ヴィーガン料理の世界大会「ベジタリアン・チャンス」で日本人初優勝

2019年、ヴィーガン料理の世界大会「ベジタリアン・チャンス」で日本人初優勝のタイトルを獲得した上田悟シェフ。

フードダイバーシティトゥデイ取材班は上田シェフに取材のお時間を頂き、受賞経由や世界からみた日本の可能性について伺いました。

ベジタリアン・チャンスとは?

vegetarian chance ホームページから引用

ベジタリアン・チャンスはイタリアで毎年開催される世界一のヴィーガン料理人を決める大会です。2020年には日本大会が初めて開催されたことで話題となりました。

ーまず始めに、イタリアへ渡った経緯を教えてください。

辻調理師専門学校を卒業した後は大阪のイタリアンレストランで数年間働きました。当時の先輩シェフの中にイタリア帰りの方がいて、その方の影響もあり、イタリア行きを決意しました。イタリアに着いた後は、1年間トリノの一つ星レストラン「リストランテ・ガルデニア(Ristorante Gardenia)」で研修生として働きながら、イタリア語の勉強に励みました。研修期間終了後もそのままリストランテで10年間勤め、現在はクールマイユールの「armadillo」で働いています。

ーイタリアのヴィーガン対応の状況はいかがですか?

2021年6月に日本へ帰国した際は、日本でもヴィーガン対応が浸透してきていると感じましたが、イタリアは昔から「肉」「魚」「ヴィーガン」のように”ヴィーガン”が1つのカテゴリーとして確立しています。ノンヴィーガンの人でも「今日はベジにしよう」と言ってヴィーガンメニューを注文する人も多いです。

ーベジタリアンチャンスに参加したきっかけや当時の様子について教えてください。

現在勤めているオーナーから声をかけてもらったのがきっかけです。総勢200名以上のエントリーがあり、書類選考と決勝戦を経て、優勝という映えある賞を頂きました。

ーご自身が考える評価されたポイントは何でしょうか?

「伝統料理」と「クリエティブ」という共通のテーマの中で、台湾、韓国、ベルギーなど各国のファイナリストが知恵を絞った料理を披露しましたが、私の料理は実はすごいシンプルでした。中でも一番評価されたポイントは「地産地消」にこだわった点ではないかと感じています。

(優勝作に対する当時の上田シェフのコメント)

この料理は、地元で生産された人参や根菜と私達のレストランにある畑から収穫したハーブから構成されています。シンプルにソテーで焼き上げた野菜たち、グルテンフリーのクランブルを土にみたて、森を表現しました。レバノン料理のレシピであるラブネをアーモンドミルクで作り、松の香りをつけたオリーブオイルをたらし添えました。森の野菜をディップして食べて頂く一皿です。(The Vegetarian Chance Japan 2020より)

ー日本のシェフとしての強みは?

「器用」「勤勉」な点は武器になると思います。例えばですが、魚のおろし方一つとっても日本とイタリアとでは、丁寧さがまるで違います。また、現地のシェフ仲間から「鰹節の削り器を購入したい」という相談を受けたこともあり、「発酵」や「出汁」に対する知識・経験がある点も大きなアドバンテージになると思います。

ー海外のシェフ仲間で日本の食材に興味を持っている方はいらっしゃいますか?

以前フォンドボー(仔牛のスジや骨から取っただし汁)をヴィーガン対応で作った時に、干し椎茸を使って出汁を取ったことがあります。イタリアの乾物にもポルチーニ茸などがありますが、日本程豊富な種類がなく、周りのシェフ仲間からも教えて欲しいと言われました。今回の一時帰国でも熊本で椎茸の発酵パウダーを作っている生産者の方と知り合いましたが、現地で披露するのが楽しみです。また、私の実家では代々ゆずのジャムを作っていますが、以前鯖料理にアレンジで使用した際は、同僚も興味を持っていましたね。

ー最後に上田シェフは今後のキャリアについてどのようにお考えでしょうか?

現在働いてるレストランのオーナーからはあと2年で引退し、その後は若いスタッフに任せたいという相談を頂いています。今後はお店の運営を引き継ぎ、イタリアでしっかりと足元を固めて、将来的には地元熊本にもお店を出したいと考えています。

ー本日はお忙しい中お時間を頂き、ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。