大学がフードダイバーシティ対応できない3つの理由とは

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

弊社では毎年多くの学生から「自分の大学にハラールやヴィーガンの選択肢がなくて、友達の留学生が困っている」という相談を受けます。主に、留学生の友人と一緒にランチなどを食べる機会があった際に、それらがなくて一緒に食事ができなかったなどの経験をされた方です。

弊社に相談前に、多くの学生がすでに大学側に交渉したそうですが、主に下記の3つ理由で断られるようです。

①留学生は母数が多くないから、専用メニューはできない(作ってもロスが出る)
②ハラール専用の厨房がないから、難しい
③学食は”委託会社”が入っているから、難しい

上記は一見どれも大人側の都合で正当な理由に見えますが、実はこれは単に理解不足が要因だったりします。

本日はその解決方法について解説したいと思います。

大学の学食(カフェテリア)

①留学生は母数が多くないから、専用メニューはできない(作ってもロスが出る)

一番多い理由はこちらです。多くの大学はムスリムやベジタリアンの存在は認識していますが、何も行動を起こせていないのは「ムスリム専用メニュー」や「ヴィーガン専用メニュー」を作らないといけないという認識でいるからです。このような認識だと「工数がかかる」「専用食材を仕入れないといけない」「メニューを考えるのが大変」となってしまいます。

このように交渉しましょう

何が食べられるのかの共通点を整理して、ムスリム「も」、ベジタリアン「も」食べられるメニューをグランドメニューに入れませんかと伝えましょう。下記の図を見せて「専用メニューを作らないといけない」と認識している学校側の理解を変えるところがスタートです。学校側は知らないだけなので、粘り強く伝える必要があります。

また断言できますが、ハラールやヴィーガンの対応で食材原価は上がりません。ここでは詳しく論じませんが、むしろ食材原価が下がるケースすらあります。

東京工業大学の事例

共通点を見る考え方

ペペロンチーノはベーコンをキノコに変更するだけで多くが食べられるようになる

②ハラール専用の厨房がないから、難しい

インターネットで少し情報を探すレベルだと「ハラール対応は専用厨房が必要」という情報に当たることがあります。大学側としては「そんなのできない」と判断するには十分な情報で、学生からの提案を断るための盾として使ってきます。

このように交渉しましょう

ムスリムの方が求めているのは「ハラール専用の厨房」ではなくて「どのようにして対応しているかの情報」です。具体的には下記図のようなポリシーを作って提示することが重要になります。それでも中には「食べられない」と判断するムスリムの学生も少しは居るかもしれませんが、「大学としてやれることはここまでです」という姿勢で問題ありません。

ちなみに日本全国の大学で「ハラール専用の厨房」を持っている大学はAPUだけですし、飲食店においてもハラール専用厨房を持っているレストランは数えるほどしかありません。

③学食は”委託会社”が入っているから、難しい

「委託会社に運営をお願いしているから、細かい依頼はできない」というケースもあります。これに関しても単に委託会社が「できない理由」は①と②がほとんどですので、必ず解決はできます。

このように交渉しましょう

大学側に①と②を見せて大学側が理解したあと、大学側から委託会社に伝えてもらいましょう。「ハラールやヴィーガンをやってください」ではなく、「(具体的に)このようにやってください」と伝えることもポイントです。委託会社は「何かあっても責任が取れない」などということも言ってくる可能性もありますが、ポリシーを作る以上は何かが起きることはありえません。

その他注意点として「ネーミング」

あくまでも一般の学生にも普通に売れる状態がいいので、一般の学生が「美味しくなさそう」「これは自分が食べるものではない」と感じるネーミングには要注意です。

例えば下記図のような「ベジカレー(豆)(ベジタリアン推奨)」だと残念ながら一般の学生には違和感が出ると思います。例えばですがこれを「たっぷり野菜のゴロゴロカレー」などにすれば違和感なく選んでいただけるのではないでしょうか。一般の日本人の学生が豆のカレーを食べる機会は多くありませんが、自宅などでも野菜をたくさん入れたゴロゴロカレーには違和感はないと思います。

また上記事例にも出していますが「ハラールチキン照り焼きソース」ではなく、「チキン照り焼きソース(右下に小さくHalal Friendly)」のほうがいいと思います。このような配慮はとても重要です。

 

以上となります。

今後、人口減社会に入っていく日本にとって、大学を含めた日本の教育機関は海外からの学生をお呼びすることがとても重要になってきます。世界人口の約40%は何かしらの食のルールを持っている事実を直視し、「できない理由」ではなく「実現できる方法」をしっかりと考えて、この分野を取り組んでいく必要があると思います。

著者

守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師

1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。

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