データで見るアメリカのプラントベース最新情報

こんにちは、フードダイバーシティ株式会社の守護です。弊社は「食の多様性」をテーマにメディア、コンサルティング事業を展開しております。

2023年2月、米サンフランシスコに本拠地を置くPlant Based Food Association は、THE STATE OF PLANTBASED IN FOOD SERVICEを発表し、アメリカにおける48.4%(調査対象数=4800、調査地域=アメリカ全土)のレストランでプラントベースメニューが提供されているなどのデータを公開いたしました。

本記事では本レポートの解説を行なっていきます。

尚、前提として日本では「ヴィーガンメニューはヴィーガンの方が食べるもの」と認識されていることがほとんどですが、アメリカでは「食事における一つの選択肢」と認識されていますので、それをもとにご覧頂ければと思います。

6つのハイライト

まず、注目すべきは2022年で米レストランの48.4%がプラントベースメニューを提供していることです。弊社でもこれまでニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの現地レポートを行なってきましたが、実感値としても非常に納得できる数字だと感じております。さらに10年間で+62%も成長しており、直近の2021年から2022年は5.4%も伸ばしていることも注目です。

ちなみに日本でプラントベースメニューを提供しているレストランのデータはございませんが、多く見積もっても3%あるかどうかだと私は考えております。

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また業態別に48.4%の内訳も公開されています。特に「Fast Casual(ファストフードとカジュアルレストランの中間)」においては64.7%と一番高い数字になっており、「Fine Dining」では最も少ない傾向にありました。

仮説として、2000年代以降のアメリカ国内の外食産業で一番伸びている業態と言われる「Fast Casual」は、常に新しいトレンドを掴んできたことで成長してきたこと、また老舗が多い「Fine Dining」は逆で、新しいトレンドを追わなくてよかったからだと考えています。

レストランでお肉を食べないことの理由に関するデータも出ていました。1番は「食事の味に満足しないこと」となっており、その他にはコスト、数時間後にお腹が空くこと、十分なタンパク質が得られないことなども挙げられています。

プラントベースやヴィーガンに関する味の追求が今後の大きな課題になりそうです。

プラントベースミートの提供について約30%のレストランが「さらにメニューを増やしていきたい」と答え、7%のレストランが「減らしていきたい」と答え、約40%のレストランが「キープしたい」と答えました。さまざまな意見があって当然だとは思いますが、約7割ほどのレストランがポジティブな姿勢で取り組んでいることがわかります。

こちらも興味深いデータです。飲食店の60%がプラントベースミートに関しては長期トレンドになると答え、逆に40%が短期トレンドだと答えています。

これからどのような変化になっていくかは分かりませんが、世界的に気候変動などに関する議論は日々活発化していることなどを考えると、やはり長期トレンドでこれからも成長市場だと考えています。

それぞれのプラントベース製品に関する市場浸透率(Peneration)と、12ヶ月の成長率についてです。ハンバーガー大国アメリカということもあって、市場浸透率が高いのはバーガーとチーズとなりますが、成長率に関してはシーフード、卵、魚などが上回る結果となりました。

特に世界的な卵の価格高騰もあり、プラントベース卵の市場は今後も大きな期待が高まっていくと考えています。

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まず、市場浸透率(Penetration)で見ると、一番高いのはアーモンドミルクで3.6%となっています。そして日本ではお馴染みの豆乳ですが、この4年間でマイナス成長になっていることがわかります。そして、市場浸透率は1.9%ですが、この4年間で大きく成長を遂げているのはオーツミルク(+++% は 1000% を超える成長を示します)となっています。

 

以上が本レポートにおける6つのハイライトでした。

人口も多く、購買力も高いアメリカ市場ですが、日本にとってはインバウンドにおいても、貿易においてもとても重要な市場であることに間違いはありません。私は「アメリカがこうだから日本もこうすべき、こうおもてなしすべき」といった話をしたいわけでは決してなく、外貨を稼ぐためにこの市場に対してどのように経済施策を行っていくべきかが重要だと考えています。

例えばレストランの2軒に1軒はヴィーガンメニューを提供する国から来日する旅行者に対して、「1週間前に予約があればできなくはない」といったスタンスでいると大きく消費を取りこぼしてしまう可能性が高いのではないでしょうか。

この記事が多くの事業者様にとって有益な情報になったらとても嬉しく思います。

著者

守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師

1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。

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