ハラール認証の問題点:理解と改善のために

ハラール認証とはムスリム(イスラム教徒)が安心して日々の生活を行うために、主に食に関して食べていいのかどうかを判断する一つの基準です。しかし、この認証にはいくつかの問題点が存在します。この記事では、ハラール認証の問題点を明らかにし、その理解と改善のために何が必要かを考察します。

1. 認証基準の多様性と一貫性の欠如

ハラール認証には国内外で多くの認証機関が存在し、それぞれが独自で異なる基準を持っています。そして、それぞれの基準が異なるため国際的に一貫したハラール認証を取得することが難しく、これは特に国際市場に進出しようとする企業にとって大きな課題となります。

2. 認証プロセスの透明性不足

これまでもさまざまな企業がハラール認証を取得しようとする検討する中で、認証プロセスが不透明であるという声が多く上がります。認証を取得するための具体的な手順や基準が明確に示されていないことが原因で、認証取得をしないケースも多々あります。

3. 高いコスト

ハラール認証を取得するための費用は、特に中小企業にとって大きな負担となることがあります。イニシャルコストだけではなく、認証を維持するためのランニングコストも含めると、その費用はかなりのものになります。これにより、ハラール認証を取得することが経済的に難しい企業も少なくありません。

4. 認証機関の信頼性

認証機関の信頼性についても問題があります。すべての認証機関が同じレベルの信頼性を持っているわけではなく、一部の機関は不正行為や基準の不備が指摘されています。

5. 消費者の理解不足

ハラール認証についての消費者の理解も十分ではないことがあります。認証が何を意味するのか、どのような基準が適用されているのかを理解していない消費者が多いと、認証の価値が十分に伝わらない可能性があります。

6. 現地の文化との調整

国際的にハラール認証を取得する場合、現地の文化や慣習との調整が必要です。例えば、ある国ではハラールと認められる食品が、別の国では認められない場合があります。このような文化的な違いは、ハラール認証の普及において大きな障壁となります。

7. 技術的な課題

ハラール認証を取得するためには、製造プロセスや原材料の管理において高度な技術が求められることがあります。特に、多国籍企業や大規模な製造業者にとっては、この技術的な課題を克服するためのリソースが必要です。

8. サプライチェーンの管理

ハラール認証を維持するためには、サプライチェーン全体の管理が必要です。認証によっては、原材料の調達から製品の出荷まで、すべての段階でハラール基準を満たすことが求められるケースがあります。

ハラール物流の国内現状とデータから見る必要性について 

9. 教育とトレーニングの必要性

ハラール認証を適切に取得し、維持するためには従業員に対する教育とトレーニングが不可欠です。教育とトレーニングには時間とコストがかかるため、企業にとっては負担となることがあります。

10. 規制の変化

各国の規制が変わることによって、ハラール認証の基準や手続きが影響を受ける場合があります。規制の変化に迅速に対応するためには、企業は常に最新の情報を収集し、適切な対応を行う必要があります。

まとめ

ハラール認証には多くの問題点が存在しますが、これらの問題を克服するためには、企業、認証機関、消費者が協力して取り組むことが重要です。特に認証取得のプロセスや費用に関する透明性の向上、一貫した基準の確立をしっかりと行わないと、今後業界全体の信頼をますます損なうことになっていくと考えています。フードダイバーシティ株式会社としても、引き続きハラール認証に関する情報をしっかりと追いながら、多様な食文化の理解と普及に貢献していきます。

著者

守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師

1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。

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