海外の方が求める「高級食」とは?

訪日外国人客の消費単価を上げようという動きが活発化しています。
高級食と言うと、多くの人がコース料理、地方の高級食材、有名なシェフによる料理をイメージするかもしれません。
もちろん、それらは高級食の代表的な要素ですが、全ての店舗でそれを実現することは現実的ではありません。高級食が高級である理由の一つは、ニーズに対して供給が少ないからです。そのため、まずはニーズを確認することが先決です。

訪日外国人が日本で食べたいもののランキングを見てみると、読者の方にはおなじみの比較的カジュアルな食べ物が並んでいます。
例えば、寿司やラーメン、天ぷら、お好み焼きなどです。これらの食べ物は、日本の文化や風味を手軽に楽しめるため、多くの観光客に人気です。
しかし、これらは単価が安いため高級食になり得ないと思うかもしれません。
では、どのようにしてこれらのカジュアルな食べ物の消費単価を上げることができるのでしょうか?

その答えは「付加価値」にあります。付加価値をつけることで、同じ食べ物でもその価値を大幅に高めることができます。
具体的には、以下のような要素が考えられます。

まず、味の向上です。使用する食材の質を上げたり、独自の調理法を用いることで、他店とは一線を画す味を提供できます。たとえば、特別な醤油を使ったラーメンや、季節の新鮮なネタを使用した寿司などです。

次に環境です。食事をする場所の雰囲気やサービスの質は、消費者の満足度を大きく左右します。伝統的な和風の内装や、落ち着いた照明、丁寧な接客などがその例です。特別な環境での食事は、食べ物そのものの価値を高めることができます。

また、数量も重要です。希少な食材や特別なメニューを限定的に提供することで、希少性を演出し、価格を上げることができます。たとえば、一日限定10食の高級天ぷら定食などです。

ネーミングやイメージも消費単価を上げる要因となります。魅力的で覚えやすい名前を付けたり、ストーリー性を持たせたメニューを提供することで、顧客の興味を引きます。例えば、地元の伝説や歴史にちなんだ名前を付けると、食事が単なる食べ物以上の価値を持ちます。

さらに、フードダイバーシティ対応も重要な付加価値の一つです。ハラール対応メニューやベジタリアンメニューを提供することで、多様な顧客層に対応できます。これは特に訪日外国人客にとって大きな魅力となります。

最後に、コース料理を提供することだけが高級食の条件ではありません。重要なのは、顧客に対して価値を提供し、その価値を認識してもらうことです。たとえば、高級な食材を使わなくても、その料理が持つストーリーや背景、調理法、提供の仕方などで高い価値を感じてもらうことができます。

訪日外国人の消費単価を上げるためには、料理そのものの質を高めることはもちろん、付加価値をどれだけつけられるかが鍵となります。味、環境、数量、ネーミング、イメージ、そしてフードダイバーシティ対応など、多角的なアプローチを通じて、カジュアルな食べ物でも高級食として提供することが可能です。これらの工夫を凝らし、顧客にとって特別な体験を提供することで、日本の飲食業界はさらに魅力的なものとなり、訪日外国人の消費単価も自然と上がるでしょう。

(フードダイバーシティ株式会社・横山)

著者

横山 真也
フードダイバーシティ株式会社 共同創業者
キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者
ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
日本と海外での複数の起業が評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)
NNA ASIA経済ニュースコラムニスト
著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部および東洋大学国際学部 非常勤講師