバーシティ対応は単なるルールの遵守を超え、お客様の期待を理解し、結果を出すための継続的な取り組みが求められます。これにより、顧客満足度を高め、長期的な成功を収めることができるでしょう。

著者

守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師

1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。

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