今こそ考えたいお客様の本当のニーズについて

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

弊社では年間100本以上のペースで全国各地で講演や勉強会を行なっており、ありがたいことに本当に多くの飲食店、宿泊施設様とご縁を頂いております。ただし、その中で実際にフードダイバーシティの取り組みを始めた場合でも、成果を出す企業様とそうでない企業様に分かれます。

一体何が境目となるのか。これにはさまざまな要素があるので一概には言えませんが、基本的には「お客様がお金を出して食べたいものではない」というのが一番大きな要素だと考えております。

例えば、日本でよく誤解となるのは「ベジタリアン=サラダを食べる人」という点です。もちろんベジタリアンの方にとってサラダは「食べられるもの(Can Eat)」であることに間違いはないのですが、飲食店で自分でお金を払って「食べたいもの(Want to Eat)」かといったらそうではないケースが大半です。※ニューヨークのベジタリアン事情はこちら

先日、長崎県で講演した時に「観光ガイドブックにドーンと載っている長崎ちゃんぽんやカステラのベジタリアンバージョンがお客様に求めらています」という話をしたところ、Googleで「長崎  ベジタリアン」で検索するとカフェ系が多く出てくるので「ベジタリアンはそういったものを求めている人だと思っていました」という声を頂きました。

弊社の講演ではこの部分を必ずご説明するのですが、実際に料理をされる方が参加されていないとその辺りの情報が伝わらないケースが多々あります。今回は改めて「Can Eat」と「Want to Eat」についてまとめたいと思います。

「Can Eat」と「Want to Eat」の違いについて

フードダイバーシティに関するお客様の声

早見表

ムスリム・ベジタリアン・ヴィーガンには精進料理で対応しています

まず、よく旅館にあるのですが「ムスリム・ベジタリアン・ヴィーガンのオーダーは基本的に精進料理を提供しています」というケース。しかし実際には「せっかく特別対応で作ったのに、ほとんど手をつけられずに残された」ということが全国各地で起きており、弊社にご相談を頂く機会がとても多いです。これはもちろん作った側だけではなく、食べる側もあまり気分のいい話ではありませんが、基本的に精進料理は「Can Eat」に分類されるケースがとても多いです。
※もちろん精進料理を「Want to Eat」に分類する外国人もいます。

そもそもですが現代の日本人にとって、精進料理を食べる機会というのはほとんどありませんし、「好きな食べ物は精進料理です」という方はとても少ないと思います。それを海外の人が喜んで食べるかと言ったら決してそうではなく、豆腐や野菜が中心のため「食べられないものが含まれてないだけ」という認識です。海外の方が日本に期待する食事は、ラーメン、カツ丼、天ぷらなど、我々日本人が普段食べているものだったりするケースがほとんどです。また、高級コースだと寿司・鉄板焼きなどが求められており、ムスリム・ベジタリアン・ヴィーガンだからといって行きたいレストランや食べたいメニューが大きく変わるわけではなく、メニューの仕様(食材や調理方法)を若干変えて欲しいというだけです。

例えば逆で考えるととても分かりやすいのですが、日本人がイタリアに行ったときには「是非とも本場のパスタやピザが食べたい」というケースが多いと思います。現代のイタリア人もほとんど食べていない、日本人にとってあまり馴染みのないイタリアの伝統料理を食べたいというケースは稀ではないでしょうか。

世界一のヴィーガンレストラン菜道で提供されるメニュー(左上:鰻重 右上:カツ丼 左下:ラーメン 右下:焼き鳥)

ベジタリアンにはカフェ系、ムスリムには基本インドカレー屋(エスニック系)をご案内しています

こちらは旅行会社やホテルのコンシェルジュなどによくあるのですが、お客様からの要望に対して「ベジタリアンにはカフェ系、ムスリムには基本インドカレー屋をご案内しています」というケース。こちらはまさにGoogle検索で「Vegetarian Restaurant」や「Halal Restaurant」と入れると出てくる情報を案内しているわけなのですが、これらも基本的には「Can Eat」に分類されます。
※もちろん、日本在住のムスリムやベジタリアンの方は日常食として普通に食べています。

まず、これらは海外のムスリムやベジタリアンの方にとっては母国で普通に食べているものだったりしますので、わざわざ日本で食べたいものというわけではありません。ここでも逆の立場で考えると分かりやすいのですが、イタリアの観光案内所でおすすめレストランを訪ねて日本食レストランを紹介されるような感じです。もちろん安心さを求めてそれを食べたいときもあるでしょうが、旅行の思い出作りとしてはイマイチではないでしょうか。※ただし、インドのベジタリアンはインド料理レストランを求めるケースは多いです

また「ベジはカフェ系が多いけど、しっかりとしたレストランで食べたい」という問い合わせは弊社にも非常に多くきますが、やはり「Want to Eat」なお店を探すことにとても苦労している様子です。

まとめ

下記3点に今回の話をまとめます。

・「Can Eat」と「Want to Eat」をしっかりと整理し、お客様のニーズを適切に捉える
・「ガイドブックで大々的に紹介されているもの」のハラールバージョンやヴィーガンバージョンが求められている
・ムスリム・ベジタリアン・ヴィーガンだからといって行きたいレストランや食べたいメニューが大きく変わるわけではない

以上、フードダイバーシティに取り組んでいる、これから取り組もうとする企業様にとって、本記事が有益な情報となれば幸いです。