現役大学生の挑戦

はじめまして。フードダイバーシティ株式会社でインターンをさせていただいております。井上果南です。
私がインターンとして活動を行った「プラントベースメニューの開発」について紹介させていただきたく本記事を執筆しております。本取り組みは実際のカフェとして、2022年9月1日(木)から2023年12月3日(土)まで営業を行いました。

カフェ創業者(向かって左が井上果南さん)

プラントベースメニューのあるカフェを始めたきっかけ

このプラントベースメニューのプロジェクトでは、プラントベースフードを使い、食に禁忌を持った人たちでも、持たない人でも、みんなでカフェを楽しんでほしいという思いがありました。

まず、私がなぜプラントベースフードにこだわるのかというと、フードダイバーシティ株式会社横山さんが授業を受け持っており、その時にプラントベースフードの存在を知りました。ヴィーガンだと表現が強く、野菜のみ、動物性はだめ、というように極端になってしまいますが、プラントベースだと、表現が柔らかくなり、たくさんの人が楽しめるヘルシーなフードという認識になるという発想がとても素晴らしく、ぜひプラントベースフードを広めて、たくさんの人が多様な食習慣に対する理解を広めるきっかけとなったり、環境や自分の健康状態を考える小さなきっかけとなったりして欲しいという思いがありました。

そして、私は普段カフェ巡りが好きでよくカフェに行くのですが、どこのカフェもプラントベースメニューはあまり見かけないので、私たちのような大学生がプラントベースに興味を持ち、メニューを開発することで、どこかで私たちの活動が目にとまり、他のカフェ経営者の方にももっとプラントベースメニューを取り入れてもらえるきっかけになればいいと思いました。また、私たちと同世代の方々にもプラントベースメニューを知ってもらい、もっと広まってほしいという思いもありました。

また、私が多様な食習慣へ興味を持ったきっかけとしては、実家の従業員がムスリムの方で、食に対する話を聞いていると、日本でもっと食に対する選択肢が広がって欲しいという思いが強くなり、私自身がその幅を広げる活動を行ってみたいと思うようになりました。

トマトケーキ作成

一見、トマトを使ったスイーツって美味しいの?と思われがちですし、せっかくカフェを出すのになぜトマト?と思う方が多いかもしれません。私がトマトケーキを開発しようと考えた理由として、大きなポイントは実家のトマトを救いたい!という思いでした。私の実家は農家を営んでいるのですが、おいしいトマトが形が悪かったり、時期的に売れないものだったり市場に売り出されずにおいしいトマトが廃棄されてしまうことがあり、いつももったいないと思っていました。また、農家は冬は仕事がなく、母が冬は販売をしてみたいと言っていたので、ぜひ私たち姉妹で働ける場所や、みんながゆったりできる居場所をつくっていきたいと考えました。

さらにもう一つの理由としては、顔の見える交流を作っていきたいと思ったからです。私にはケーキ屋さんで働いている仲のいい友達がいて、作っても食べた感想や直接的に顔が見られず、労働時間は長いのにモチベーションが低いということを言っていました。こんなにおいしいお菓子をつくるのに、もったいない。という考えがあり、その子と共同開発をして、再びお菓子作りが好きな気持ちや、その場で提供し、食べてもらい、顔の見える交流をしてもらいたいと思ったからです。

私がカフェを開きたいという思いは、高校生の頃からあり、カフェという存在は自分にとって居場所であり、ゆったりとした雰囲気や、たくさんの人がリラックスした、そのようなあたたかい場所を作り上げてみたいという考えがありました。そこで、トマトケーキを販売し、実際にその場で食べてもらい、会話が生まれ、提供する側も、される側も、幸せな感情を感じて欲しいと思いました。

レシピ構築に苦労

レシピ構築に苦労

商品開発について

まず、商品開発の点では、ケーキ屋さんで働いている友達と協力し、何回も試作を重ねました。まずは、トマトをスイーツにするということで、どのようにしたらトマトの甘味と旨味を引き出せるだろうと模索した結果、トマトの川や種をとって煮詰め、トマトペーストにしたのちにケーキに混ぜることで、いちごのように甘く美味しく変化することがわかり、このようにペースト状にすることが一番美味しくスイーツに馴染むことがわかりました。

さて、そこでさらにその旨味を引き出せるスイーツは何か、ということを考え、試作の前にたくさんの情報収集をしたり、ケーキ屋さんで働いている友達とミーティングを重ねたりしました。そして、甘味の多いトマトペーストの美味しさを上手に引き出し、多彩なアレンジを可能にさせるパウンドケーキを基盤としてトマトケーキの開発をしていくことを決定しました。

しかし、ここからが失敗や苦悩の毎日でした。トマトケーキにどの材料ならもっと美味しくなるのか、理想的な食感にするにはどうすれば良いのか、材料を減らしたり、増やしたり、時には違う食材を作ってみたり、本当に諦めたくなる日々でした。特に、プラントベースで作るとなると、通常のケーキよりも材料費がかさんだり、食感や味が理想的な物にならなかったり、挫けそうになることが多かったです。

最終的に、作っている段階でケーキにできる野菜がたくさんあると知り、野菜をたくさん使ったアソートケーキセットとして売り出したいと思いました。野菜の旨味を生かし、見た目も可愛く、味も美味しいケーキとなりました。

そして、カフェオープン2週間前あたりから毎日味のアップグレードを重ねるために試作を毎日していました。しかし、ビーツチョコケーキとキャロットケーキがだんだんと失敗するようになり、生地の質感や見た目、味にばらつきが出てしまい、プラントベースという形で出すのは難しい、こんな出来ではお客様に出せない。という考えに至ってしまいました。その1週間はまた1からレシピを考えたり、試作やアレンジを重ねて、なんとか美味しいプラントベースケーキを提供しようとしました。最終的には、納得できるレシピに行き着いたのですが、メインで試作を重ねていた姉は、どうしても納得できないのに加え、当日は使ったことのないメーカーのオーブンを使ったり、材料の買い出しや持ち込みまで2時間の間に2人で進めたりしなければいけないことなどを考慮すると、無理してその二つをプラントベースで提供するのではなく、他のメニューの完成度を上げることを優先し、トマトケーキとバナナケーキを限定品とし、プラントベースとして売り出そう、という結論になりました。

結果的にSNS映えできるような見た目と納得できる味まで持っていけたのは、数ヶ月間にわたる試作のおかげだと思います。

プラントベースメニュー

カフェとしての完成度について

今回の経験で苦労したことは集客についてです。お客さんが来ないと赤字になってしまうため、上京して姉と二人暮らしの大学生にとっては金銭的な問題がきつく、たくさんの人を集めなければなりませんでした。1ヶ月前にインスタグラムのアカウントを作り、プロモーションを始めたのですが、なかなかフォロワーが増えないことや、予約注文の数が全く集まらず、やっとカフェを始めるという夢が叶ったとしても、ただやるだけでは意味がないと思いました。

私はwebマーケティングをしたことがなく、初めての試みでしたが、自分なりに有名な人たちはどのようなプロモーションの仕方をしているのか研究しながらインスタグラムの運営をしました。

結果的にいうと、最初は全く予約数がなかったものの、当日には予想を上回る数のお客様がいらっしゃいました。集客が望めた理由として、さまざまな方法を取りました。カフェが好きそうな人たちに直接DMにてメッセージを送ったり姉が所属する少人数クラスで発表したり、たくさんの友達に試作品を提供し、その時にプロモーションを行ったり、オンライン上のマーケティングと並行して、対面によるプロモーションもたくさん行いました。たくさんの方が集まってくださり、当日は常時お店が満席になるほど集客することができました。

当日の様子

当日の様子としては、集客目標30人だったのに対して、予約席数は37と、予想を上回る予約数となりました。お客様の声としては、「野菜×スイーツという変わったテーマのカフェだったが、美味しく食べることができた」「野菜は嫌いだがこれは食べられた」「たくさんの人と交流できて楽しかった」という声をたくさんいただくことができました。
また、今回のカフェの目的の2つは、プラントベースを広めることと、顔の見える交流をする、ということが目的でした。顔の見える交流をするということに関しては、完全に達成きたと思っています。お客さんの入退室時にただ挨拶をするだけではなく、他愛のない話をしたり、近況を聞いたり、会話を生むことで暖かい交流を作り出し、最後にはフードやドリンクの感想をじっくりと聞くことができました。また、たくさんの会話が生まれ、アットホームな雰囲気を作ることでお客様とお客様同士の交流も生まれ、たくさんの人が楽しんでいただけたのではないかと感じました。
二つ目のプラントベースを広めることという点は、あまり達成することはできませんでした。その理由として、本当にプラントベースを必要とするお客様が来店できなかったということと、プラントベースの魅力を伝える手段が少なかったということです。まず、プラントベースで楽しみたいというお客様が来なかったので、私自身でもプラントベースが最大の魅力という点を引き出すことができなかったと感じました。そして、知らない人にも広めたかったのですが、伝える手段が口頭だけだったので、知ったとところで聞き流してしまう情報だったので、もっと魅力を伝える手段を増やしておくべきだと思いました。

わたしのめざす食の形について

今回のカフェでは、プラントベースを必要とする方々の集客と、プラントベースフードをもっと知ってもらうためにインスタグラムでの広報活動により力を入れることや、プラントベースを説明するチラシなども、次回のカフェ開催で用意できたらいいと思いました。
次回オープンに向けて、カフェの質をあげるのはもちろん、ムスリムの友人作りやもっとプラントベースについて勉強・研究を行っていきたいと思いました。今回プラントベースで進めていきたいと思った理由として、美味しいものをみんなで囲んで食べたい、という信念がありました。少しでも食に対して禁忌を持った方達が不自由なく日本で楽しく暮らせるように、少しずつ日本人コミュニティの中の認知度もあげていくことができたら、少しでも多くの方が食に困ることが少なくなり、楽しめる食事の幅が広がればいいと感じています。

今後の私の活動としては、期間限定間借りカフェの定期開催化に向けてもっと基盤を整えることや、ムスリムの方との友達づくり、やインスタグラムの広報活動などに力を入れていきたいと思います。今回のカフェではとても良い雰囲気を作り出せた要因として、顔の見える交流、たくさんの人をつないで楽しく会話することの楽しさをたくさんの人に感じてもらえたことだと思います。お客様の声として、「雰囲気がよかった」「新しい人と出会うことができて、楽しかった」など、今回のカフェを通してたくさんの人を繋げることができて、私自身もたくさんの人のお話を聞いたり、感想を聞いたりできて、非常に良い経験となりました。今後のそのような温かい交流という姿勢は崩さずに、もっと質を高く、規模を大きくしていきたいと思います。次回開催はまだ未定ですが、もっとレベルアップしてまた開催したいと思っています。ぜひインスタグラムをチェックしてみてくださると嬉しいです。本記事を最後まで読んでくださりありがとうございました。そして、アドバイスを下さったフードダイバーシティ株式会社の皆様、トマトを提供してくれたお父さん、お母さん、ご来場してくださった皆様、そして今読んでくださっている皆様に感謝申し上げます。次回はカフェでお会いできたら非常に嬉しいです。