フードテックには二つの視点がある!?

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

最近様々なメディアでも「フードテック」という言葉を目にする機会がとても増えてきたと同時に、弊社フードダイバーシティ株式会社にもフードテック関連の問い合わせがとても増えてきました。そもそもフードテックとは、テクノロジーを駆使することによって、新しい食品や調理方法を開発することを指します。フードテックはこれから世界的に深刻化するであろう食糧問題を解決する方法としても、現在非常に注目を浴びています。また、環境問題が騒がれる中「ヴィーガン」という選択肢を選ぶ方々も増えている中で、味への追求にも期待される分野と言えます。

しかし、日本ではなんとなく「フードテック=新しい技術」となっているのを感じます。しかし、2021年6月からヴィーガンレストランになった米NYミシュラン三つ星レストラン”イレブンマディソンパーク“のダニエルシェフ、世界最大のベジタリアンアプリHappy Cowで世界一位の評価を獲得した”菜道“の楠本シェフは下記のように語っています。

現在私たちは発酵を研究しており、時間こそが最も重要な成分の1つであることを理解しました。
We are exploring fermentation, and understand that time is one of the most precious ingredients.
引用:Eleven Madison Park 公式HPより

”時間”こそ贅沢の新しい定義だ。神戸牛は高価ではあるが、レアではない。一方で100年以上発酵させ続けているソースこそレアな存在だと思う。
Time is the new definition of luxury. “A piece of kobe beef is expensive but not rare. A 100-year-old fermented sauce is rare”
引用:Bloombergより

メニューの完成にあたって、二人の精進料理シェフを3か月レストランに招きました。私たちは7世紀の京都のお寺で培われた、野菜を美味しく食べる技術を学びました。
In preparation for the menu’s debut, two shojin chefs spent three months at the restaurant. The plant-based cuisine, which dates back to 7th century monasteries in Kyoto, is focused on rituals around cooking vegetables.
引用:Bloombergより

「そもそも和食には精進料理という文化がある」という。「我々が日常的に食べている“がんもどき”は元々精進料理です。がんは鳥のつみれのことで、お坊さんが鳥のつみれの代わりに豆腐を丸めて揚げたんですね。『菜道』には鰻もどき料理があって外国の方にもすごく喜ばれるのですが、私の料理は精進料理を現代風にアレンジしたもので“上書き”している感じなのです」
引用:FNNプライムオンラインより

楠本氏は、日本の食文化の奥深さが、ヴィーガン対応の料理を開発する上で役立っていると分析する。例えば、菜道で使用する食材。各地域で使われている、乾物などの伝統食を活用している。九州産の干タケノコで作ったメンマは、独特の味わいや食感で好評を博しているメニューだ。
引用:事業構想より

今、世界最先端を走り、多くのお客様から評価されるレストランのシェフは日本に古くからある技術に注目していることが分かります。そしてそのシェフたちは、日本に古くからある技術のことを「フードテック」と呼んでいます。よって、私はフードテックには、日本が世界に追いつけ追い越せと奮闘する「代替肉・代替卵」等のNEWフードテックと、古くは肉食文化ではなかった日本で蓄積し、先人の知恵が詰まったOLDフードテックと、二つあると考えています。

OLDフードテックに代表されるもの

・発酵(醤油、味噌、納豆、漬物等)
・乾物(保存食としての使い方が主でしたが、濃縮された味と食感が再注目されている)
・寒干し
・精進料理
・加工技術(芋→こんにゃく、豆→豆腐 等)
・もちもちのお米を作る技術(海外のお米は水分量が少なく、おにぎりも難しい)
・UMAMI
・酢漬け、酢の物

※重複もあります

菜道は「OLDフードテック+α」、EMPは「自分の味+OLDフードテック」

菜道の楠本シェフは「精進料理を上書きしている」というお話をよくされます。その上書きとは現代食へのアレンジのことを指し、精進料理の技術をベースにして、ラーメンやカツ丼などと言ったいわゆる海外の方に浸透している和食にすることです。それが評価されて、菜道はHappy Cowで世界一に輝きました。

また、イレブンマディソンパーク(EMP)のダニエルシェフは、ヴィーガンメニューの開発に悩んでいたところ、ご自身の料理に「7世紀の京都の技術」を使うことで、味の限界から解き放たれたと仰っています。コロナ明けに再開したイレブンマディソンパークはすでに15,000人の予約待ちがあるようです。

和食のシェフと海外料理のシェフではもちろん基本的な考えは違えど、「OLDフードテック」を使って結果を出していることは共通しています。

地方がギャップを理解すれば、大きなビジネスチャンス

日本の地方では「新鮮な野菜」をアピールすることがとても多いです。もちろん大消費地までの輸送距離がない分、新鮮な野菜が食べられることはとても魅力的です。しかし、それは海外の方にとっては「自国でも地方の野菜は美味しい」という評価なので、それは既に分かっていることだったりします。

それよりも地方には「OLDフードテック」がたくさんあり、しかもその地方の気候や特色を活かした独自のものだったりします。海外の方にはそれこそが興味関心を高く持つ部分になります。しかし、地方の方にとって例えば乾物などでいうと「生で売れ残った野菜」くらいの評価しかなかったりします。また、古いお寺の精進料理なども「今の人たちはお葬式とかでしか食べなくなった料理」という評価しかなく、あまり旅行のコースなどにも入れられなかったりします。

今、世界最先端のシェフが注目している「OLDフードテック」は、地方の方にとっては当たり前すぎる、もしくはご年配の方が食べるものという認識になっていることが多くあります。これは非常にもったいないことだと私は感じており、ここのギャップを埋めて、農泊などでそれを歴史から伝えるなどのことが全国でできれば、地方創生の可能性は無限大になっていくと確信しています。

さらにOLDフードテックのものは新鮮な野菜とは異なり、もともと保存食の意味合いがあるので、お土産や輸出にも大変適したものだったりもします。

まとめ

下記、5点に今回の話をまとめます。
・日本のフードテックはNEWとOLDの2つがある
・世界最先端のシェフが注目しているのはOLDフードテック
・OLDフードテックは日本人にとっては当たり前すぎる、地方では「新鮮な野菜」の方が価値が高い
・これらのギャップを埋めるための、農泊などを絡めたビジネスはまだまだ伸びていく
・OLDフードテックで作られたものは元々保存食だったため、輸出にも適している

以上、長文となりましたが、ベジタリアン・ヴィーガンに取り組む企業様にとって、本記事が有益な情報となれば幸いです。