「どのように販売戦略を作ればいいでしょうか?」
フードダイバーシティ株式会社の守護です。
最近弊社では大手量販店やコンビニを運営される企業様からご相談をいただくことが多くなってきました。
特に経営側やマーケティング側からご連絡をいただくのですが、「売り場でスタッフがハラールやベジタリアン等聞かれることが増えてきた」とのことでお問い合わせをいただきます。
本日は飲食店様、メーカー様にも全く同様に言えることなのですが、ご相談時に毎回必ずお伝えするポイントについてまとめてみました。
ベジタリアンも混ざると文章が複雑になるので、ここからは「ムスリム」に絞って話を進めていきますが、基本ベジタリアンについても同じです。
※その前に復習としてこちらもご一読いただけましたら幸いです。
https://fooddiversity.today/article_24117.html
https://fooddiversity.today/article_32199.html
まずはこちらの絵をご覧ください
例えばハラール牛丼弁当を量販店で売る場合(図のパターン1はハラールでないので除外)。
基本大手量販店やコンビニ等でいくと、棚あたりの売上などが正確に管理されています。
最初に私がお聞きするのは「棚あたりの売上を上げたい」のか、それとも「テストマーケティングをしたい」のかです。
それによって下記のように回答が変わってきます。
図のパターン2でお勧めする場合
・テストマーケティングをしたいという場合
・ムスリムのみで棚あたりの売上をしっかり取れるエリアの場合(大きなモスクが近隣にあるなど)
図のパターン3でお勧めする場合
・現状一般日本人がメインのお客様ですが、棚あたりの売上を純増させたい場合
まず経営側が「得たい結果は何か」をしっかりと定めることが重要になります。
これを定めずに対応して「結果が出ないから辞める」という事例もありますが、残念ながらゴール設定が不明確なことが要因だと思います。
「対象者にどう買って頂くか」ではなく「対象者以外にどう違和感なく買って頂くか」
民間企業は当然ながら慈善事業ではないので、継続のためにはしっかりと利益を生むことが絶対条件です。
図のパターン2、現状ムスリムのみでしっかりと棚売上が成り立つエリアというのは日本ではまだまだ限られています。
そこでパターン3で行く場合、重要なのは「対象者にどう買って頂くか」ではなく、「対象者以外にどう違和感なく買って頂くか」に考えをシフトすることだと思っています。
(そもそも対象者に対応商品を売るのは、情報発信方法さえ間違えなければそこまで難しい話ではないと考えております)
例えばよく見るブラジル産の鶏もも肉。
こちらは多くの飲食店が使っている食材ですが、実は右下にハラール認証マークがついていて、ほとんどの飲食店がそれを知らずに使っています。
しかしこれがいざ「ハラールコーナー」などに置かれたり、商品名が「ハラール鶏もも肉」となった瞬間に対象者以外は買わなくなると思います。
そうです、何も知らずに買っている人は「鶏もも肉」を買っているわけであり、「ハラール肉」を買っているわけではありません。
「ハラール肉?ん?いつもと違うお肉なのかな?」と違和感を持って然りです。
つまりハラールであることは対象者と販売者側にのみ分かればいい情報なわけで、今普通に買ってくれている大多数のお客様を第一に考えるべきです。
よって対象者(ムスリム)以外にハラール商品を違和感なく販売する方法例としては下記です。
1、ハラールフードコーナーは作らず、一般の商品に紛れ込ませておく(アジアフードコーナー、輸入食品コーナーなどは可)
2、ハラール●●であったり、ハラールマークを強調した売り方はしない(最小限の大きさで表示)
3、ハラール商品を売っているという情報は弊社サイトのようなムスリムのみが見るサイトで英語で出す
4、日本語で報道する日本メディアの取材は受けない(どうしても「ハラール」を前面に押し出した報道になります)
もちろん上記2の場合は日本メーカーの協力も重要になります。
(日本メーカーのハラール認証マークは世界で見てもとにかく大きく、かなり強調されているためOnly Muslim感がどうしても出てしまいます)
ちなみにこれはニューヨークの事例ですが「木は森の中に隠せ」感で、多くの表記を紛れ込ませることで特定の対象者という色を消しています。
図のパターン3で行くとムスリムの単体の売上分析はできません
「どれだけの成果が見込めますか?」
とも多く聞かれますが、パターン3で行く場合は分かりませんとはっきりと申し上げるのと同時に、棚あたりの売上指標で考えて頂きたいとお伝えします。
もちろんパターン2のテストマーケティングをやれば、ある程度の成果は見えると思いますが、先述の通りどこにゴール設定をするかだけです。
ちなみに成果を出して販売を継続している量販店はパターン3がほとんどなので、当然上記の通りデータは棚あたりの売上しか分からないケースがほとんどです。
しかし、現場の声や肌感覚でムスリムにも多く売れているという実感があるので、継続しているという判断のようです。
実はこれ成果を出している飲食店やホテルも全く同じことを仰います。
以上となります。
ハラール・ベジタリアン事業などを含むダイバーシティにおける失敗事例の一番は非効率で、少数派ばかりに目を向けて多数派のお客様を離してしまうことです。
とにかく「売れるから続ける」、そして「売れるから他店舗でもやる」がとても重要です。
経済原理の乏しい取り組みはいずれ無くなりますが、上記であれば持続可能な取り組みになります。
そのためには目指すべきゴール、そしてそれにたどり着くための戦略が必要ですので、弊社としてはデータなども活用しながらここのお力添えができればと思っております。
長文乱筆につき大変失礼しました。