小売店が売り方をデザイン

2020年3月に発売開始となった江崎グリコ・植物生まれのプッチンプリン、1年半経った今もありとあらゆる小売店で販売が継続されています。日経クロストレンドの記事内でも、本商品は2020年の販売計画を190%で達成し、「どこに売っているのか」という取扱店舗に関する問い合わせも他商品よりかなり多いとのことです。

かたや「ヴィーガン」や「大豆ミート」等を全面に打ち出した商品がどんどん棚落ちしている昨今、今回は各小売店の売り方に注目したいと思います。
※参考:「え?その商品ベジなの?」ベジ・ヴィーガン戦略のポイントは ”ネーミング”

ファミリーマートでは無表記

ファミリーマート

ファミリーマートでは特にPOPなどもなく、普通に置かれています。コンビニはお客様の層が幅広いので、基本的に商品は特定の色を出さないような売り方がされています。

個人的には「甘いものが食べたいけど、少し罪悪感を減らしたい」「なんとなく体に優しそう」と考えるお客様に響いているのではないかと考えています。

イオンでは卵と乳不使用を表記

イオン

イオンでは「卵と乳不使用」がPOPで表記されています。イオンでは当然ファミリー層が多くなりますが、「食物アレルギーを持つ家族がいる家庭は約2割」という背景もあり、このように「卵と乳不使用」をしっかりと謳って売られています。実際、食物アレルギーの約6割は卵と乳のため、非常に効果的な訴求方法だと思います。

NATIONAL AZABUではVeganと表記

NATIONAL AZABU

NATIONAL AZABUは南麻布、田園調布、広尾にあるインターナショナルな商品を多数扱うスーパーマーケット。客層は日本在住の外国人や、オーガニック等の食に関してアンテナを高く張っている日本人です。そこでは「VEGAN PUDDING」という表記がされていますが、外国人や食にアンテナを高く張っている日本人にとってVeganは見慣れた表記であることと、そして実際にVeganの食生活を実践する人は多くいるので、その方々にしっかりと伝わる売り方だと思います。

小売店の武器である「売り方」が発揮できるのは?

商品の売り場を提供する小売店は、お客様の顔を毎日見ていたり、より詳細な購買データを持っているので、お客様に響く売り方を誰よりもよく知っています。

例えば「植物生まれのプッチンプリン」で「Vegan」などのPOPを大きくファミリーマートで打ち出したらどうでしょうか。幅広い層のお客様を持つコンビニにとって「Vegan」という言葉が購買につながるお客様はどれくらいいるでしょうか。私はあまり多いとは思えません。

また、NATIONAL AZABUのようなスーパーで、無表記で普通のプッチンプリンと並べておいたらどうでしょうか。外国人や食にアンテナを高く張っている日本人にとって「この二つ、何が違うの?」となるのではないでしょうか。

このように、同じ商品でも売り方はとても大事な要素であると言えます。

そして、なぜ「ヴィーガン」や「大豆ミート」を全面に打ち出した商品が一般スーパーなどで棚落ちしやすいのか。それは小売店が最も得意とする「売り方」の部分を発揮できないからではないでしょうか。「ヴィーガン」や「大豆ミート」が全面に出ている商品は、売り方がかなり限定されてしまい、小売店のバイヤーは「客層と合うかどうか」のみを判断し、例え販売開始しても合ってなければ販売は終了になります。

一方で「植物生まれのプッチンプリン」だと、小売店がそれぞれの客層に合った売り方がデザインできます。もちろん売り方を限定した商品は、お客様が固定している「専門店」には強いので、何が正しいということは決してありませんが、一つの考え方として今後とても重要になってくると考えています。