失敗事例が相次ぐベジタリアン・ヴィーガン商品の未来は?

こんにちは。食の多様化対応を支援しております、フードダイバーシティ株式会社の守護です。

ハラール事業から事業領域を徐々に広げてきた当社ですが、最近毎日のように入ってくるベジタリアン・ヴィーガン関連のニュースを見聞きする度に、2014年頃ハラール関係が盛り上がっていたことを思い出します。今回はハラール業界が辿ってきた道を振り返りながら、ベジタリアン・ヴィーガン業界の未来を予測していきたいと思います。

※下記図はハイプカーブと言い、新しい産業や商品における成熟度・採用度・社会への適用度を「黎明期」「流行期」「幻滅期」「回復期」「安定期」に分けて表す曲線です。

ハイプカーブ

既に安定期に入ったハラール業界のこれまでの軌跡

専門機関とプレイヤーがそれぞれの時期にどう動くか

ハラールの黎明期と言われる頃からハラール事業を展開してきた当社ですが、認証機関でも、何かの協会でもありません。しかし、所謂「幻滅期」と言われる頃から、ハラール商品を製造・販売する所謂”プレイヤー”である企業様から当社にお問い合わせが来るようになりました。

そのお問い合わせの多くが

「ハラール対応したのにお客様が来ません」
「ハラール認証取ったんですが商品が売れないんです」
「御社のサイトに掲載すると売れると聞きました」

といったものです。当社では毎回のことですが、

「ハラール認証は水戸黄門の印籠ではないですよ」
「その売り方はお客様の心に刺さりにくいですよ」
「弊社のサイトに載せても、そもそもニーズがないものは売れないですよ」

とお伝えし、この時点で多くの企業様が明確に「流行期」から「幻滅期」に移られます。

※上記のような問い合わせをハラールの専門機関にしても「今は投資の時期です」という回答しかされないそうです
※上記のようなお問い合わせをいただくことが増えてきたため、当社が講演業大学(オンラインスクール)を始めるに至りました

【参考記事】
ハラール○○を見直しませんか?
ハラール対応現場でよく起きる3つの失敗事例
【自治体・行政・公共機関向け】ハラール・ムスリム”単体”での取り組みをお勧めしない理由
「Exclusive Halal」か「Inclusive Halal」か?ビジネスとしての持続可能性について

冷静になった企業様が「回復期」に行うこと

「幻滅期」を脱し、事業の真の目的を理解した企業様には以下のような取り組みを行うことを当社として推奨しております。

・「ハラール●●」という商品名や、ハラールに特化したPRを辞めて、一般消費者「にも」売れる商品を設計する
・情報発信は特定の媒体のみで行う(一般消費者が見る媒体でPRはしない)
・そもそも売ろうとしている商品自体にニーズがあるのかを考える(ハラール水、ハラール米、ハラール醤油系はここで多くが撤退)
・専門機関とは距離を置いて、これまでの成功事例から逆算してマーケティング施策を考える

「幻滅期」にハラール事業から撤退する企業様も多くいましたが、上記の取り組みを「回復期」に行った企業様の多くが着実に結果を出し続けています。

雨後の筍のように増えたハラール認証機関や協会系は今?

ハラール業界が安定期に入ったとされる2018年頃には、ハラール認証機関や協会の活動に関する情報は殆ど入ってこなくなりました。それらは事業そのものからから撤退したり、社員を全員解雇して代表者一名だけで活動していたりなど、状況は様々のようです。ハラール事業に関わる企業様と話しても、「今も認証機関や協会と積極的に関わっています」というお声は殆ど聞かなくなりました。

残った負の遺産

安定期を迎え、ハラール事業で着実に結果を出す企業様がいる一方、上記の「幻滅期」によってハラール業界に以下のような負の遺産が生まれたこともまた事実です。

・ハラール業界への参入に対する高いハードル(があるというイメージ)
・事業から撤退した企業様によるハラール業界への悪評
・認証機関や協会による熾烈な派閥争いにより国もハラールへの積極的関与を控えるように

ベジタリアン・ヴィーガン業界の今は?

ここまでは全く同じ兆候

ハラール業界で起きた現象と同様、認証機関や協会ではない当社に以下のようなお問い合わせが来るのはまたも「幻滅期」からです。

「ベジタリアン・ヴィーガン対応したのにお客様が来ません」
「ヴィーガン認証取ったんですが商品が売れないんです」
「御社のサイトに掲載すると売れると聞きました」

実際に上記のようなお問い合わせが2020年上半期から急激に増えてきており、ベジタリアン・ヴィーガン業界が当時のハラール業界と同じ状況にあると感じざるをえません。

撤退や、売り場縮小は続く

私は様々な小売店を長らく定点観測していますが、ベジタリアン・ヴィーガン系の商品はすぐに棚落ちしてしまうケースは珍しくありません。その理由は当然「売れないから」です。ここから見えてくるのは、小売店は「ベジタリアン・ヴィーガン商品」が欲しいのではなく、「売れる商品」が欲しいということを、販売元の企業様(つまりメーカー様)は忘れてはいけません。一般のスーパーに足を運ぶお客様の殆どはベジタリアン・ヴィーガン商品を買い求めに来ているわけではありませんので、売り場での商品の見せ方など、何を売るかだけでなく、”売り方”が重要になってきます。

もちろん、「ベジタリアン・ヴィーガン専門ショップ」などの特化型の小売店に対しては、「ベジタリアン・ヴィーガン商品」を押し出すことはお客様を呼び込む強いフックとなります。しかし、ターゲットを絞れば絞るほど大きな売上は見込めなくなるため、やはりビジネス的な観点からも、一般の小売店で如何に売っていくかが大きな鍵となるでしょう。

※スーパーの中には「ベジタリアン・ヴィーガン商品売り場」なるものを作るところもありますが、続いているケースはとても少ないです。

【参考記事】
ベジタリアン○○、ヴィーガン○○、大豆ミートの○○は見直しませんか?
【自治体・行政・公共機関向け】ベジタリアン・ヴィーガン”単体”での取り組みをお勧めしない理由
「え?その商品ベジなの?」ベジ・ヴィーガン戦略のポイントは ”ネーミング”
「大豆ミート」関連商品が売れない3つの理由とその解決策

ベジタリアン・ヴィーガン業界は今、幻滅期に入ったばかり

ベジタリアン・ヴィーガン業界の「幻滅期」を経て、当社にお問い合わせをしてくださった企業様は「回復期」を目指し、戦略を今まさに立て直しているところです。数年前のハラール業界においては、多くの企業様が撤退をしてしまいました。しかし、今回のベジタリアン・ヴィーガン業界についてはまだまだ成長が期待できる市場であり、且つ日本が世界を取れる大きなチャンスと思っているので、安易に撤退の道を選ぶことなく、挑戦を続けてほしいと強く願っています。

以上、長文となりましたが、ベジタリアン・ヴィーガン業界の幻滅期に苦しむ企業様によって本記事が有益な情報となれば幸いです。