MICEを誘致するために考えたい食事のこと

食の多様化を支援するフードダイバーシティ株式会社の横山です。

世界のMICE(会議・インセンティヴ・学会・展示会)市場が再び動き出しています。『MICEマーケットレポート2023』(リサーチ&マーケット社)によると、2022年8764億米ドルだった市場は2030年には1兆5633億米ドル、CAGR(年平均成長率は)7.5%に達すると予測されています。8年間で約1.8倍というのですから、その拡大スピードには驚かされます。

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MICEの中でも大きな成長が見込まれているのは会議の需要です。コロナ禍においては各国で中止が相次ぎましたが、22年はMICE市場全体の過半数を会議セグメントが占めました。オンラインが主流であったビジネスの場所が一気にオフラインに戻ってきていると言えるでしょう。

エリアとしてはアジア太平洋地域の貢献が大きく、22年1月から9月までで前年比3倍以上の海外客を迎え入れました。その影響もあって、プライベートジェット会社であるルナ・ジェッツ社(スイス)によると「23年に訪ずれるべきMICE旅行先」として、同地域からシンガポール、香港、バンコクの3都市を挙げました。日本は観光庁による「グローバルMICE都市(12都市)」などでMICEに注力していますが、残念ながらこのリストには日本の都市は含まれませんでした。

上記3都市のレストランやホテルは、多様化する顧客のニーズや嗜好に配慮し、フードダイバーシティ対応が基本となっています。たとえば、バンコクの多くのレストランでは、鶏肉や牛肉は基本的にハラール認証済みとなっています。また、ベジタリアンやヴィーガンメニューを希望する人が中身を簡単に確認できるように、それらの項目が明示されています。

これに比べ、日本ではフードダイバーシティに対する配慮が遅れているというのが現状で、MICEでの食事に関しては直前に大慌てになるケースが多々あります。MICE市場の場合、立地や設備が注目されがちですが、投資をあまり必要としないフードサービスの向上は、より多くの満足した顧客に繋がる可能性が高いといえます。

フードダイバーシティ対応は、多様な食のニーズに対応できるだけでなく、MICEに参加する方や観光客に対する印象向上にも繋がります。国際競争力を高めるためにも、今後はフードサービスの改善が急務といえるでしょう。

著者

横山 真也
フードダイバーシティ株式会社 共同創業者
キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者
ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役
日本と海外での複数の起業が評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)
NNA ASIA経済ニュースコラムニスト
著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部および東洋大学国際学部 非常勤講師