価値は食べるだけでなく、学び、感動を提供する
フードダイバーシティ株式会社の横山です。
今回はあえて物議を醸しそうなテーマについて考えてみたいと思います。
それは、「料理人はお客様のどこを満たそうとしているのか」という問いです。
このテーマを考えるきっかけになったのは、先日、訪日客と食事をしていたときのことです。
その方が「Wonderful」を何度も連呼していたので、なぜそんなに感動したのか理由を聞いてみました。
いろいろと語られていましたが、要するに新しい知識と共に食を楽しんでいたことが理由だったようです。
この経験から、私は「料理人はお客様のどこを満たそうとしているのか」について考えました。 食事を通じて満たせる場所は大きく分けて3つあると思います。
1. お腹:空腹を満たすという基本的な役割。
2. 舌:美味しさや味覚の満足を提供すること。言い換えるなら感覚欲。
3. アタマ:新しい発見や知識、体験からくる満足感。これは知的欲と言えるかもしれません。
ご一緒した訪日客が感動していたのは、この「アタマを満たす」部分だったのだと感じます。 新しい食文化や調理方法、食材の背景などを知りながら食を楽しむことで、ただの食事が「体験」として記憶に残るものへと昇華していたのです。
また、思い返してみると、日本でも名店と言われるお店では、お客様からの質問にしっかりと答え、フレンドリーに語る料理人が増えていると感じます。
かつては、職人気質で頑固なイメージの方が多かったものですが、それも今は昔。
料理の背景やこだわりを直接説明してくれるスタイルが増えたことで、食事を通じて「学び」や「体験」を提供する流れが広がっているのかもしれません。
料理人や飲食店は、これまで「お腹」や「舌」を満たすことに注力してきましたが、「アタマ」を満たすアプローチを意識することで、 より深い感動やリピートにつながる可能性があるのではないでしょうか。
たとえば、料理の説明にストーリー性を加えたり、 食材の由来や調理方法についての工夫を伝えたりすることで、 知的欲を満たす体験を提供できます。
お腹を満たすだけでなく、舌とアタマを満たすこと。 これが現代の料理人に求められる新たな使命なのかもしれません。 特に多様な文化や価値観を持つ訪日客にとって、 「食事を通じて新しい何かを知る」という体験は、 単なる満足を超えた感動を生む鍵となるのです。
料理を通じて、食べるだけでなく、学び、感動を提供する。その視点が、これからの飲食業界の未来を切り開く一歩になるのではないでしょうか。
(文責:フードダイバーシティ株式会社・横山)
著者
横山 真也
フードダイバーシティ株式会社 共同創業者
キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者
ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
日本と海外での複数の起業が評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)
NNA ASIA経済ニュースコラムニスト
著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部および東洋大学国際学部 非常勤講師