ハラール対応現場でよく起きる3つの失敗事例

みなさん、こんにちは。フードダイバーシティ株式会社の守護です。
最近の講演では必ずお伝えしているのですが、ハラール対応現場においてよくある3つの失敗事例について本日ご紹介したいと思います。

1、ハラール認証機関や卸企業の言うことや提案を鵜呑みにする

こちらは本当に多く起きている事例です。
よく巷では「ハラールは高くて、おいしくない」と言われていますが、その要因を紐解いていくとここに辿り着くいうケースが非常に多くあります。

まず、一部のハラール認証機関であったり、そこと連携する卸企業は「うちの商品以外はハラールではありません」という営業を普通にしています。
客観的で科学的なロジックは特にないようですが、認証機関も卸企業も営利目的なので、当然それ自体は問題ではありません。営業方法の一つと整理できます。

問題はそこからで、そのハラール認証機関であったり、その卸企業の商品リストを見ると約9割が海外からの輸入品だったりします。
しかも仕入れのロットが大きく、また輸入なので商品によっては1か月後入荷などのタイムラグもよく発生しているようです。
そして残り1割の国産品については認証費用が価格に乗りすぎていて、飲食店で使うのは難しい価格に高騰しています。
※最近では原材料が「海水」と書かれたハラール認証塩(塩は認証がなくても当然ハラールですが)も市場価格とはかけ離れた値段で販売されていたりもしました。

その認証機関や卸企業の言うことを鵜呑みにした場合、下記のようなことがおきます。

・仕入れが安定しない
・仕入れ価格は全体的に上がり、売値に転嫁される(もしくはお店が利益を削るか)
・一般日本人にウケる味が作りにくい(輸入調味料だと日本人の舌には慣れない)

これが「ハラールは高くて、おいしくない」の正体になっています。
そうです、輸入調味料は基本海外の料理を作るためのものなので、和食などを無理に作っても味に限界はあります。それらはテーブル上の調味料としてお客様が使うことで効果を発揮します。
もちろん一般日本人客には普通の料理、ムスリムにはハラールを提供するというやり方もありますが、お客様が多くないと今度は仕入れロットが合わずロスが出るケースもあります。

ちなみに今結果を出している企業の多くは、食材ロス防止や店内オペレーション簡素化のために、ハラールで且つ一般日本人にも合う味を求めて、ハラール認証があるなし関係なく使いたい食材や調味料を自ら探し、ハラール認証機関や卸企業とは対等に(ここ重要)お付き合いをされています。
そのためには商品規格書などを自ら取り寄せたり、電話でお客様センターに確認するなどの作業を行い日々勉強されています。もちろん知識だけでなく、同時に価格や味の努力を怠りません。
※そもそも「ハラール=ハラール認証品」ではありません。ハラール認証がなくても使用できる日本の食材、調味料はたくさんあります。

解決策

第三者からの情報を鵜呑みにすることなく、自ら勉強しOUTPUT(提供したい価格、味)から逆算して考える。

2、「ハラール」や「ノーポーク」などを謳いすぎる

こちらは最近徐々に増えてきている事例です。
まずここで重要なのは「誰をターゲットにするお店なのか?」です。

売上の大半をムスリムで考えていますという場合はもちろん「ハラール」や「ノーポーク」などを前面的に謳えば売上は上がると思います。もちろんお店でハラール認証を取得している場合は、それを前面的に出してアピールすべきです。

しかし売上の大半を一般日本人であったりで、そこにONしてムスリムを呼びたいというケースは、「ハラール」や「ノーポーク」などを謳うと一般日本人客が離れていくというケースもあります。

下記図をご覧ください。

実際に一般日本人の理解では「ハラール=イスラム教徒”が”食べる食事」というイメージがまだ大半だったりします。
また「ノンポーク」となると、制限食?というイメージを持つ人も多くいるようで、こちらも使うことをあまりお勧めしません。
もちろんこれらは誤解なわけですが、個人的にこの誤解が解けるのはもう少し先になるのではと考えております(ここ数年でだいぶイメージは変わってきましたが)。

あくまでも「ハラール」であったり「ノーポーク」であったりは届けるべき人にのみ届けばいい情報です。
そういう意味では日本のメディアで日本語でリリースなどを打つこともあまり有効ではありません。日本のメディアを日本語で見るのは日本人であり、情報を届けるべきコンシューマーのムスリムには情報が届きません。

最近ではハラール認証なりを取っていても、「言われれば見せる」というスタンスで表に出さない企業や飲食店も出てきました。
こちらこちらの記事も参考までにご覧くださいませ。

解決策

ターゲットとなるお客様をしっかりと定めて、適切な媒体で適切な打ち出し方をする

3、社内で一部の人の属人的な取り組みになっている

最後になりますが、こちらは大きな企業様によく起こることです。
実際にハラールのことであったり、上記失敗事例1、2であったりは料理人や一部の担当者だけが知っていればいいという情報ではありません。
大きな企業様においては「担当者が異動になってゼロスタートになりました」「担当者が退職してこの事業はなくなりました」ということもよくありますが、これだと会社としてのノウハウが蓄積されませんし、何よりもお客様に迷惑がかかってしまいますし、
そうならないためにも、しっかりと社内体制を構築し、担当者は関係各所を巻き込み、会社全体で取り組むことがとても重要になります。

現場では下記のことが本当に多く起きています。

実際に予約を受ける方がしっかりと知識を持っていないと、お客様からの理解と信頼は得られず予約をクローズさせることができません。
また旅行会社から旅行者へ説明できるように、簡潔にわかりやすい情報(メニューやポリシーなど)を旅行会社へ伝える力も必要になります。

もちろん経営層、購買部、実際に接客する方も同様で、一通りの知識は必要になります。
実際に誰か一人でも「ハラール?」となると、それはお客様に伝わり、不安を与えてしまうことになります。
よって社内で一枚岩になって取り組むことが、安心、安全に繋がります。

解決策

属人的な体制ではなく、研修なりをしっかりと入れて会社全体で体制を作る

以上となります。
もちろん例外なども多くありますが、これらがすでに取り組んでいる企業様、またこれから始める企業様に役立つ情報であればとても嬉しく思います。