皆さん、こんにちは。
Fooddiversity.todayにて、在日ムスリムの食事についての記事を書かせて頂いている白澤です。
今回は、ラマダンが近い(今年2023年は3月22日から4月20日の予定)ということで、在日ムスリムのラマダンの過ごし方について紹介します。
さて、皆さんはラマダンと聞くと、どんなことを想像されますか?
「断食だよね…」、「お腹空きそう。」、「水も飲めないの?」、「ばれなきゃ食べてもいいんじゃない?」。
私は、こうしたことを周りからよく言われます。おそらく、ラマダンは断食をすること、というイメージが強いため、何も飲食できないのは大変そう、過酷そう、と捉えられることが多いのでしょう。
しかし、実際はそんなに過酷ではないですし、逆に楽しみもあるのです。
この記事では、ラマダンについて簡単に説明したうえで、私たちが何を食べているのか、どんな楽しみがあるのか、ということを述べていきたいと思います。
1.ラマダンとは
まず、ラマダンについて説明します。
時々、「ラマダン=断食」と思われている方がいらっしゃいますが、これは誤解です。ラマダンは、イスラームにおける月の名前です。皆さんが、普段使用している1月、2月、・・・と同じようなものです。そのため、ラマダン月と言われることもあります。
私たちムスリムは、ラマダンを祝福された月と捉えています。他の月と比べて、善行に対するご褒美が大きいからです。そのため、クルアーンをいつもより多く読んだり、長い礼拝をしたり、悪い行いを改めたりなど、普段より信仰深くなります。
そうした行いの中でも、義務とされているのが断食です。ラマダン期間中は、毎日、日の出から日没時まで飲食をしません。もちろん、水も飲まないです。このように聞くと、やはり過酷な雰囲気があるかもしれません。
ただし、裏を返せば、日が沈んでいる間は、何を食べても何を飲んでもOKということです。例えば、今回だと、日の出が午前4時ころ、日没が午後6時ごろなので、この間、断食をします。そして、それ以外の時間は、自由に飲食できます。
また、私たちは、スフール(断食前の食事)とイフタ―ル(断食後の食事)をしますが、スフールは夜中なので、そのあと礼拝をして寝ることが多いです。そのため、断食時間が実際よりも短く感じられます。
しかし、日没が遅い夏の断食には、厳しい日もあります。断食時間が長くなる上に、暑さでのども乾くからです。私の場合は、中学生の時に運動部に所属していたので、断食と部活の両立がきつかったです。そのため、試合のときは断食をしなかったりなど、無理のない範囲で断食していました。
いま考えると、担任の先生や部活の顧問の先生は、私が倒れてしまわないか心配だっただろうと思います。生徒の身の安全を守るという責任はあるが、断食することを止めることもできない、という複雑な状況だったことが予想されるからです。
心配する学校や会社側と、断食したい生徒や従業員側
こうした状況は、社会に出てからの方がより顕著に表れるでしょう。従業員に何か起きた場合に責任を負う会社側と断食をしたい従業員側、という関係のようにです。
どちらの主張も正しいので、両者が妥協しあって解決案を出すのが良いですが、信仰度合いが人それぞれということもあり、全員が納得できる状況を作るのは難しいです。ただ、今後も日本において働くムスリムの数は増加するので、議論していくことは大切だと感じます。
ラマダンを一番楽しみにしているのは実は子供?!
そもそも、子供にとって断食は義務ではないのですが、「ラマダンは特別で、断食をすることで1人前になれる!」という風に、憧れを持つ子供も多く、ラマダンがくることを楽しみにしています。友達同士で、何回断食をしたかを競い合っている子供たちも見かけます。
このように、ラマダンは、子供も含めた全ムスリムが大事にしている月なのです。そして、その中でもメインとなるのが断食ですが、丸1日行うのではなく、飲食できる時間が十分にあります。そのため、体調を崩したりしない限り、断食を中断することはないです。
2.ラマダンでの食事と楽しみ
ここからは、ラマダンにおける食事と楽しみについて、述べていきます。
普段の食事の様子はこちら⇓
前述のとおり、ラマダンには、スフール(断食前の食事)とイフタ―ル(断食後の食事)があります。ここでは、白澤家を例に、どんなものを食べているか、紹介していこうと思います。
夜中に食べる「スフール」
まず、夜中に食べるスフールです。私と妹は、ここで重いものを食べると目覚めが悪くなるので、普段はヨーグルトとバナナ、ナツメヤシを食べています。両親と兄、弟は、日によって変わりますが、鮭、目玉焼き、カバブ(スパイスハンバーグのようなもの)を食べることが多いです。
高校生の弟は、ラーメンを食べることもあります。私も、夜中にラーメンを食べたくなりますが、起床時に浮腫んでいそうなので、まだ挑戦できていないです。
また、スフールでは、水分を取ることを意識しています。コップ3杯は、頑張って飲むようにしています。
みんなが楽しみにしている豪華な「イフタール」
次に、日没後に食べるイフタ―ルです。これは、普段の夕食よりだいぶ豪華です。
ナツメヤシ、サラダ、揚げ物、お肉、お魚、スパイスカレー、和食、がほとんどそろいます。こんなに多い理由としては、祖父の要望で和食とお魚、子供たちの要望で揚げ物とお肉、父の要望でスパイスカレー、とそれぞれの要望に応えるからです。種類が多いため、イフタ―ルの準備は家族総出で行っています。
他にも、断食中にスーパーにいくことで、目にするもの全部がおいしそうに思えて、フルーツのような普段は買わないようなものを買ってしまうことも、理由の1つだろうと思います。
こうして、ごちそうが並ぶイフタ―ルは、ラマダン期間中、私の最も好きな時間となっています。そして、同時に、食べるものが当たり前のようにある、という現状が恵まれていることを実感できます。
食事以外に楽しみがいっぱい!
ラマダンにおける楽しみには、このイフタ―ルも含まれますが、それ以外のこともあります。ここでは、3つ紹介します。
1つ目は、ラマダンカレンダーです。クリスマスカレンダーと似たようなもので、ラマダン期間である約30日間分を用意しています。30個の袋の中には、小さなお菓子やミニコスメが入っていて、毎日イフタ―ルをした後に開けています。
これは、開けるときに楽しいのはもちろん、ラマダンに入る前に、何を入れようかな~、と考えて準備する段階もわくわくして、好きです。
2つ目は、お呼ばれが多いことです。ラマダン期間中は、おもてなしをすることでもらえるご褒美も大きくなるので、他の月より、お呼ばれの回数が増えます。これは、イフタ―ルへの招待ということで、おいしいご飯やデザートが用意されています。また、私は、友人に会えるという点でも楽しいです。
3つ目は、家族との時間が増えることです。ラマダン期間中は、毎日、スフールとイフタ―ルは家族全員がそろいます。
イフタ―ルの準備もみんなで行うため、いつもは午後9時ごろに帰宅する父も、午後5時半には帰宅します。そのため、自然と会話が多くなるし、わいわいしながら食べるご飯は、特別な感じがします。
他にも、ラマダン期間だけ家をデコレーションする方などもいて、各家庭によって、様々な楽しみがあるようです。
3.おわりに
私たちムスリムは、毎年、特別な月であるラマダンが訪れることを、準備しながら待っています。充実して過ごせるように、子供にとっても楽しくなるように、と工夫をしている家庭も多いです。ムスリムの友人がいらっしゃる方は、ラマダンについて尋ねてみると興味深いと思います。
また、「ラマダン中にご飯に誘っていいのか?」という疑問を持っている方々もいらっしゃいますが、断食明けの午後6時以降であればOKです。ただ、断食後は普段と食べたいものが変化することもあるので、何を食べたいか、聞いてみると良いかもしれません。
この記事が、ラマダンについて、よく分からなかったことや知りたかったことなどを解決するきっかけとなれば幸いです。また、過酷そうなラマダンへのイメージが少しでも変わったなら嬉しいです。
最後に、ここまで読んでくださりありがとうございました。