一つのテーブルを囲みたい想い

皆さんこんにちは。Food diverstiy.todayでアレルギーについて卒業論文を書いたり、記事を書いている香川です。
卒業論文
食物アレルギーの私がお店に求める3つのこと

前回は、世界一のヴィーガンレストラン菜道さんの魅力(前編:https://fooddiversity.today/article_63777.html)ということで、各メニューの素晴らしさをお伝えしました。また、記事後半では、「私がこのレストランに訪れる理由は、世界一に輝いたヴィーガンレストランだからではなく、私にとっての人生最高のレストランだからだ」と述べましたが、今回中編ではその理由をお届けできればと思っております。

菜道の何よりもの魅力。それは、味…と言いたいところですが、私個人としては“ホスピタリティ”だと感じます。このレストランで受けてきたのは、ただのサービスではなく、あの美味しい味も(技術力は言うまでもなく)その強いホスピタリティマインドが具現化したものではないかなと思うのです。

お店で飲食をする際、私の持っているアレルギーの詳細をお伝えしているなかで、みんなが当たり前に食べているものを食べたことがないという話になりました。菜道の主菜である「おん齋麺」にのっている卵で初めて卵の味を知り、涙目になる私にシェフが提供してくれたのが卵かけご飯でした。このとき初めて卵とご飯が絡み合ったときの味を知りました。

卵かけご飯

■卵かけご飯
私はずっと自らの命に危険を及ぼす食物を避けて生活してきました。死にたくはないので食べないのが当たり前でした。でもそんななか、ずっと思っていたのは「もし卵が食べられたら、本当は卵が好きだったのだろうか?それとも、もし食べることができたとしても、嫌いでわざわざ食べなかったのだろうか?」ということでした。選択することができなかった私にもしも選択肢があったら、という未来を見てみたい、と思っていました。そんな一生叶うことはないと思っていたその願いを、いとも簡単に菜道は叶えてくれました。

野菜から卵を作り出す天才シェフの「食べたいものがあるなら何でも作ってあげるよ」という言葉に感動した私は、ずっと食べてみたかったものリストを作成し、厨房に置くなら濡れても大丈夫な仕様に…とラミネートまでしていそいそとお店に持って行きました。何でも食べられない私にとって、「何でも作る」は魔法のような言葉です…!

これがお店に渡した食べたいものリストです。叶ったものには、いつも店長の五藤さんが「よかったね」と言ってチェックを入れてくれます。

以下はシェフが私のわがままリクエストに応えて作ってくださった美しく美味しいお料理たちです…!
※今回掲載したものは通常メニューにはないものとなります。料金、詳細等はお店にお問い合わせください。

海苔巻き

■海苔巻き
うなぎ、ビーツ、コリンキーの糠漬け、きゅうり、卵焼き、梅の海苔巻きです!
どの面から食べるかによって、口の中に広がる組み合わせが異なります。感動してそれを伝えると、「海苔巻きってそういうもんなんだよ~!」と教えてくれました。食べ物に対する普通の感覚も私はここで教わっています…。
ここで叶えられたのが卵焼き!ふわふわしていて、味に癖がないので他の野菜たちとも合います。同じ卵なのに生卵とは食感も風味も大きく異なっていました。きっと卵を食べられる方からすると、至極当たり前のことを言っているのだと思いますが、22年生きて初めてこの感想を持つことができました。

ひつまぶし

■ひつまぶし
三段の容器で提供していただきました…!一段目に、上部に映るお漬物。二段目にうな重。そして三段目では右に映る薬味と、後で運ばれてくるお出汁をかけてひつまぶしを頂く…という夢の三段だったのです。一生の不覚なのですが、初めて食べられることが嬉しすぎてメインの三段目の写真を撮り忘れました。うなぎにかかる出汁の上品な香りと、薬味のみょうがとごまのアクセント。これが本物のうなぎではないことなんて忘れてしまうぐらい味も匂いもうなぎだと思います。(うな重は通常メニューの主菜としても注文できます!)

蒸し野菜とマヨネーズ

■蒸し野菜とマヨネーズ
蒸し野菜は通常メニューでもいただける一品なのですが、この日はマヨネーズを付けてくれました!味の正解を知らない私のために、居合わせたお客様も一緒にマヨネーズを食べて、「これはマヨネーズ!!」と答え合わせをしてくださいました。通常のマヨネーズの基本材料を調べると、卵、植物油、酢とありましたが、多分良い材料を使ってらっしゃるので変な脂っこさがない上品なマヨネーズだったように思います。酸味と甘味のバランスも丁度で、実際マヨネーズが食べられたとしても私はこれが食べたいなと感じる味でした。

プリン

■プリン
まず見た目の完璧さに感動しました…!そしてこのかわいいサイズ感。あともうちょっと食べたい…と思わせる量なのがまた良いです。甘さは控えめ。ぷるぷるした食感が口の中で溶けていきました。味はもちろんなのですが、このプリンというスイーツのビジュアルにずっと憧れていたので、再現率100%のこれを自分が食べられると思うだけでワクワクしました…!

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菜道のメニューは数多く幅も広いので、通常メニューだけでも飽きることなく楽しむことができます。そして世界一に輝いたレストランであり様々な分野でご活躍されているシェフなので、とても忙しいことも想像できます。にもかかわらず、貴重な時間を割いて新しい料理を作り、提供してくれるのです。そのように、飲食店に必要かつ求められているサービスの範疇を超え、私のように「食べたいものが食べられない」人に美味しい料理を食べさせてあげたいという気持ちで作ってくださっていることを本当に有難く思っています。

そうしてシェフが時間と気持ちを込めて作ったお料理を、いつも店長がテーブルへと運んできてくれます。その際の笑顔と一言が、料理における最後のエッセンスだと私は感じます。菜道で味わえるのは、生産者さんが心を込めて育てた原材料であることや調理過程に込められた気持ちなどが感じられる、「その料理が自分の目の前に出てくるまでの過程すべてが味わえる料理」です。だから毎回お料理を食べるたびに感動してしまうのだなと思っています。

まだまだ特別メニューについて書きたいのですが、続きの4品は後編にて、まとめと共にご紹介したいと思います。

後編はhttps://fooddiversity.today/article_64643.html