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こんにちは。

「プラントベースで日本と世界をつなぐ」をミッションに事業を展開しているプラントベースジャパン株式会社 代表の山﨑です。

観光庁の調査(2020年4月)によると2018年時点の世界のベジタリアン人口は6.3億人に達しており、同市場の年平均成長率は2020年から2027年の間で11.9%が見込まれ、7兆4200億円まで膨らむと予想されています (Research and Marketsより)。

今まさに世界のプラントベース市場は急成長を迎えています。

今回は世界のプラントベース業界のトップランナーの3名に「世界の動向」と「日本に対する提言」というテーマで語って頂きました。

Green Monday CEO David氏とのZoom取材

爆速で成長を続けるプラントベース市場

「過去30年を振り返ってみると、ここ5年間の変化が著しい」

HappyCow CEO Eric Brent

そう語るのは世界最大級のヴィーガンレストラン検索サービス「HappyCow」を運営するEric Brent氏。
HappyCow上のVegan venue(ヴィーガンレストラン、カフェ、ホテル等)の成長推移を見ると、2016年から右肩上がりで急成長を遂げています。コロナの影響も心配されましたが、2020年以降も順調に成長を続けていることがわかります。

データ作成日:2021年5月12日

「設立当初は”誰がヴィーガンビジネスマガジンなんて”と言われていた」

vegconomist CEO Peter Link

2018年に誕生したドイツ発のスタートアップ企業。vegconomistはドイツ語、英語に加え、フランス語、スペイン語、中国語の計5ヶ国語で世界のプラントベースマーケット情報を発信しています。

Peter氏曰く、設立当初は「誰がヴィーガンビジネスマガジンなんて?」という反応だったのに対し、2020年のコロナをきっかけに周囲の反応が様変わりしたと言う。

「コロナ禍に大手のプロダクトローンチが相次ぎ、記事広告の依頼も殺到している」

「今の香港は、どこに行ってもプラントベースオプションがある

Green Monday CEO David氏

「マックにスタバにセブン、どこに行ってもプラントベーションがある」と語るのは香港発のスタートアップ Green Monday CEOのDaivid Yeung氏。

曰く、2008年の香港のフレキシタリアン比率はわずか5%だったのに対し、2021年は40%まで成長。

David氏は取材に対して「欧米で始まったムーブメントだが、この流れは香港やシンガポールまで来ている。確実に日本にも来る。」と述べ、今後の日本市場の成長に期待を寄せます。(参考記事:2021年3月、「Green Monday、日本市場への本格参入を発表」)

著しい変化の裏側には〇〇と〇〇があった

HappyCow Eric氏によれば、過去5年の変化を語るには「Education」と「Solution」の普及が欠かせないとのこと。

YouTubeやNetflix上で畜産と環境・健康をテーマにしたドキュメンタリーが大ブレイク。

ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実

Cowspiracy:サステイナビリティ(持続可能性)の秘密

中でも「ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実」や「Cowspiracy:サステイナビリティ(持続可能性)の秘密」が世の中に与えた影響は大きく、瞬く間にプラントベースの認知が広まりました。

またEric氏はBeyond MeatやImpossible Meatといった代替食品ブランドの誕生も大きな要因だと話します。同社はバーガーキングやKFCをはじめとするグローバルブランドと提携し、プラントベースを一般的な選択肢として広く普及させました。

「ビヨンドが与えた影響は大きい。株式市場の上場を通じて、プラントベースのマーケット性を世の中に証明した。」

Green Monday David氏によると、「Education+Solution」の重要性はアジアにおいても同様とのこと。

同社は2012年にGreen MondayというNPO法人を設立し、「週に1回からのプラントベース生活」を提唱する取り組みからスタートしました。

芸能界から学校まで。精力的な啓蒙活動を続けた結果が「フレキシリアン40%な社会」を創っていったのかもしれません。

また取材を通じて、啓蒙(Education)に加え、選択肢(Soulution)を提供できたのが大きな成功要因だということが分かりました。同社が運営するプラントベースの飲食・小売複合業態「Green Common」や代替肉ブランド「OmniMeat」の誕生が香港のプラントベース市場の起爆剤になったことは間違いないでしょう。

プラントベース業界の最前線を走るトップランナーから日本へアドバイス

政府のサポートがあると良い

vegconomist Peter氏:

「観光庁やJETROがプラントベース市場の調査を進めているといった情報を耳にしたことがあるが、こういった政府によるサポートを強化していくと良いと思う。例えば、カナダでは政府が約1億ドルの投資をプラントベースファンドに実施したり、プラントベース事業を進める上での法的なコンサルテーション支援も提供している。」まだカナダのような動きをしている国は限られているので、日本も他の国が動く前に先手を打って動くべきだと思う。」

日本はもっとマーケティングのやり方を見直すべき

HappyCow Eric氏:

「顧客の80%以上はノンヴィーガンが占めるよう経営するのが理想だ。Veganとは敢えて言わない方がいいケースも多く、Veggie Grillというヴィーガンレストランチェーンでは、ヴィーガンという表現ではなく、プラントベースという表現を用いている。」

vegenomist Peter氏やGreen Monday David氏も同様の意見を寄せる。

ドイツのベジタリアン、ヴィーガンは10%まで増加しているものの、やはりそれでもまだ少数派。ちなみにドイツの場合、フレキシタリアンは40~50%と言われており、マーケティングをする上では、フレキシタリアンを意識することが何よりも重要だとPeter氏は話ります。

日本から世界にチャレンジする企業が増えて欲しい

ヴィーガン和牛ブランド ”Waygu”(Veg Newsより引用)

最後に日本のプラントベース業界に期待することを聞いてみた所、「日本から世界にチャレンジする企業が増えて欲しい」というメッセージを頂きました。

「TunaやSushi等、シーフードや和牛のイメージが強い。日本はもっとそのブランドを生かすべき。(vegconomist Peter氏)」

「日本と聞くと美味しいスナックを連想してしまう。例えば、アメリカでは海苔巻きせんべいが人気だが、プラントベース文脈でマーケティングをしている所は極めて少ない。他にも日本といえば抹茶のイメージも強く可能性を感じる。ちょうどさっきTrader Joeで抹茶オートミルクを買ってみたんだけど、なかなか美味しかったよ。(HappyCow Eric氏)」

取材のポイント

  • 「コロナ」がきっかけで世界のプラントベース市場は急成長を遂げている
  • 市場成長の背景にあったのは「Education(教育)」と「Solution(選択肢)」の普及
  • 日本に対するアドバイスは「政府のバックサポート」「マスを意識したマーケティング」「世界へのチャレンジ」

関連情報

◼️ Happy Cow
https://www.happycow.net/
創業年:1999年
本社 :アメリカ
事業 :ヴィーガンレストラン検索サービス

◼️ Vegconomist
https://vegconomist.com/
創業年:2018年
本社 :ドイツ
事業 :ヴィーガンビジネスマガジン

◼️ Green Monday
https://greenmonday.org/
創業年:2012年
本社 :香港
事業 :ヴィーガンプロダクトの開発、ヴィーガンビジネスへの投資、飲食店、小売店の経営 等