今こそ立ち止まって考えるべきフェーズ

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

本日は日本における「Exclusive Halal」と「Inclusive Halal」について書きたいと思います(こちらは造語です)。どちらが正しい、どちらが間違っているかなどの話では決してなく、市場の理解が進んできた今こそ、ビジネスとして持続可能なやり方を考えなければいけないフェーズに入ってきたのではないか?という問題提起をしたいだけです。個人的には「オリンピックのときには」「今は投資の時期」「世界18億人のマーケット」という安易な言葉を信じ続けるよりも、このコロナを機にそもそもの戦略設計を考え直すのも一つでは?と考えています。

まず、言葉下記のように定義致します。
Exclusive Halal」:一般商品とは別で新しく「Halal商品を作ること」(飲食店やサービスも含む)。
Inclusive Halal」:一般商品のスペックを改良して「ムスリムも食べられるものにすること」(飲食店やサービスも含む)

例えば日本を代表し、世界で活躍する醤油会社2社のハラール対応はそれぞれです。共にハラール認証を取りながらも、商品名を「ハラールしょうゆ」としたキッコーマンは「Exclusive Halal」、商品名を「業務応しょうゆHL」としたヤマサ醤油は「Inclusive Halal」です。その他にExclusive Halalの代表例としてはハラール物流などもあります。
※「ハラールしょうゆ」という名前でスーパーで並んでいたとしても、一般日本人の多くは「?」で、ハラールの意味を知っている人でも「ムスリム専用の醤油」と認識します。

ケーススタディ1「カレーハウスcoco壱番屋」

2017年9月からハラール対応店舗で注目を集めたカレーハウスcoco壱番屋、大変残念ですが新宿店は2020年9月25日閉店し、秋葉原店は2020年10月28日に終了とのことです。

下記の表をご覧ください。

看板は緑色、店舗名は「ハラール新宿歌舞伎町店」

カレーハウスcoco壱番屋ではアレルギーとベジタリアン対策について、通常とは別商品であっても通常の店舗(黄色看板)で販売していますが、ハラール対策については別商品、別店舗、別看板という形で「Exclusive Halal」であることが分かります。緑の看板、宗教を明確に謳った店舗名、一般店舗と比べて若干の割高(ハラール認証コスト分)のお店では一般日本人の集客が難しいと思いますが、インバウンドで日本に来られるムスリム旅行者にはとても人気のお店で、弊社グルメサイトランキングでも常にTOP10入りしており、インバウンド施策としてはとても有効的だったと思います。しかしコロナでインバウンドが止まったこの時期に、頼みとなるのは日本国内在住のムスリムですが、母数は国内20万人~40万人と決して多くはありません。今後はコロナ以外にもインバウンドが止まることはありえると思いますので、それを見越した戦略が必要になってくると思います。

ちなみに外国人が運営するインドカレー屋さんやケバブ屋さんは、一般日本人客を普通に集客しているので「Inclusive Halal」です。今後カレーハウスcoco壱番屋が黄色の看板のお店で、アレルギー対応、ベジタリアン対応同様にハラール対応も行うか、注目したいと思います。

ケーススタディ2「業務スーパー」

長年、在住のムスリムに圧倒的な支持を得る「業務スーパー」ですが、「Inclusive Halal」で対応しています。例えばハラールミートに関しても下記画像のように販売しており、一般日本人客はハラールと知らずに「普通の鶏肉として」購入し、ムスリムは赤いハラールマークを見て購入します。業務スーパーではこのように一般日本人客をメインターゲットに置きながら、ムスリム「も」買うことが出来る商品がたくさんあります。

①豊富なハラール商品の品揃え
②ハラール商品だからといって高くない

上記がムスリムに選ばれ続けている理由です。また業務スーパーは、ハラール対応を実施する飲食店の多くが仕入れでも利用しているので、ハラール関係の売上シェアはかなり取れていることが予想されます。しかし、もし仮に業務スーパーが”ハラール専門業務スーパー”という「Exclusive Halal」なお店を展開したら如何でしょうか。もちろん日本在住ムスリムの方々は喜ぶかもしれませんが、一般日本人客がおそらく取れないので持続可能にはなりにくいと思います。改めてメインのターゲットは誰なのか、今回のコロナなども含めてあらゆるリスクを考えていくフェーズだと考えております。

ケーススタディ3「LIFE SCHOOL 桐ケ丘 こどものもり」

2020年10月5日、保育園としては日本初でハラール認証を取得したというニュースが出ていました。
https://fooddiversity.today/article_68183.html

情報を見る限り130名のうち8名がムスリムで、その8名にはハラール認証食材、ハラール専用調理器具、ハラール専用オペレーションにて提供をするとのことでしたので、こちらは「Exclusive Halal」で取り組んでいることが分かります。このニュースを見て私は「持続可能は厳しいのではないか」と感じました。その理由は下記です。

①ヴィーガンやグルテンフリー等の生徒がいた場合は、またその認証取って別オペレーションを作らないといけなくなる(公平性の観点から)
②人材が入れ替わると、ハラールの知識やオペレーションの引き続きはとても難しい(アレルギーのように一般知識ではないため、教育にコストと時間がかかりすぎる)
③働き方改革が叫ばれる中で「追加オペレーション」では現場に負荷がかかると、どこかに無理が出てくる(更にヴィーガン、グルテンフリーも言われた場合などは大変)
④ハラール認証費用に加えて、8人分だけ別食材を使用するとなると、全体的なコストが上がる

実際にこのような理由で「Exclusive Halal」が継続できなかった事例を私はこれまでたくさん見てきました。そこで、例えば一般生徒の食事も含めて全て豚肉とアルコール調味料なしで作る「Inclusive Halal」での対応であれば、上記の課題は大方解決できるのではないかと考えています。ここでも「持続可能にするために」という観点がとても重要だと思います。

まとめ

3つの事例を見てきましたが、決して「Exclusive Halal」がよくない、「Inclusive Halal」がいいという話ではありません。しかし今後ビジネスとして継続するためにも、企業内で「Exclusive Halal」で戦略を組むのか「Inclusive Halal」で戦略を組むのかの議論をしっかりと行うことが重要だと考えています。結果として戦略的に「Exclusive Halal」でいくというのも一つですし、「Exclusive Halal」でやってきた企業が「Inclusive Halal」に方向転換をするのも一つだと思います。当然、逆も然りです。

しかし弊社はこれまで多く「Exclusive Halal」で対応した企業のハラール事業撤退を見てきました。冒頭の繰り返しにもなりますが「オリンピックのときには」「今は投資の時期」「世界18億人のマーケット」という安易な言葉に疑いを持ち、過去の事例からも学び、持続可能な仕組みを検討すべきだと思います。

以上、長文乱文となりましたが、ハラール対応をこれから考える企業様、方向転換を考えている企業様にとって有益な情報になっていれば幸いです。
※本記事はアレルギー・ベジタリアン・ヴィーガン・グルテンフリーなど様々なルールも同様です。分かりやすいように「ハラール」に集中して書いております。