ハラール認証を取得しましたが、どうやって集客すれば or 販売すればいいですか?

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

弊社は「ハラール認証を取得しましたが、どうやって集客すれば or 販売すればいいですか?」というお問い合わせを本当に多く頂きます。
もちろん「ハラール認証取ればムスリムのお客様を呼べる&売れる」というような甘い世界ではありません。「イチロー選手に野球を教わったというお墨付きだけで、ヒットは打てない」と例えたら、わかりやすい思います。

ヒットを打つための体力づくり(そもそもの商品力)、練習(売るための試行錯誤)、相手投手の研究(ニーズの調査)があってこそ、初めてヒットは生まれます。そもそも「ムスリムの方が買いたいモノなのか(購入に至る壁がハラール問題なのか)」ということを考えないといけません。ハラール認証の水、お茶、化粧品等、本当にニーズがあるかを冷静に考える必要があります。

ムスリムのお客様に買って頂くときにモノがハラールであることは必要条件ではありますが、ハラール認証を取得していることは十分条件にしか過ぎません。実際のところハラール認証は取得の目的や、取得の仕方で効果は全く異なってきますので、本日は取得する前の確認すべきポイントについて説明いたします。これからハラール認証の取得を検討されている企業様にとって、有益な情報になったとしたらとてもうれしく思います。

お店としてハラール認証を取得せずに、2019年年間ランキング1位を獲得した日本食レストラン祭様

まずはよくあるQ&Aから。

Q.ハラール認証は誰が発行しているのでしょうか?

A.宗教法人、NPO法人、社団法人、株式会社、個人事業主等様々です。許認可制ではない日本では基本誰でもハラール認証機関になることができます。イスラム教国ではない日本では乱立状態ですが、イスラム教国では(例外もありますが)基本1国1認証機関です。無店舗、無在庫、利益率がほぼ100%のビジネスモデルのため、日本では現在も次々と新しいハラール認証機関が立ち上がっています。

Q.ハラール認証はいくらくらいかかるのでしょうか?

A.価格についてはどのハラール認証機関もホームページ等で明確にしていないので分かりませんが、基本どこのハラール認証機関も企業規模等を見ながら価格を提示しているようです。飲食店の場合は30万円~50万円くらいが平均的なところですが、もちろんそれを越える事もあります。メーカーの場合は100万円や200万円かかる事も多くあります(弊社が確認している中では最高金額は500万円です)。
また有効期間、更新料についてもハラール認証機関ごとに違います。

Q.ハラール認証機関は沢山あって、それぞれ違う意見なのですが一体何が正しいのでしょうか

A.ハラール認証において法的なルールは日本には一切存在しないので「どのハラール認証が正しい」という議論自体がそもそも意味を成しません。もしハラール認証機関やコンサルティング機関から「どのハラール認証が正しい」という話が出てきた時点で、それは単なる営業方法の一つと整理ください。これらの議論は、全国に数あるご当地ラーメンの中で「我が街の○○ラーメンこそが真のラーメンだ」とラーメン屋さん同士が議論しているようなものです。
(輸出については別ですが、それは後述)

それでは、早速本題に入っていきましょう。

1.ハラール認証を取得する目的は明確か、また本当に必要か

ハラール認証を取得する目的は大きく二つです。
もちろん企業様によっては両方当てはまる場合もあると思います。

①輸出
②国内流通(在住ムスリムやインバウンドのムスリム対策)

①の場合、確認すべきは2点です。
・そもそもその商品の輸出にハラール認証はルール上必要なのかどうか(例えば中東への輸出においてハラール認証が必要なのものは「食肉」のみとなります)
・必要な場合、輸出相手国に認められたハラール認証なのかどうか(例えばマレーシアへの輸出であればこちらの7つの認証機関から1つ選ぶ形になります。)

相談先⇒JETRO

②の場合、確認すべきは下記です。
・飲食店の場合、お店としてのハラール認証がなくても、情報開示である程度の集客ができたかどうか(下記図参照)
・食品メーカーの場合、ムスリムのお客様や飲食店に商品のニーズ調査をしたか
食肉以外はテストマーケティングをしっかりと実施してから、ハラール認証取得をご検討いただくことを強くお勧めしています。ハラール認証を取得してから「そもそも商品にニーズがありませんでした」というケースが多発しています。

相談先⇒弊社 info@food-diversity.co.jp

お店にハラール認証がないと食べないという人もいれば、使用食材情報を頂ければ自分で判断しますという人もいます

2.ハラール認証機関とよく起きるトラブルを確認したか

国内流通を目的とした場合のハラール認証機関を選定する際は、下記に注意しましょう。

・営業時間中、日中、ラマダン期間中も含めてしっかりと連絡が取れる状態であるか(連絡が取れなくて新しいメニューが作れないなどというトラブルは非常に多いです)
・食材、調味料の追加申請費用がかかるかどうか
・明朗な認証取得費用、更新費用、有効期限などが入った契約書および見積書が出てくるか(日本の商習慣を理解しているハラール認証機関はとても少ないです)
・間に様々な協会、協議会、コンサルティング会社等が入っていないか(トラブルが絶えません)
・ハラール認証機関によって「A認証機関やB認証機関のハラール認証が付いた食材は使用不可」というルールも多数存在しますが、取得前にそれらを確認したか
・途中で認証基準が変わるハラール認証機関もありますが、契約書にその旨が書かれているか(認証基準の変更について食材原価等が上がることが多々あります)

⇒ハラール認証機関は基本民間であり、決して先生ではありません。ビジネスパートナーとして、フェアにお付き合いされることをお勧めしております。

3.ハラール認証マークの大きさについて、社内で検討したか

ハラール認証の目的と必要性を認識して、ハラール認証機関とトラブルのない契約を結んだとしても、最後にハラール認証マークの大きさで躓く企業様も多くいらっしゃいます。
せっかく苦労してハラール認証を取ったから」というお気持ちはとても分かるのですが、ここは一つ冷静になるべきところです。「日本は世界で一番ハラール認証マークが大きな国」だと思っておりますが、もちろんターゲットをムスリムのお客様のみに絞るのであれば、それで問題ないと思います。しかし、ムスリムのお客様「にも」一般日本人のお客様「にも」販売するという戦略でお考えであればそれは逆効果になるときもあります。

下記3つの記事をご覧いただき、是非ともハラール認証マークの大きさをご検討いただきたいと思っております。
・ハラール○○を見直しませんか?
・【量販店やコンビニ向け】ハラール・ベジタリアン事業は「対象者にどう買って頂くか」ではなく「対象者以外にどう違和感なく買って頂くか」
・ハラール対応現場でよく起きる3つの失敗事例

ロイヤル様のハラール弁当:上が旧タイプで下が新タイプ 旧タイプは認証の主張が強くムスリムのお客様にしか売れなかった

以上、長文乱文となりましたが、ハラール認証について正しく理解して、正しくハラール認証機関とはお付き合いして、正しく訴求することがとても重要だと考えております。
ご覧になっていただいた皆様のハラール事業がうまくいくことを心より願っております。