脱ハラールマーケティングのすすめ

相次ぐ失敗事例

みなさん、こんにちは。フードダイバーシティ株式会社の守護です。

「ハラール認証取りましたが、全く売れません。」
「ハラール認証取りましたが、どういったところに訴求すればいいでしょうか?」

弊社にはこういった問い合わせが全国から非常に多く来ます。
弊社ではハラール認証を「手段」の一つと言う話を必ずさせていただくのですが、やはりまだまだ「目的」と捉える企業様が非常に多いと常々感じております。
お肉以外はハラール認証を取得しなくても販売するための方法はたくさんあるので、しっかりとここを検討することが重要です。

その中でいろいろ分析していると弊社ではある法則を見つけました。
それは商品名が「ハラール〇〇」であったり、ハラール認証マークが大きい商品が売れていないということです。
※もちろん例外もあります

一方でムスリム向けに成功している商品はその逆の商品が非常に多かったりします。
本日は諸々の事例を使って詳細を見ていきましょう。

一般の日本人や一般の日本飲食店に知らずに使ってもらう重要性

例えばこちらの醤油を見てみましょう。

ヤマサ醤油さんの醤油です。一見なんの変哲もない普通の醤油に見えますが、こちらに小さくハラール認証マークが入っています。

ヤマサ醤油さんのハラール認証マークについては、ハラール対応している飲食店業界ではとても有名な話ですが、この醤油を実は日本の飲食店の圧倒的大多数がハラールと知らずに「普通の醤油」として使っています。
実際に私が飲食店様の指導で現場に入るときに、こちらの醤油を使っていて既にハラールをクリアしているケースがあり「ここにマークもあるので大丈夫ですよ」と伝えると「全く知らずに使っていた」ということがよくあります。

また、通常ハラール認証を取得すると(認証取得分、または海外の認証だと輸送コスト分)値段を上げるメーカーが多いのですが、ヤマサ醤油さんの商品はハラール認証を取得していても値段がほとんど変わらないので、そこがハラール対応飲食店やムスリムの方々に選ばれている要因でもあります。

このハラール醤油、当然正確な数字は全く分かりませんが、おそらく売上の99%がハラールであることを知らない方、1%ほどがしっかりとハラール認証を意識して使っている方という割合ではないでしょうか。
そしてさすがのヤマサ醤油クオリティで味もしっかりしていて、使用しているハラール対応飲食店も一般日本人用の醤油と、ムスリムのお客様用の醤油として分けるわけでなく、全てのお客様にこの醤油を使用されています。

逆に商品名に「ハラール醤油」であったり、ハラール認証マークがドーンと出ている醤油があった場合、一般日本人消費者や一般飲食店はどう思うか。

・イスラム教徒向けの商品ね(私には関係ない)
・これなんのマーク?ハラールって?(何だかよくわからない)

となります。そういう方は、わざわざこれを使う理由は全くありません(下記図ご参照)。

ハラール対応商品の売り先

一方で、もちろんムスリムの消費者は「ハラール醤油」という表記をされると喜びます(イスラム教国じゃない日本で配慮されているということで)。
ただしムスリムで「ハラール醤油」を買う人はそもそもどれくらいいるのか、ここのマーケティングがとても重要だと思います。

X=16億人×日本在住者率×醤油を日常的に使う人率×醤油に含まれるアルコールを気にする率×醤油にハラール認証を必要とする率

上記のように考えると、正確には分かりませんが数千人というレベルだと思います。
イスラム教国ではない日本では、冷静に考えてこの母数だととてもビジネスベースに乗せるのは難しいと思います。

つまりこの日本ではマーケティングをしっかりと考えて、ハラール対応商品を訴求していく必要があります。

※ヤマサ醤油さんだけでなく、ブラジル産チキンなども同様で、ハラールと意識せずに使われている率はとても高いです。多くの方はハラールミートとしてではなく、安くて美味しいお肉として選ばれています。

「Halal first marketing」の使い方が重要

上記のように商品の強みを説明するときに「ハラール」を最初に持ってくるマーケティング手法を「Halal first marketing」と私は呼んでいます。

商品においてはいろいろと特徴があります。
例えば、下記6つの特色があるラーメンがあったとします。

・味
・食感
・価格
・素材のこだわり
・用途
・ハラール認証取得

これらで会社として一番推したい部分が「ハラール認証取得」だった場合は「ハラールラーメン」としてマーケティングをすべきであり、これがHalal first marketingです。

一番推したい部分が「味」や「食感」だった場合はそこを前面的に出していけばいいですし、「ハラール認証取得」という情報は目立たないところにに少しだけ入れておけばいいです。
もしくは「価格」だった場合は激安感を出して売ればよく、同様に「ハラール認証取得」という情報は目立たないところに。

とにかく商品は第一印象がとても重要です。
「ハラール認証があって、且つおいしい」なのか、「おいしい、且つハラール認証がある」では全く印象が違います。

そして一度定着した印象を変えるのはとても難しいです。

ちなみにHalal first marketingが有効になるケースは下記です。
・非イスラム教国で住んでいるイスラム教徒
・ハラールについて学び始めたばかりの飲食店(最初はなんでもハラール認証品を使いたがるので)

※飲食店も慣れてくるとコストや味を求めてきて、認証品だけでなく、内容成分などを見て判断するようになります。

しかし、繰り返しにはなりますが、Halal first marketingでビジネスベースに乗せることができるかを慎重に考えるべきです。
実際にHalal first marketingで、結局”ムスリムのお客様にしか売れず”に撤退をしてきた企業はとても多くあります(下記図参照)。

ハラール対応商品の売り先

少し極端な話にはなりますが、「例えムスリムのお客様、およびハラール対応店の売上がゼロでもリスクがない形でやりましょう」と私はよく伝えています。
要はヤマサ醤油さんのように一般日本人に普通に売れる商品を作ってくださいという話で、ムスリムのお客様「も」買えるようにしましょうというとてもシンプルな話です。

では「Halal first marketing」を使わずに、イスラム教徒やハラール対応している飲食店にどうやって情報を届けるのか?

その答えはイスラム教徒やハラール対応している飲食店のみが見るサイトやコミュニティに情報を出せばいいです。
もちろん弊社サイトは一般日本人や一般飲食店は見ないので、思いっきり「Halal first marketing」を使ってOKです。

実際に大手飲食店様も、自社サイトなどには情報出さずに、弊社サイトのみでハラール対応情報を出しているケースも少なくありません。

最近の傾向として

先駆けてハラールに取り組んできた企業が「ムスリム”も”食べられる」にマーケティング手法を変えてきています。

・オタフクソースさん

このようにオーガニックソースと題して、ベジタリアン認証取得、そして裏側にはアルコール不使用という表記もしっかりとあります。
つまりはこれはオーガニック、ベジタリアン、ムスリムを包括的に狙いに行った商品設計だと見ています。このソースがオタフクソースさんのベースとなれば世界展開がとてもしやすいですね。

・王様堂製菓さん

機内食ニーズから始まったハラール認証でしたが、ベジタリアン認証に加え、2015年からはグルテンフリーにも対応し、より多くのお客様に食べて頂けるように設計されました。
どんどん食べられる方の枠を広げていっています。

結論として

弊社としては大きく下記6点に気を付けてマーケティングを行う必要性があると考えております。

1、そもそも商品にニーズがあるかをしっかりと見極める(買いたいけどハラールじゃないから買えないという商品かどうか)
2、商品名が「ハラール〇〇」であったり、ハラール認証マークが大きい商品は、ムスリムには売れるが、一般日本人や飲食店に売れない
3、一般日本人にも売れる商品で、且つムスリム”も”食べられる商品設計が成果を出している(一般日本人にハラールであることを知らせる必要なし)
4、「ハラール認証」でコストの上がった商品が選ばれる可能性はとても低い
5、ハラールから始まった企業がどんどんベジタリアンやオーガニックやグルテンフリーなどに枠を広げてきている
6、「Halal first marketing」は特定の媒体・サイトのみで行う

弊社は皆様の企業努力をしっかりと成果につなげるためのお力添えができればと思っております。
引き続き何卒宜しくお願い致します。