脱「ベジタリアン・ヴィーガン・大豆ミート」マーケティングのすすめ
みなさん、こんにちは。フードダイバーシティ株式会社の守護です。
「ベジタリアン向けに商品開発したのですが、全く売れません」
「ヴィーガン認証を取りましたが、これから何をすればいいのでしょうか?」
「大豆ミート商品を作ったのですが、売れません。どうやって販路を探せばいいでしょうか?」
弊社には最近このような問い合わせが非常に多く来ます。そして取り組みをスタートしたにも関わらず、売り上げ不振で数か月も経たずに事業から撤退をする企業様もとても増えていますし、最近では大豆ミートを売り場の棚から落としていくスーパーマーケットも増えてきました。その中で先日「大豆ミートが売れない理由」という記事を書いたところ、とても大きな反響がありました。
とある大豆ミートを製造している食品メーカー様の開発担当からメールを頂いたのですが、「作る前に私も同じことを考えていたが、やはり予想通り全く売れなかったので、この記事を基に社内で方向転換の提案をしたいと思います」とのことでした。
またある卸企業様の営業担当からも「自分で食べても違和感のある商品を売ることに、正直かなりのストレスを持っていたが、記事を読んですっきりしました。次の社内会議で見直しにかけたいと思います。」というご連絡を受けました。
さらにある料理人の方からは「大豆ミートの臭みをどう消すかばかり考えていたけど、なぜ”使わない”という選択肢に気付けなかったのか」というお話も頂きました。実はこのように感じていらっしゃる方は、意外に多くいらしたのではないでしょうか。
今こそ考えたい一般消費者への見え方
事業者や消費者に向けて年間100本以上の講演を全国でさせていただいている私の感覚になりますが、まずこの分野で理解しなければいけないのは、大半の日本の消費者が下記のような状態であることです。
・ベジタリアン=サラダ食べる人
・ヴィーガン=なにそれ?(そもそも言葉を知らない)
・大豆ミート=大豆のお肉?なんか新しいね(でも、大豆の栄養が取りたければ豆腐食べます)
この場合、商品名に「ベジタリアン○○」「ヴィーガン○○」「大豆ミートの○○」であったり、ヴィーガン認証マークが目立つところに出ている商品があった場合、一般日本人消費者にはどう見えるのか?
・ベジタリアン向けの商品ね(私には関係ない)
・これなんのマーク?ヴィーガンって?(何だかよくわからない)
・大豆の味が強くしそう。。
となることが多いようです。
一方で、もちろんベジタリアンやヴィーガンの消費者や、それを推進している協会、認証機関などは「ベジタリアン○○、ヴィーガン○○、大豆ミートの○○」という表記をされるととても喜びますし、協会や認証機関にコンサルティングを依頼しているなら「マークや対応していることは大きく出しましょう」という提案を受けると思います。
しかしここは大多数の見え方を考えて、ビジネスとして売り上げを作っていくためには冷静に判断していかなければいけないところだと思います。なぜならば、ベジタリアンやヴィーガンの方と大豆ミート愛好家だけでは市場はとても小さく、一般消費者にしっかりと買っていただくためのマーケティングをしていかないと、持続可能な取り組みにならないからです。
つまりこの日本ではマーケティングをしっかりと考えて、ベジタリアン・ヴィーガン対応商品や大豆ミート関連商品を訴求していく必要があります。
ヴィーガンレストラン?野菜を使った和食レストラン?アレルギー対応レストラン?それはお客様に決めてもらうこと
東京自由が丘にあり、Happy Cowで世界一位の称号を獲得した菜道さん。多くの取材を受けていてとても注目度の高いレストランですが、楠本シェフはインタビューの際にいつもこのようにおっしゃっています。「当店は世界中の皆さんが一つのテーブルを囲むことができる様に、当店は動物性不使用、五葷不使用、化学調味料不使用というスペックで美味しい和食を作っているだけです」と。さらに「ベジタリアンやヴィーガンのお客様にはヴィーガンレストランとして、アレルギーをお持ちのお客様にはアレルギー対応レストランとして、野菜好きの方には野菜がたくさん食べられるレストランとして、お客様にそれぞれ判断していただければ嬉しいです。」ともおっしゃっています。
つまりカテゴリ分けはお店側でするわけではなく、お客様それぞれに判断してもらえばいいというスタンスで、事実はただ一つ「世界中の皆さん(ほとんど)が食べられるスペックで和食を作っていること」だけです。実際に菜道さんの半分以上のお客様はベジタリアンでもヴィーガンでもないお客様とのことです。この事例は商品作りでも同じことではないでしょうか?と弊社は考えております。つまりここで一番言いたいのは「ベジタリアン○○」「ヴィーガン○○」「大豆ミートの○○」という商品名を付けることで、対象のお客様を限定していませんか?ということと、もっと言うと商品名で商品の可能性を狭めてませんか?ということです。
例えばデパートなどの「多目的トイレ」の使用目的を決めるのはお客様側です。また「英会話習得」の目的をビジネスなのか、旅行なのか、国際交流なのか、これも決めるのはお客様です。そういう感覚で商品作りをするのがよろしいのではないでしょうか。
「Vegan first marketing」「大豆ミート first marketing」の使い方が重要
その商品の強みを説明するときに「ヴィーガン」を最初に持ってくるマーケティング手法を「Vegan first marketing」と私は呼んでいます。同じく「大豆ミート」を最初に持ってくるマーケティング手法を「大豆ミート first marketing」と呼びます。
商品においてはいろいろと特徴があります。
例えば、下記7つの特色があるラーメンがあったとします。
・味
・食感
・価格
・素材のこだわり
・大豆ミート使用
・動物性不使用
・ヴィーガン認証取得
これらで会社として一番推したい部分が「ヴィーガン認証取得」だった場合は「ヴィーガンラーメン」としてマーケティングをすべきであり、Vegan first marketingでいくべきです。また、推したい部分が「大豆ミート使用」であった場合は「大豆ミート first marketing」でいくべきです。
一番推したい部分が「味」や「食感」だった場合はそこを前面的に出していけばいいですし、「ヴィーガン」「大豆ミート使用」という情報は目立たないところにに少しだけ入れておけばいいです。もしくは「価格」だった場合は激安感を出して売ればよく、同様に「ヴィーガン」「大豆ミート使用」という情報は目立たないところに。
とにかく商品は第一印象がとても重要です。
「ヴィーガンであって、且つおいしい」なのか、「おいしい、且つヴィーガンである」では全く印象が違います。
そして一度定着した印象を変えるのはとても難しいです。
ちなみにVegan first marketingが有効になるケースは下記です。
・ベジタリアン、ヴィーガンのお客様だけに売りたい
・この分野にアンテナを張っている企業に売りたい
しかし、繰り返しにはなりますが、Vegan first marketingでビジネスベースに乗せることができるかを慎重に考えるべきです。
実際にVegan first marketingで、結局”特定のお客様にしか売れず”に撤退をしてきた企業はとても多くあります。では「Vegan first marketing」を使わずに、ベジタリアン・ヴィーガンのお客様にどうやって情報を届けるのか?
その答えはベジタリアン・ヴィーガンの方が見るサイト「Happy Cow」やコミュニティに”のみ”情報を出せばいいです。
もちろん弊社サイトは一般日本人や一般飲食店は見ないので、思いっきり「Vegan first marketing」「大豆ミート first marketing」を使ってOKです。
実際に下記のお店様は弊社サイトのみでヴィーガン対応情報を出していたりします。
https://fooddiversity.today/article_66363.html
最近の傾向として
先駆けて取り組んできた企業が「ベジタリアン・ヴィーガン”も”食べられる」にマーケティング手法を変えてきています。
オタフクソースさん
このようにオーガニックソースと題して、ベジタリアン認証取得、そして裏側にはアルコール不使用という表記もしっかりとあります。
つまりはこれはオーガニック、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリムを包括的に狙いに行った商品設計だと見ています。このソースがオタフクソースさんのベースとなれば世界展開がとてもしやすいですね。
王様堂製菓さん
機内食ニーズから始まったハラール認証でしたが、ベジタリアン認証に加え、2015年からはグルテンフリーにも対応し、より多くのお客様に食べて頂けるように設計されました。
どんどん食べられる方の枠を広げていっています。
結論として
弊社としては大きく下記3点に気を付けてマーケティングを行う必要性があると考えております。
1、商品名が「ベジタリアン○○、ヴィーガン○○、大豆ミートの○○」であったり、ヴィーガン認証マークが大きい商品は、一般日本人には違和感を持たれる
2、一般日本人にも売れる商品で、且つベジタリアン・ヴィーガン”も”食べられる商品設計が成果を出している
3、「Vegan first marketing」「大豆ミート first marketing」は特定の媒体・サイトのみで行う
弊社は皆様の企業努力をしっかりと成果につなげるためのお力添えができればと思っております。
引き続き何卒宜しくお願い致します。