ラマダン2022

2022年のラマダン(断食月)まで1ヶ月を切りました。宗派や国によってラマダンの期間に多少の差異があるものの、日本では今年2022年のラマダンは4月3日から5月2日までとするのが大多数となっています。

さて、Food Diversity todayはこれまでラマダンの基礎情報について、以下のようにいくつか記事を配信してきました。

2021年ラマダンはいつから?今さら聞けない「ラマダン」の7つのこと

https://fooddiversity.today/article_87047.html

2022年の断食月「ラマダン」はいつから?ラマダンの食事にまつわる3つの慣習

https://fooddiversity.today/article_98057.html

日本でイスラム教徒(ムスリム)として生活する:国際結婚をした家族のラマダン

https://fooddiversity.today/article_90674.html

今回は、視点を少し変えて、「ムスリム社員を抱える日本企業」の目線から、どのようなことに配慮すればいいのか?どのようなことに気をつけるのか?についてご紹介します。

1. ダイバーシティを理解し、ムスリム社員の断食を見守る

断食といっても、実際に周囲が「特別に」気をつけることは少なく、「周囲の理解」が一番大切になります。

基本的にはラマダン中は、日の出から日没まで飲食をしないので、日本人の感覚であれば健康的に心配になりがちですが、ムスリムは一般的に子供の頃(小学生頃)から断食を行っているので、身体も心も慣れています。したがって、過度な心配はせず、優しく見守りましょう。ポイントは、理解を持って「見守る」ことです。

また、イスラム教において、ムスリムの信仰には個人差があります。したがって、礼拝をする人・しない人、ヒジャブを着用する人・しない人、断食をする人・しない人等、宗教実践も人によって異なります。ラマダン中に断食をしてないムスリムがいても、その人に強要をしたりしないようにしましょう。
また、妊娠中・病気・月経などの理由によって断食をしない人もいますので、先週は断食をしていたが、今週は断食をしていないというケース(特に女性)もありますのでしっかり理解しておきましょう。

2. ランチに誘うのは失礼?差し入れはOK?

勤務中に飲食を伴うことは多くはありませんが、ランチや休憩時に飲食をムスリム社員と共にすることもあるでしょう。もちろんムスリムでない方が知らずにムスリムの方をランチに誘ってしまうこともよく起こります。しかし、だからといって理不尽に怒ったり、不機嫌になったりすることはなく、そういった場面では、お誘いを断ることもあります。決して悪意があるわけでもないので安心してください。また、日没後は断食が明けるので、一緒にご飯に行ったりすることもできます。

差し入れも同様で、断食中は食べることはありませんが、小分けのお菓子などであれば、日没後に食べることができるので問題ありません。

3. 体力仕事や現場仕事・・・どうしても健康面が気になる?

業界や職種によって、工場での作業や現場仕事等、体力が必要な仕事についているムスリムも少なくありません。そのような状況で断食を続けると、いくら昔から断食をしていて慣れているからといっても、健康状態が気になってしまいます。そのような場合は、ぜひ一度、ムスリム社員の方と相談しましょう。ムスリムが多い国では、ラマダン中は仕事がスローペースになったり、勤務時間が断食時間に合わせて変わるので環境的にも日本と異なります。企業側も、ムスリム社員側もお互いが理解し合うことが求められますので、ぜひ問題やトラブルが起きる前に相談・解決しましょう。

もし、断食などでムスリム社員が心配な場合は以下までご相談ください。
https://career-diversity.com/contact/

おまけ ラマダン後はどうする?

1ヶ月のラマダンが終了すると、断食明けの祝祭(イード)が始まります。イスラム諸国では、断食明けの祝祭は、祝日になりお祝いムードになります。日本のお正月やお盆のように実家に帰省し、家族と共にお祝いをすることが慣習となっていることから、ここに合わせて長期休暇や有給を当てるムスリムの方も多いので、この慣習を知っておくと「なんで突然、長期休暇?」と驚くこともないかもしれません。

また、ラマダン終了後の次の日の朝には、モスクでお祈りする事が推奨されているので、この日だけ有給や半休を取る方も珍しくありません。

断食明けの祝祭(イード)

特別視することなく、いつもと変わらない日常を

これまでお話ししたようにラマダンだからといって周囲がムスリム社員を特別扱いする必要はありません。しかし、相手の文化を知っておく、多様性への理解を示すことがとても大切であり、それが現在、企業に求められているダイバーシティのあり方につながることでしょう。

このラマダンを機に、ダイバーシティを見つめ直しませんか?