一つのテーブルを囲みたい想い

皆さんこんにちは。Food diverstiy.todayにて、アレルギーについての記事を書かせて頂いている香川です。
卒業論文
食物アレルギーの私がお店に求める3つのこと

前編https://fooddiversity.today/article_63777.html)では、食物アレルギーを持つ人が安心して食事ができたり友人とテーブルを囲めたりする場所をご紹介したい!という趣旨のもと、世界一のヴィーガンレストラン「菜道」さんの各メニューのご紹介をしました。中編https://fooddiversity.today/article_64222.html)では、その菜道さんの何よりもの魅力とは、ホスピタリティだと書きました。世界のヴィーガンレストランに輝いたその味は、技術力はもちろんとして、シェフと店長の強いホスピタリティマインドが具現化したものだと思ったからです。後編では、中編にも載せたアレルギー対応食の続きと、この場所が私の人生で一番のレストランになった理由をまとめてお伝えできればと思っています。

まずはアレルギー対応メニューの続きからです!
※掲載しているものは現在通常メニューにはないものとなります。料金、詳細等はお店にお問い合わせください。

サラダ(ごまドレッシング)

■サラダ(ごまドレッシング)
サラダなら野菜なのでどこでも食べることができる…かと思われがちですが、実はそうでもありません。市販のドレッシングには卵や乳成分が含まれているものが少なくないので、家でサラダを食べるときはいつも手作りです。外食をする際も、ドレッシングの原材料を確認する必要があったり、マヨネーズが添えられたりしていることが多いため、たとえ野菜でも気軽に注文することはできませんでした。なので、野菜をどのように味わうかの選択肢があるのが実は嬉しかったりします。この日は野菜自体の甘みも引き立つ和風のごまドレッシングでいただきました。

ラザニア

■ラザニア
まさか乳製品の塊であるこのお料理を食べられる日が来るとは思いませんでした!表面のサクサク感、ミートソース風のジューシーさ、チーズ風のトロトロさ、いろんな層がありました。下からすべて掬っても、一部だけでも、どの層もクリーミーで美味しかったです…!

ハンバーグ

■ハンバーグ
カレーやラーメンと並び、好きな食べ物ランキング上位でいつも見かけるハンバーグ。卵や乳製品が含まれているので市販や外食で口にすることはできませんでした!また、アレルギーではないのですが、一般的に食肉に使われる抗生物質に身体が反応してしまうことと脂が苦手であることから、普段からあまりお肉は摂らないようにしています。お肉を使わないハンバーグは抗生物質要素も脂身もないので、胃にもたれることなく美味しく頂けました。

アップルパイ

■アップルパイ
食べてみたかったけど食べられなかったスイーツの1つだったので、作ってもらえたことが嬉しすぎて涙が出ました。外側のサクサクカリカリのパイ生地と、その内側に包まれている柔らかくて甘いりんご。それぞれで食べると個々の美味しさが味わえ、あわせて食べると片方がもうひとつを引き立たせます。アップルパイが人気な理由が分かった瞬間でした…!

レモンパイ

■レモンパイ
レモンシャーベットを添えて。メレンゲも再現率が高いそうです…!(現物を知らないので又聞き風)
レモンの爽やかな酸味とクリームの甘さが混ざり、口の中で溶けていくその一瞬の甘酸っぱさがなんとも言えない魅力でした。私はマカロニえんぴつの「レモンパイ」という曲が好きなのですが、これを食べてようやく本当の意味でその曲を知れた気がしました。こうして味だけではなく、食べ物を通した表現の意味も教えていただけました。

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私のようにアレルギーを持っている人は、生死に関わってしまうので特別扱いしていただかなければ危険で困るのですが、わがままを言えるのならば、特別を感じさせないようにしてほしいというのが願いでもありました。みんなが給食を食べているなか一人だけお弁当だったり、それが理由で修学旅行に行けなかったり、友達とのご飯は断らなければいけなかったり。他にもたくさん、アレルギーを理由に諦めなければいけないことがたくさんあったからです。

大学時代には、長年悩んできた食物アレルギーとコミュニケーションをテーマとして卒業論文を書きました。その際のタイトルは「不自由を生きる」でした。(https://fooddiversity.today/article_62410.html)タイトルの通り、私は食物アレルギーを持って生まれたことによって「不自由」しか感じてきませんでした。何かを口に運ぶこと、誰かとコミュニケーションを取ること。生きていくためには欠かせない食に高いハードルを感じることが私の最大のコンプレックスでした。なので、みんなと同じ場所で食事がしたい、アレルギーを理由に諦めなければいけないことが一つでも減ってほしい、自分を特別だと感じてしまう瞬間が訪れなければいいのに、とずっと思っていました。

ですが、菜道に来たときは違いました。何が食べられないかではなく、何だったら食べられるかという方に重点を置き、食べられないものを取り除く除去食ではなく、食べられないと思っていた料理たちを創造・提供してくださいました。アレルギーが多いともちろん不便な事の方が多いです。私はこれまでそのマイナスの面しか見ることができず、この体質をプラスに捉えることができていませんでした。ですが、みんなにとっては当たり前の卵やプリンなどを食べられることを、22歳にもなってこんなにも嬉しく思えるのは私ぐらいかもしれない!と思えたときに、少し世界の見え方が変わりました。そのように、私がずっと否定的に見ていたものを、肯定的に変換してくれたのが菜道のサービスとお料理です。だから私にとって人生一のレストランなのだと思っています。

そのように、ヴィーガンをはじめとして、宗教上の禁忌やアレルギーなど、それぞれの食選択や食文化を理解し適応した「フードダイバーシティ」を特に大きく掲げることなく当たり前のように実現している空間が「菜道」だと感じています。今回3編に分けてお伝えした世界一のサービスとお料理が、誰かの食の選択肢を広げるきっかけとなれば幸いです。