事前準備がもたらす地域間の差異とは

食の多様化を支援するフードダイバーシティ株式会社の横山です。

新年度が始まって1ヶ月余りとなりました。今年度は特にインクルーシブツーリズムに関するご相談が増えています。

全国各地からの問い合わせは、食の多様性対応を既に進めている地域と、これから取り組みを始める地域からとでは、内容が異なります。

前者のグループは、来訪者をいかに増やすかについて具体的な戦略や戦術に焦点を当てていますが、後者は基本的な知識習得を求めています。つまり、フェーズが全く異なっているということです。

この動きは、コロナ禍にあった期間の準備が大きな要因になっています。コロナ禍でも準備を粛々と進めていたエリアとそうでないエリアでは、今となっては訪日客を迎え入れる体制において顕著な差が見られます。

食の多様性を含めたサービスの提供が充実している地域では、訪日客の満足度が高く、口コミでリピート訪問につながっている傾向が見られます。これを理解している事業者は、検索効果が上がることを見越して、来訪者に母国語での口コミ投稿を推奨しています。

一方で、準備が整っていない地域では、訪日客からのフィードバックは必ずしも肯定的ではない場合があります。言葉のバリアはテクノロジーで低減されつつありますが、「できない、わからない」はその地域の評判に影響を及ぼしているケースも見られます。これはインクルーシブではありませんし、そうした口コミも瞬時に広まってしまいます。

私たちは以前から「来てから考える」のではなく、事前にしっかりと計画を立て、多様なニーズに対応する準備を整えるべきだと主張してきました。特に、何をやるべきかの前に、何をやってはいけないのかを理解することが重要だと述べてきました。

今、その重要性が現実のものとなっています。食の多様性に積極的に対応している地域は、ハラール対応やベジタリアン対応の食事オプションを提供することで、さまざまなバックグラウンドを持つ訪日客を引き寄せています。

今後も、私たちは各地域が持続可能な観光産業を築くために、具体的な支援と情報提供を続けていく所存です。

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著者

横山 真也
フードダイバーシティ株式会社 共同創業者
キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者
ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
日本と海外での複数の起業が評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)
NNA ASIA経済ニュースコラムニスト
著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部および東洋大学国際学部 非常勤講師