求められるのは数字
食の多様性対応を支援するフードダイバーシティ株式会社の横山です。
昨年12月に弊誌が報じた公募が各地で始まっています。当時報じたように、今年度の観光庁予算は昨年度比1.6倍超の約503億1,800万円となり、過去3番目の規模となりました。詳しくは当時の誌面をご覧いただくとして、弊社が感じている今年度の特徴をお伝えします。
いずれの公募でも明記されているのが、数字です。セミナーを開催し、試食も実施し、最終的に何社(何店舗)が食の多様性に対応できるようにするかが明記されています。いわゆる開拓した店舗数です。
これまでは「まずは知識を得ましょう。可能性を理解しましょう」といったレベルの事業が大半でしたが、今年度は一気に踏み込んだ「結果」を求められているのを感じます。
実際、委託者である地方公共団体の方たちと話すと、「国からの厳しい目を感じる」と異口同音に語られました。そうした背景があるからか、今年度は公募時期と委託者決定が早く、これまで以上に緊張感がある事業が増えていると感じます。
やる気のない事業者は追わなくていい
別の記事でもお伝えしましたが、中級編に至っているエリアでは、先行例の横展開に注力しています。どうやってメニューを食の多様性に対応させたか、社内で問題になったのは何か、それをどうやって乗り越えていったか、詳細に求められるケースが増えています。
また、中級編に至っているエリアでは「やる気のない事業者を無理に説得しなくてもよい」という指示も出ています。そこに費やすエネルギーはやる気がある事業者に振り向けるべきと、結果重視の姿勢が顕在化しています。
やってしまっている「独自のもの」
そうした中でも訪日客を混乱させかねない事案も散見されます。例えば、「エリア独自のマーク」です。「ムスリムフレンドリーです」「ベジタリアンフレンドリーです」といった認証されていると誤解されてしまうような事案です。認証とは保証であり、万が一の場合は発行団体が損害を保証することになります。発行団体が受託業者であっても、ケースによっては委託者責任も問われかねません。
食にルールを持つ訪日客に判断材料を示すことは重要ですが、提供者が保証する範囲や強度に責任を持てない限り、よかれと思ってやってしまっている「ロゴマーク」の掲出は控えた方が得策でしょう。
著者
横山 真也
フードダイバーシティ株式会社 共同創業者
キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者
ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
日本と海外での複数の起業が評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)
NNA ASIA経済ニュースコラムニスト
著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部および東洋大学国際学部 非常勤講師