MICEの目的とゴールは?
食の多様化を支援するフードダイバーシティ株式会社の守護です。
昨今、MICE等に関してさまざまな事業者様よりお問い合わせをいただく中で、弊社では最初に以下の質問をさせて頂いております。
「分断」での対応ですか?それとも「ダイバーシティ」での対応ですか?
その違いとは?
「分断」と「ダイバーシティ」は、どちらも異なる価値観や文化が共存する状況に対して使われる言葉ですが、そのアプローチには大きな違いがあると考えており、MICEの目的やゴール設定の際にしっかりと考えるべき点です。
分断
(例)ヴィーガンの人にはヴィーガン専用食を提供する
「分断」とは、異なる価値観や文化を持つ人々を隔離し、それぞれに専用の空間やサービスを提供することを指します。食で言うなら、ヴィーガンやムスリムの方々に対してそれぞれ専用の食事を用意することがそれにあたります。
「分断」は特定のニーズに焦点を当てるため、その特定のニーズを持った人々に対しては安心感を提供しますが、同時に多様な背景を持つ人々が同じ食卓や空間を共有する際には、それぞれに距離感が発生してしまいます。
極端な事例ですが、例えばフランスで開かれたMICEに日本人が参加して、日本人にだけ日本食が提供されたとします。日本食が恋しかったから嬉しいと感じる人もいるでしょうが、会場内で日本人だけ浮いてしまう可能性が大きく、交流の機会も減ってしまう恐れがあるのではないでしょうか。
ダイバーシティ
(例)ヴィーガンの人も一緒にテーブルを囲むために共通点を理解して数品を配慮する
「ダイバーシティ」とは、異なる価値観や文化を持つ人々が共に過ごし、理解し合えるような環境を作ることを指します。食で言うなら、ヴィーガンやムスリムの方々と同じ食卓で食事を楽しめるように、共通点を理解し、全ての料理ではないにしても配慮したメニューを数品用意することがそれにあたります。
「ダイバーシティ」の理念は、共通の場を通じて異文化理解を促進し、相互の違いを受け入れ合う社会を築くことにあり、昨今の世界的なMICEなどでは「ダイバーシティ」での対応が主流となっています。日本で昔からいう「同じ釜の飯を食べる」はまさにダイバーシティだと考えています。
ただし、「ダイバーシティ」の対応は一夜漬けでは決してできない取り組みで、筋トレやダイエットと同様に日々の努力を積み重ねて取り組んでいくしか道はありません。
結論として
「分断」は特定のニーズに対応するために分離して対応するアプローチであり、「ダイバーシティ」はその違いを尊重しながら共に過ごす方法を模索するアプローチです。どちらが正しいという話をしたい訳ではなく、「そのMICEはどのような目的があるのか」がとても重要だと考えております。
ちなみに弊社フードダイバーシティ株式会社は、会社名にもあるよう「ダイバーシティ」での食の対応を日本国内で推進致しております。
著者
守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師
1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。
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