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ラマダン中に、日本在住ムスリムはどのように過ごしていますか?

3月23日にラマダンが始まり、世界中のムスリムたちは喜びと楽しみに包まれています。

今回は、日本在住のムスリムたちに、ラマダンの一日を過ごす様子について聞いてみました。

スフール

日本では、季節によってスフール(早朝の食事)の時間が変わります。今年は、早朝3時30分から4時の間がイムサック(断食の開始)のため、3時には食事を済ませます(日によって時間が多少ずれてきます)。

食べ物に関しては、日本人ムスリムや日本で生まれ育ったムスリムと、東南アジアから来たムスリムでは若干異なります。

東南アジアでは、「スフール=朝ごはん」との認識があるため、ご飯やおかずなど、朝ごはんで食べるものをスフールで食べます。一方、改修された日本人ムスリムや日本で生まれ育ったムスリムは、早朝から重い食べ物を摂ると胃がもたれることがあるため、胃に負担の少ない食べ物を選ぶ傾向があります。

我々の調査によると、日本人ムスリムや日本で生まれ育ったムスリムは、早朝に食べるということで、ヨーグルトやバナナ、トーストに卵など、消化しやすい食べ物を選ぶ傾向があります。飲み物は、牛乳やスムージー、水が一般的です。

一方、東南アジアから来たムスリムたちは、定食のような重い食べ物に慣れており腹持ちも良いため、スフールでも定食を食べることが多いようです。

一日中に水分補給はできませんので、スフールには水分補給を心がける人が多いです。

その後、礼拝時間になると、礼拝を行い、もう一度就寝する人もいますし、そのまま起きて通勤通学時間までクルアーンの朗読や勉強などで時間を使う人もいます。

日中

日本では、ラマダンに関わらず、通勤時間や学校の時間は変わりません。

日中、通勤するムスリムたちは普段通りに起きて、普段通りの時間に電車に乗っています。在宅勤務の場合には、通勤時間の前に準備をしっかりと行い、普段と同じように働きます。断食中でも、飲食しないこと以外に特に変わりはありません。

断食期間中にランチを食べず水分も摂取しないので、昼休みを昼寝に使って午後の仕事に備えます。

断食中は、同僚や上司、先生などから心配されることがあります。特に力仕事をする場合には倒れる可能性があると心配されます。しかし、断食に慣れているムスリムたちは自分の限界を知っており、「限界だ」「体調が悪い」と感じた場合は断食を中断することができます。会社や学校との間で理解し合うことが大切です。

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イフタール

夕方、イフタール(日没後に断食を終えるための食事のこと)の時間になると、家や会社で食事をすることが多いです。イフタールは、数時間も断食した後なので消化の良い食べ物を選びます。例えば、デーツやフルーツとお茶やお水を摂ります。また、イフタールと礼拝時間がとても近いのでイフタールの後はすぐに礼拝を済ませ、その後晩御飯を楽しめます。

モスクでイフタールする場合、イフタール食べ物(消化の良く軽いもの)は晩御飯と一緒に頂くことがあります。以下の写真のように、イフタール用のデーツとフルーツに加え、晩御飯に頂くビリヤニライスを一緒に配られます。

その場合、まずデーツを食べて礼拝を済ませてからメインのご飯を食べます。モスクでは様々な国のムスリムたちが集まって一緒に食事しますので、海外から来たムスリムはイフタールの時間に全部食べてから礼拝を行うことを見掛けることがあります。

モスクで頂いたイフタールの食べ物

ラマダン中には、デーツを持ち歩いていることが多いです。どこにいても、イフタールの時間が来たら、すぐにデーツを食べて断食を終わらせます。

ラマダン中にデーツを食べることが多いです。

近年、デーツは入手しやすくなっています。数年前は海外から持ってきたり、ハラールショップでしか購入できなかったりしましたが、最近では、アマゾンや全国に展開しているカルディコーヒーファームの店舗で購入できます。

晩御飯

ラマダンの晩御飯は、定食やワンプレートなど、いつものようなご飯を食べますが、量に気をつけます。数時間も断食した後なので、思い切っていっぱい食べたい気持ちはありますが、イフタールの時に少し食べたこともあり、次の礼拝に眠たくならないように血糖値の増加に注意しています。

ラマダンということで、「食べ物に困らない」「美味しいものを食べられるこ」とに感謝の気持ちが高くなります。

晩御飯の後に、通常の礼拝に加え、タラウィーというラマダン期間中に行われる特別な夜間礼拝を行います。その後はクルアーン朗読をします。ラマダンは祝福な月なので、いつもより多く礼拝やクルアーン朗読などのお祈りを行います。

タラウィーとクルアーン朗読は主に自宅で、一人または家族と一緒に行います。イスラム圏の国々では、モスクでタラウィーとクルアーン朗読をすることが多いようですが、日本ではモスクがまばらで距離も遠く、次の日の仕事や学校もありますので、週末や時間がある時にしか行けません。

夜のお祈りが多くなりますので、寝る時間も遅くなります。夜11〜12時に寝て、スフールで早朝に起きて食べて、その日の活動が始まります。このサークルは約1ヶ月間も続きます。

1ヶ月間の断食やお祈りに頑張って、最後には祝福なお祭りが待っているのでワクワクが止まりません。

ムスリムにとってなぜ断食が大事?

イスラム教では「5行6信」、イスラム教徒が信ずべき六つの信条と実行すべき五つの義務があります。その義務の一つはラマダンの断食です。

ラマダンの断食の目的は、身体的、精神的、そして社会的な健康を促進することにあります。断食は、自己管理能力を高め、自制心を養い、人格形成に貢献するとされています。また、断食を通じて、貧困や飢餓に苦しむ人々の気持ちや体験に共感し、慈善行為を行うことが奨励されます。

ラマダンの断食は、ムスリムにとって大切な精神的な実践であり、信仰の深化を図ることも目的のひとつです。

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最後に

「1ヶ月も食べないの?」と聞かれるムスリムが少なくないと思います。ムスリムが行う断食は、昼が食べないが、夜はいくら食べても飲んでもいいです。

断食時間は滞在する国によって(その場所の太陽の動きによって)は異なりますが、東南アジアの国では約12時間、日本では約14~16時間(季節によります)です。

ラマダンの断食は、ムスリムにとって重要な実践であり、信仰を深めるための一つの手段です。断食によって、食べ物を選ぶ際に健康について考えることができます。健康上(妊娠と生理含む)や旅行などで断食が難しい場合は、断食しなくても大丈夫です。その代わり、他の月に同じ日数に断食を行うか、貧困に苦しむ人々に寄付します。

断食期間中は、お腹が空いたり、のどが渇いたりすることが当たり前ですが、それは毎年行われる祈りの一つであり、子供の頃から体を鍛えて1か月間の断食に備えるようにしていますので、むしろ断食を楽しんでいます。

しかし、仕事や授業中には集中力が低下し、力仕事では疲れやすくなるかもしれません。この期間中は、特に周りからのサポートが必要です。

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