ベジタリアン・ヴィーガンメニュー、どうやって値付けをすればいいでしょうか

こんにちは。食の多様化対応サポートと情報発信を行うフードダイバーシティ株式会社の守護です。
昨今多くいただく問い合わせは「ベジタリアン・ヴィーガンメニューについてどうやって値付けすればいいでしょうか?」です。

具体的には下記のようなご相談を受けます。
・野菜メニューだけ頼まれると客単価が下がるので、しっかりと単価が上がるメニューを作りたい
・原価が明らかに一般メニューに比べて低いので、価格を上げにくいです
・日本人のお客様に価格で違和感は持たれたくない

本日はこちらについ深掘っていきます。

価値観の違いを理解することから

まず、私がお見せするのはこちらの図です。

外国人のベジタリアン・ヴィーガンは右図のように料理の価値を見出している方が多く、一般日本人のお客様のように「原価はお客様と共通認識」ではないことを理解することが第一歩です。
これは逆に言うとベジタリアン・ヴィーガンにやってはいけないこととして「原価ベースで料理の価値をお店側で決めてしまうこと」であり、決して「お金がなくて、また質素な食事が好きでベジタリアン・ヴィーガンになっているわけではない」ということを改めて理解する必要があります。

例えば実際に「相手の主義を守る(尊重する)+日本らしさ・和食ブランド+日本の野菜+野菜のストーリー+プロの調理スキル」を積み上げた自由が丘のヴィーガンレストラン菜道さんは世界一の称号を獲得されています。菜道さんは全て野菜や穀物なので、当然食材の原価率は高くありませんが、実際のレビュー見る限り、多くのお客様が食べて価値に納得している様子がとてもよくわかります。更に菜道さんがすごいのは一般日本人のお客様に対しても「味」で評価を受けていることですが、ここは今回深くは触れません(是非とも一度足を運んでみて頂くことを強くお勧め致します)。

また上記図を少しだけ補足すると、昨今「大豆ミート」については、既に世界で広く一般化していることもあり「日本らしさ」もなければ、ベジタリアン・ヴィーガンの方は内食でも普通に食べているので「外食で食べるもの」としてはあまり価値を感じない人が増えてきているのを感じています。大豆ミートよりも日本の伝統的な野菜や穀物であったり、そのこだわり、風土、歴史、生産者のストーリーなどに価値を感じる人たちが非常に多いです。

価格の上げ方

次にベジタリアン・ヴィーガンメニューで価格を上げるやり方として代表的なものは下記です。
※ここはシェフそれぞれの考え方が重要な部分なのであくまでも参考まで

・ベジタリアン・ヴィーガン専用メニューの作成
・七輪での炙りや豆腐作りなどテーブルでの体験型
・トリュフ、松茸、湯葉などの高級素材使用
・ヴィーガン寿司、ヴィーガンうなぎ、椎茸ステーキなど高級和食アレンジ
ヴィーガン認証日本酒の提供
・使用している野菜のこだわり、風土、歴史、生産者のストーリーをしっかりと伝える
・コース(日本の地方であれば、全て道の駅で仕入れた食材を使ったフルコースなど)
・海外の代替肉を使用する(日本ではこれから)

権八のヴィーガン寿司は4,800円

「清流山水花 あゆの里」のヴィーガンコースでメインとして提供する人吉産タケノコ

世界一のヴィーガンレストラン菜道で提供されるトリュフラーメンは3,300円

台湾のモスバーガー、ビヨンドミートを使用したハンバーガーは通常メニューの約2倍

新しいことよりも、掘り起こしにたくさんのヒント

ここまで価値観の違いや、価格の上げ方について見てきましたが、最後に食材の選び方とレシピの考え方についても少しだけ触れたいと思います。ポイントは下記2点です。

・大豆ミートやヴィーガン〇〇といった既製品を使う前に、日本の伝統野菜や食材に置き換えることができないか
・置き換えることを考える前に、先人の知恵にヒントはないのか

例えば先述した大豆ミート。繰り返しますが大豆ミートの使用が悪いということでは決してありません。当然一つの選択肢としてとても重要です。
しかし「大豆ミート」だと飲食店として売値を上げることも難しい現状、それに変わるような日本古来からある野菜などはないものか?を探すことがとても重要になります。
最近では食感がしっかりと出る乾燥野菜、キノコなどを使ってアレンジするお店がとても増えてきました。

またヴィーガンチーズ。
こちらも既製品のものは流通してきておりますが、最近九州の道の駅で見つけた「豆腐の味噌漬け」はまさにチーズに似た味と食感でした。
更にその地域に800年も昔から伝わる伝統製法で作られていると伺って、ストーリーも完璧。価格も高くはありません。

そして先人の知恵といえば、精進ウナギが挙げられると思います。
こちらも大豆ミートを使って、、、の前に、山芋、レンコン、ゴボウ、豆腐、焼きのり、片栗粉を使って作る精進アレンジが既にレシピとしてあります。

菜道のヴィーガンうな重

実は世界一のヴィーガンレストラン菜道さんの楠本シェフはよく講演でも「菜道では新しいことをやっている感覚はない」とお話されていますが、現に菜道さんのメニューは「一般日本人が普段食べているもの」ばかりです。最近菜道さんではおでんがとても海外のベジタリアン・ヴィーガンにとても大人気のようですが、もちろんおでんは新しい料理などではありません。

ベジタリアン・ヴィーガンというと先進的で、アイディア勝負、新しいジャンルの料理というイメージを持たれることは多いですが、菜道さんが世界一位を獲得したということは海外のベジタリアン・ヴィーガンが日本のレストランに求めているものは単純に上記の2点だということではないでしょうか。

以上、長文乱文となりましたが、ベジタリアン・ヴィーガン対策をこれから始める企業様にとって有益な情報になっていれば幸いです。