増えてきた「フードテック」の問い合わせ

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

最近様々なメディアでも「フードテック」という言葉を目にする機会がとても増えてきたと同時に、弊社フードダイバーシティ株式会社にもフードテック関連の問い合わせがとても増えてきました。そもそもフードテックとは、テクノロジーを駆使することによって、新しい食品や調理方法を開発することを指します。フードテックはこれから世界的に深刻化するであろう食糧問題を解決する方法としても、現在非常に注目を浴びています。

日本ではなんとなく「フードテック=代替肉」という構図になっているのを感じますが、一旦この分野における私の考えをまとめたいと思います。

日本のフードテックは遅れている?

ビヨンドミート、インポッシブルミートなどが世界での流通を伸ばしていることもあり、問い合わせの多くは「日本はフードテックが遅れているんですよね?」というものです。確かに日本発で世界に流通している代替肉はありませんので、ビヨンドミートやインポッシブルミートと比べたら遅れているという答えはある意味正しいのかもしれません。

しかし、日本には古来から精進料理なるものがあります。例えば「がんもどき」や「精進うなぎ」なる料理はもともと肉や魚を模して作っており、日本には古くからこのような料理文化が根付いていたことを忘れてはいけないと思います(但し、精進料理をそのまま出しても外国人の方には馴染みがないのでなかなか食べていただけません)。また、精進料理には世界が喜ぶ「歴史」や「ストーリー」がしっかりと詰まっています。

ここの価値を証明するのは世界一のヴィーガンレストランとして有名な自由が丘菜道さんです。菜道さんは「精進料理の技術×現代食アレンジ」が評価され、いわゆる「フードテックによる代替肉」を使わずに世界一の称号を獲得しました。(世界一の称号を獲得した後に、香港発のオムニミートを使用)。
※現代食=ラーメン、焼きそば、カツ丼など日本人が普段日常食として食べる料理と定義

菜道で提供されるカツ丼(大豆ミートは不使用)

日本でも最近大豆ミートなどの製造に取り組む会社が増えていますが、残念ながら大豆ミートなどには日本として誇る「歴史」や「ストーリー」がありません。果たして世界が日本に求めているフードテックは「日本発の大豆ミートなどの代替肉」なのでしょうか?私にはどうもそのようには思えません。菜道さんが世界一の評価を得たように、「精進料理の技術×現代食アレンジ」こそが、世界に求められている、且つ日本が世界と戦うべきフードテックの領域だと考えています。むしろ私は古くから精進料理が根付いた日本は「遅れている」どころか、この分野において世界を席巻できる最高の歴史的なアドバンテージがあると思えてならないのです。

日本は「大豆ミート」で戦うよりも、アドバンテージのあるフィールドがある

肉や魚の代わりに注目したいのは乾物野菜

日本のスーパーや道の駅には乾物野菜がたくさん売られているのは日常です。乾物野菜は日本ではどちらかというと生で売れなかったものの「売れ残り」であったり「保存食」というイメージがあるかもしれません。しかし、世界一のヴィーガンレストランの称号を獲得した菜道の楠本シェフは、様々な乾物野菜を料理に使用しており、講演でもその重要性を特にお話されています。楠本氏が乾物野菜を使う理由は下記3点です。

1,戻し汁を旨みとして使える
2,食感を作りやすい
3,食材の賞味期限が長いのでフードロスが出にくい

肉や魚を使わないヴィーガン対応について壁となるのは「旨みの出し方」と「食感の不足」ですが、楠本氏は「乾物野菜」が解決する部分は多いと話す。つまり日本にはかなり種類豊富な乾物野菜がありますので、これらを精進料理の技術も駆使しながら、肉や魚の代わりにしていくほうが「日本のフードテック」は世界に向けて価値が出せるのではないのでしょうか。もちろん乾物野菜だけでなく、古くから根付く発酵や出汁についても日本が世界と戦うべきフードテック領域だと思います。

肉の代わりに代替肉を使用する」という肉食文化が古くから根付く海外が作った流れに、肉を食べない時代から様々な技術を駆使して美味しいものを作ってきた日本が、同じ土俵で戦う必要はないはないと私は考えています。

菜道の楠本氏がよく使用する乾物椎茸の粗ぶし

道の駅に並ぶ乾物野菜

まとめ

私がお伝えしたいのは下記3点です。
・日本のフードテックはビヨンドミートやインポッシブルミート等に比べると「遅れている」
・世界一の評価を獲得した菜道は「精進料理の技術×現代食アレンジ」が評価をされた(フードテックによる代替肉は不使用)
・日本には古来から「精進料理」「乾物野菜」「発酵技術」などがあり、ここを武器として世界のフードテック市場で戦うべき

以上、長文乱文となりましたが、フードテックに参入を考えている企業様、取材をされている企業様にとって有益な情報になっていれば幸いです。