世界で拡大するMICE市場に日本がどう取り組むか

MICE(ミーティング、インセンティブ、コンベンション、エキシビション)産業において、食の多様性への対応は日本の国際競争力を左右する重要な要素です。特にビジネス目的で集まる参加者に対しては、食事が単なる空腹を満たすための場ではなく、国や地域の文化を体験する貴重な機会として位置づけられているからです。

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しかし、日本においては、ハラールやヴィーガン対応の食事提供が依然として不足しており、これが世界からのMICE誘致における大きな課題となっています。ガラディナーや懇親会など、食事を中心にしたイベントが多いMICEでは、この対応の不備が参加者の満足度に直結することが多く、国際基準に沿った改善が急務です。

この問題は、単に国際的な食のトレンドを追うだけでなく、地方分散にも関連しています。MICE誘致は、地方都市の経済活性化に大きな影響を与える一方で、地方でのMICE開催には特有の課題もあります。アクセスやインフラの不足はしばしば指摘されますが、実は地方の食文化こそが強力な武器となり得ます。

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地元の特産品を用いた料理や、その地域に伝わる伝統的な調理法を取り入れることで、参加者にユニークな体験を提供できるのです。例えば、地元の食材を使った特別メニューは、地域の文化を深く体感してもらうための有効な手段です。これにより、参加者は単なるビジネスの場ではなく、地域との結びつきを感じることができ、次回以降のリピート参加にもつながります。

MICE市場の急成長に伴い、サステナビリティの観点も無視できません。COVID-19後、持続可能な運営が国際的に重要視されるようになり、食事面でも環境に配慮した取り組みが求められています。地元食材の活用やフードロス削減といった施策は、国際的なイベント参加者から高く評価される要素です。

特に日本では、「もったいない」の精神が食文化に根付いており、これをサステナブルな形で提供することで、世界に対して強いメッセージを発信することができます。植物性食材を用いたメニューや食材リサイクルの取り組みは、MICEイベントにおいてサステナブルな食事提供のモデルケースとなり得るでしょう。

このように、MICEイベントの成功には、多様な食のニーズに応えることが不可欠です。食の多様性に配慮することは、参加者の満足度を高め、さらには地方経済の活性化にもつながります。サステナビリティの視点からも、地元資源を活用した食事提供は、今後のMICE誘致における強力な武器となるでしょう。MICE市場は今後も拡大を続けており、日本がその成長の波に乗るためには、食文化の多様性と持続可能性に対応したアプローチが欠かせません。

(文責:フードダイバーシティ株式会社・横山)

著者

横山 真也
フードダイバーシティ株式会社 共同創業者
キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者
ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
日本と海外での複数の起業が評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)
NNA ASIA経済ニュースコラムニスト
著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部および東洋大学国際学部 非常勤講師