お客様の期待に応える具体的な解決策とは

観光ガイドとして、ベジタリアンやヴィーガン、ハラール対応の知識を持つことは必須ですが、実際の現場では予想外の困りごとに直面することも多いでしょう。例えば、「観光客が事前に調べた情報と実際の対応が違う」「レストラン側の対応にバラつきがある」「短時間で適切な対応を判断するのが難しい」といった問題です。そこで今回は、こうしたガイド現場での困りごとにどう対応するか、具体的な解決策を紹介します。

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事前情報と現場のギャップをどう埋める?

観光客は事前にアプリや口コミでレストラン情報を得ていることが多いですが、実際に訪れてみると「思っていた対応と違った」というケースが発生します。例えば、「このレストランはヴィーガン対応と書いてあったのに、実際にはサラダしかなかった」などの状況です。

こうしたギャップを埋めるために、ガイドは事前にレストランの最新情報を確認し、柔軟に対応できるよう準備しておくことが重要です。予約の有無、メニューの変更がないか、アレルギー対応が可能かなどを確認し、観光客に「このお店は〇〇と表記されていますが、実際は△△の対応になります」と事前に伝えておくと、期待値のズレを減らせます。

また、万が一レストランが期待に応えられなかった場合に備え、「近くに別の対応可能な店がある」ことを把握し、代替案を用意しておくとスムーズな対応ができます。「この店は〇〇の制限には対応していますが、△△には対応していません。代わりに、□□ならご希望に合うかもしれません」と提案すると、観光客の満足度が向上します。

レストランや飲食店の対応のバラつきにどう対処する?

食の多様性対応は、日本国内でもまだ発展途上であり、同じ「ハラール対応」や「ヴィーガン対応」と書かれていても、その対応レベルには大きな違いがあります。あるレストランでは厳格なハラール対応をしているのに対し、別の店では「豚肉は使っていないが、アルコールは提供している」といった微妙な違いがあることもあります。

こうした状況を踏まえ、ガイドとして重要なのは「どのレベルまで対応できるかを正確に伝える」ことです。「完全なハラール対応」「ハラールメニューあり」「ヴィーガンメニューあり」など、具体的な情報を観光客に説明し、選択肢を提供することで、期待値を適切に調整できます。

また、レストランスタッフに事前に確認し、「この料理は動物性食材を一切含みませんか?」「調理器具は分けられていますか?」といった詳細を聞き取ることで、観光客に安心してもらえます。こうした細やかな確認を行うことで、レストラン側の対応の違いによるトラブルを最小限に抑えることができます。

限られた時間の中でどう対応すればいい?

観光ツアーでは時間が限られているため、食の多様性対応を短時間で判断し、適切に案内することが求められます。しかし、メニューを一つひとつ確認する時間がない場合も多く、迅速な判断力が必要になります。こうした場合、あらかじめ「対応可能な飲食店リスト」を用意しておくことが有効です。事前に、ツアーで訪れる地域ごとにベジタリアン・ヴィーガン・ハラール対応の飲食店をリストアップし、メニューの種類や対応レベルを把握しておくことで、当日の案内がスムーズになります。

また、観光客自身が持っている情報を活用するのも一つの方法です。「行きたいお店がありますか?」と事前に確認し、希望する店がある場合は事前にガイドが確認しておくと、当日慌てることがありません。

さらに、観光客自身に「この料理の材料を確認してもらう」ことも選択肢の一つです。レストランのメニューにアレルギー表示やピクトグラムがある場合、それを示して「このマークがあるものは食べられます」と伝えることで、短時間でも的確に選択ができます。

食の多様性対応は、通訳ガイドにとってますます重要なスキルとなっています。しかし、現場では事前情報と現実の違いや、レストランの対応レベルのバラつき、限られた時間での対応など、多くの課題があります。ガイドとして、これらの課題に柔軟に対応し、観光客に安心してもらえるような案内を心がけることで、満足度の高いツアーを提供できます。