2年半ぶりの海外視察レポート
こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。
新型コロナウイルス感染症が蔓延して2年以上が経過し、世界を取り巻く食環境についても大きな変化がありました。私自身も2020年2月を最後に海外渡航は控えてきましたが、インバウンド経済復活の機運が高まる中、いち早く情報を掴むために今回ロサンゼルスへ行ってきました。
本記事はデータなどもひと通り目を通していますが、JETROロサンゼルスの多大なるサポートを頂き、私が現場で見たもの・感じたものを中心に書いていきたいと思います。
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スターバックス
これは以前からですが、「Vegan」や「Vegetarian」の表記が当たり前にあります。さらにインポッシブルミートを使用したメニューもありました。改めてですが「日本でも肉や魚を使っていないメニューにはVegetarian表記をしっかりとすべき」と感じています。例えば、昆布や高菜のおにぎりにも表記をしっかりと行うだけで、海外の方に手にとっていただく可能性は増えると思います。
また、今回スターバックスだけでなく至るところで新しく目についたのは「High-Protein」という表記ですが、これは「近年、体に必要なタンパク質の摂取量についての意識が高く、効率的に摂取できるHigh-Protein食材のニーズが高まっている(JETROロサンゼルス:柴原友範次長)」という話をお伺い致しました。
日本のスターバックスでは、植物性ミルクのオプションは豆乳とアーモンドミルクのみでプラス50円ですが、ロサンゼルスでは豆乳はオーガニック豆乳となっていて、更に「ココナッツミルク」と「オーツミルク」の選択肢があり、プラス80¢(約108円)と価格は日本の約2倍となっています。
植物性のミルクは通常のミルク(牛乳)と比べても価格も安いだけではなく、常温保存も可能で、さらには賞味期限も長いことからまとめ買いも可能になります。商売的な意味でもこのような選択肢をしっかりと作ることは重要だと感じます。
ちなみにスーパーの植物性ミルク売り場では、日本と比べても「豆乳が少ないこと」が分かります。感覚的にはオーツ4、アーモンド4、その他2くらいでした。ちなみにアメリカでは「SOYという言葉に関して”イメージが家畜の餌”であったり”遺伝子組み換えが心配”ということで、避けている人もいる(JETROロサンゼルス:柴原友範次長)」とのことをお伺い致しました。ただし大豆由来でも「TOFU」などには上記のようなイメージがなく「Proteinがしっかりと摂れるヴィーガン食材の代表格」として注目は高まっているのことでした。
日系レストラン
数少ない滞在で行けたのは2軒ですが、両店舗ともしっかりとヴィーガンメニューで実績を出されている印象です。
Marugame Udon
通常のかけうどんが5.95ドルのところ、ヴィーガンうどんは10.25ドルと約1.7倍の価格となっていました。出汁は白濁していて、大豆ミートの塊が上に乗っています。そして味もこれまでに食べたことのないものでしたが、店員さんに「どれくらいの方が注文しているのか?」と尋ねてみると、なんと「15%」と言われました(※Marugame Udonとしてオフィシャルの数字ではありません)。つまりこれを売っていないとその15%の売り上げはなかったということです。改めて思うのは「日本人の常識・価値観」で考える必要性がないということです。おそらく一般の日本人職人だと「透き通った精進出汁」を作りがちだと思いますが、色が白濁させてでも味をしっかりと付けたものが売れている事実を見ると、やはり発想を縛られてはいけないと強く感じました。メニューはこちら。
Tsujita
日本でも有名なつじ田のロサンゼルスは常に行列を作っています。普通のとんこつラーメンが12.95ドルで、ヴィーガンメニューも同じ金額です。味もとても美味しく、言われないとヴィーガンだと分からないクオリティでした。同じく店員さんに「どれくらいの方が注文しているのか?」と尋ねてみると「数字は分からないけど、かなり多くて常連も付いている」とのことでした。1店舗目のお店の行列が長くなりすぎて、なんと現在は同じ通りに3店舗を展開するほどの圧倒的な人気店となっています。メニューはこちら。
現地レストラン
Crossroads Kitchen
米VEGNEWSが選出するTHE 2022 VEGGIE AWARD WINNERSにおいてBest Vegan Fine-Dining Restaurantに選ばれたCrossroads Kitchenは、18時に予約して来店するも80席ほどある店内は既に満席で、行列もできるほどでした。全ての料理においてクオリティは非常に高く、一つ一つの作品に様々な工夫が凝られていて、料理のプレゼンテーション含めて本当に素晴らかったです。ニューヨークタイムズのベストセラー「The Conscious Cook」の著者で、オーナーシェフでもあるTal Ronnen氏は、数々の著名人の結婚式や、米国上院ディナーのケータリングなどで多くの評価を得て全米で注目されるシェフとのことです。
Little Pine
Happy Cowが選ぶVegan Friendly Restaurants in Los Angelesで1位のLittle Pineは、最近注目されているシルバーレイクのオシャレなレストランです。こちらも一つ一つの料理のクオリティが非常に高く、とても美味しくいただいたのですが、それ以上に接客のサービスレベルが非常に高く、ホールスタッフがとても楽しそうに料理を説明する点などは非常に素晴らしいと感じました。またグルテンフリーオプションもかなり充実していた印象です。
Ramen Hood
Happy Cowが選ぶVegan Friendly Restaurants in Los Angelesで2位のRamen Hoodはグランドセントラルマーケット内にあるカウンター15席ほどのラーメン屋です。味はとんこつ味噌のような感じで、中太のもちもち麺がとてもよく絡み、ピリッと効いたスパイシーさがなんとも病み付きになります。”Pork” Katsuはオムニミートのランチョンを使用し、さらに食感のいいキングオイスターマッシュルームが食べ応えを演出してくれていて、とても美味しく頂きました。さすが2位の実力店ということで、開店と同時に多くのお客様が来店していました。
Shojin
Happy Cowが選ぶVegan Friendly Restaurants in Los Angelesで4位のShojinは、全てのメニューがヴィーガンで且つ、グルテンフリーです。カルバーシティとダウンタウンに2店舗構え、ロサンゼルス在住者に支持を得るお店です。味も非常に美味しくて、和の技術を最大限に駆使して、現地の嗜好にしっかりとアジャストしているイメージでした。「和食×ヴィーガン」の可能性をしっかりと感じることができるお店です。
Veggie Grill
米VEGNEWSが選出するTHE 2022 VEGGIE AWARD WINNERSにおいてBest Vegan Restaurant Chainに選ばれたVeggie Grillは全米に31店舗(2022年8月現在)構えています。メニューも非常に豊富で、ビヨンドミートやインポッシブルミートを使用したメニューもたくさんあります。今回はJapanese Katsu Style Slidersを食べましたがこちらはインポッシブルミートを使用したカツで、クオリティは非常に高くメンチカツのような感じでした。昼時には店内も満席で非常に高い人気が伺えるお店でした。
その他
オーガニック
中級から高級のスーパーには確実に「オーガニック野菜コーナー」があり、通常の野菜との価格差は大体20%〜30%ほど高くなるイメージです。
Whole Foods Marketにおける魚や肉に関する表記
以前から表記はなされていましたが、改めて今回も記載致します。
左から
【天然】
持続可能な漁業のための世界基準で認証されたもの(MSC認証)
World’s leading certification program for sustainable fisheries.
【天然】
環境負荷のかからない形で捕獲している
Environmentally friendly catch method
【天然】
魚の豊富さ、捕獲方法、管理体制に何かしらの懸念はある
With abundance, catch method, or fishery management
【天然】
問題があるので私たちは売りません
Overfished, poorly managed or harmful catch method
【養殖】
私たちの基準を第三者監査が確認済です
Third-party verified to meet our whole foods market quality standards
1、ケージなし、枠なし、混雑なし(最低基準として)
No Cages, No Crates, No Crowding
2、1よりも更にいい環境で、抗生物質なども使わず野菜中心の食事を提供
Enriched Environment
3、動物が屋外と屋内を選択できる環境
Enhanced Outdoor Access
4、年中牧草地で飼育されている
Pasture Centered
5、年中牧草地で飼育されていて、身体的な変更(去勢など)をされていません
Animal Centered; No Physical Alterations
5+、最高レベルの基準で、動物は生涯を同じファームで過ごす
Animal Centered; Entire Life On Same Farm
※参考 https://globalanimalpartnership.org/certified-gap
またWhole Foods Marketにおける惣菜売り場では「グルテンフリー」「乳製品フリー」「ベジタリアン(乳や卵は含む)」「KETOフレンドリー」「PALEOフレンドリー」「プラントベース」「ヴィーガン」においてそれぞれ定義が説明されていました。ちなみに「プラントベース」は植物性のもの、穀物、果物などで作られたもの、「ヴィーガン」は肉、魚、乳、卵、はちみつなどを使用せずに作られたものという定義になっています。右側にはコンタミに関する注意も書かれています。
ヴィーガン、プラントベースフードの売り方
以前はスーパーなどでも専用売り場を作っているイメージが多かったですが、今回は「お肉売り場」で普通に売られているのを多く見ました。
一方で乳製品に関してははっきりと分かれているケースが多かったです。これは乳アレルギー、乳糖不耐症などの問題が要因だと思います。
以前アメリカに来たときより改めて感じるのは「選択肢としてのヴィーガンオプション」があまりにも一般的になっていたことです。特に「鶏肉 or 魚 or 野菜」という選択肢を非常に多く見ました。日本においてもこの選択肢を作ることはとても重要だと感じています。
これも以前からですが、脱プラやゴミ・フードロスを出さない仕組みとしてバルクショップが多くのスーパーで見ることができます。売られているのは主に穀物やスパイスなどで、環境問題がアメリカでも多く騒がれる中で需要は高まってきているとの話を伺いました。
人気のアイスクリーム屋にもヴィーガンメニュー
若者を中心に人気が出ているSalt & Strawにおいても、普通にヴィーガンメニューが販売されています。日本のアイスクリーム屋ではなかなか見ない光景ではないでしょうか。
KOMBUCHA
高級スーパーには、日本では「紅茶キノコ」として知られるKOMBUCHA売り場がとても充実していて、様々な味が売られています。中には「Premium Juice」として販売しているお店もありましたが、日本でもソフトドリンクのひとランク上の飲み物として提供していくのはとてもいいと思いました。
エンゼルスタジアム
大谷翔平選手が所属するエンゼルスの本拠地、エンゼルスタジアムでもビヨンドミートを使用したベジバーガーが販売されていました。
振り返って
とにかく予定を詰め込んだ1週間でしたが、多くのINPUTをしてきました。
また、2年半ぶりの海外ということもあり、さまざまな感覚が鈍っていたことにも気付けました。飲食店やスーパーなど含め全てのものに「高い」と感じましたが、世界は新型コロナウイルス感染症にもひと段落つけて、経済を大きく動かしていることを実感できました。
Happy CowのTop5のうち2店舗がラーメンと和食であることなど、改めて日本の食についてのポジションと可能性についても感じました。日本が食で成果を出すためにやっていくべきヒントも多く掴んで来ましたので、これからの講演でそれについても伝えていきたいと思います。
長文、乱文でしたが、最後までご覧いただきまして誠にありがとうございました。