ヴィーガンのお客様が求めるものは?

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)や健康などを謳って、ヴィーガンメニューを提供する飲食店が増えてきました。この動き自体はとても良いことと思いますが、リリース直後に「ヴィーガンメニューが売れないのですが、どうすればよいでしょうか」というお問い合わせをよくいただきます。お問い合わせをしてくださった飲食店様に対して具体的なヒアリングを行ったり、実際にメニューを食べたりしたところ、売れない理由はどのお店も殆ど同じで、それはある「先入観」から来ていることが分かりました。今回は多くの飲食店が持つその「先入観」について書いていきたいと思います。

メニューを作る際に注意したい先入観とは?

自身の周りにヴィーガンの方がいなかったり、あるいは実際にヴィーガンの方と接したことがなかったりする場合、一般の方はヴィーガンに対して下記のような印象を抱くようです。

・肉や魚の代わりに大豆ミートを好んで食べている
・(若い女性に多いイメージが強く)お洒落でインスタ映えする料理を好む
・肉、魚、乳、卵を使わないとても特別な料理を普段食べている

上記のような固定観念はこれから紹介するような「先入観」を生み、それがヴィーガン向けの商品が売れない理由となります。

①ヴィーガン=大豆ミートを使わないといけない

多くの飲食店はヴィーガンメニューの提供を始める際、「大豆ミートを使った◯◯」といったメニューを最初に打ち出す傾向にあります。もちろんそれ自体は悪いことではありません。しかし、「大豆ミート」関連商品が売れない3つの理由とその解決策」の記事でも書いた通り、多くの消費者は大豆ミートに対して「大豆臭さ」を気にしていたり、「大豆ミート」と謳う時点でメニュー自体への期待値が高くなかったりと、必ずしも需要と供給がマッチするとは限らないことがあります。また、「タンパク質は大豆ミートではなく普通の豆腐などから摂る」という方も多いです。

大豆ミートで思うような成果を出せていない飲食店様に対し、当社からは「一度大豆ミートから離れて考えてみませんか」とお伝えしています。すると多くのシェフの方は「味に違和感はあったけれど、大豆ミートは使わなければならないものと思っていた」と仰るので、やはり「ヴィーガン=大豆ミートから」という先入観を多くの人が抱いてしまっていると感じます。無理に大豆ミートを使うことに固執せず、キノコやタケノコ、食感の出る乾物野菜、蒟蒻、豆腐、油揚げ、がんもどき等、普段の生活の中で当たり前のように食べられている食材を上手く活用しているお店のほうが売上の面でも結果を出している傾向にあります。

②ヴィーガン料理は色鮮やかでなければいけない

前提として、色鮮やかな料理を好むヴィーガンの方がいないと言うつもりは全くありません。しかし、ヴィーガンレストランとして世界一位の評価を受け、またヴィーガンでない日本人からも圧倒的支持を得ている自由が丘の「菜道」さんが提供する料理は、以下の写真が示すように、ラーメン以外は色の鮮やかを追求していないことが分かります。菜道さんが海外から訪れるヴィーガンのお客様に支持される理由は、ラーメンやカツ丼などの日本を代表するB級グルメを、ヴィーガン仕様で食べられる点です。また日本人のお客様にも好まれるのは、日本人が普段から食している日常食をよりヘルシーに、美味しく、食べごたえを落とさず食べられるからです。

特にホテルの運営会社様からご相談をいただくことが多いのですが、美しい盛り付けがなされ、写真映えもする色鮮やかなヴィーガンメニューがあまり売れていない、というケースは決して少なくありません。”ヴィーガンメニューが提供できる価値とは何か”を一から考える必要があります。

自由が丘菜道さんの看板メニュー(左上:うな重、右上;カツ重、左下:ラーメン、右下:焼き鳥) ※全てヴィーガン

③特別なメニューを新しい食材でゼロから考えて作らないといけない

基本的にヴィーガンの方々の食生活はヴィーガンになる前と変わらず、食の嗜好まで大きく変化することはありません。元々ラーメンが好きな方はヴィーガン仕様のラーメンを食べます。自炊する際も既存の料理に若干のアレンジを加え、ヴィーガン仕様のものを作るだけです。例えば天丼を作る場合は卵の代わりに衣を使ったり、具の海老天をキノコ天にしたり、タレには魚出汁ではなくキノコ出汁にしたりと、天丼を食べたいときには天丼を食べます。

しかし、多くの店がヴィーガンメニューを作る上で「新しい食材でゼロから特別なメニューを生み出す」ことを考えているようです。大阪にあるとあるお弁当屋さんの事例ですが、そこのお弁当は地元でとても評判が良く、特に「鶏そぼろ弁当」や「大きな海老の天丼」、「アジフライ弁当」が非常に人気でした。その後昨今のニュースを見て大豆ミートなどを使用したヴィーガンメニューを作り、商品名を「ヴィーガン弁当」としたのですが、なかなか売れず当社にご相談の連絡が来ました。

私から、「今ある食材を普通に使って、人気メニューに若干のアレンジを加えたヴィーガンメニューを作ってほしい」とお伝えしたところ、「三種のキノコ天丼(ヴィーガン対応)」と名付けた商品を生み出し、そこから一気に売上を伸ばしました。こちらはヴィーガンでない方からの人気も高いようです。

当社としては、
・今ある食材を使うこと
・既存のメニューに若干のアレンジを加えること
・適切な商品名を付けること

を意識していただくことで、ヴィーガン対応を成功させられると考えています。下記図は名古屋の大久手山本屋さんの事例ですが、上記3つのポイントを実践することで着実に成果を上げています。

名古屋の大久手山本屋のヴィーガンメニュー事例

まとめ

本記事でお伝えしたいことは以下3点です。

1.「大豆ミートは必須」という考え方から一度離れ、「普段食べているもの」からヒントを探しませんか

2.色の鮮やかさに固執せず、お客様が外食に求める真の価値を見極めてメニューを考えませんか

3.一から新しい料理を作るのではなく、今あるものにアレンジを加えたものを作りませんか

上記を実践し、メニューを作り直していただいたところ「成果が出た」とご報告くださるシェフの方が多数いらっしゃいますので、一つの考え方として成立するものと考えています。

以上、長文となりましたが、本記事がヴィーガン対応や味の方向転換を検討されている企業様にとって有益なものとなれば幸いです。