インバウンド対応の第一歩は訪日旅行者が「知っている料理」から

訪日外国人が増える中、多様な食のニーズに応える取り組みは、全国の飲食店で広がりつつあります。一方で、「対応したのにあまり売れない」という声を伺うことも少なくありません。その背景には、“料理そのものの知名度”という大きな前提が関係しています。

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海外旅行者がまず選ぶのは「知っている料理」

例えば、日本人がイタリアへ行った時も、最初に食べる料理は比較的決まっています。

  • パスタ

  • ピザ

  • リゾット

なぜなら、名前を聞いただけで味や形、量、食べ方などをイメージでき、安心して注文できるからです。そのため、「本場で食べたい」という意欲も湧きやすいでしょう。もちろん、まったく知らない料理に挑戦する人や、それを旅行の楽しみにする人もいますが、その割合は決して多くありません。この傾向は、訪日外国人にとっても同じです。

ただし、「イタリアはもう10回目」「イタリアに3年ほど住んでいた」というように、その国への理解や経験が深い場合は、未知の料理にも挑戦する傾向が高まってきます。つまり、その段階に至るまでには時間がかかるということです。

 郷土料理は、対応しても“選ばれにくい”ことがある

日本には魅力的な郷土料理が数多く存在しますが、場合によっては日本人でも知らないことがあり、また海外での知名度も必ずしも高くない場合があります。そのため、フードダイバーシティ対応を行っても、「そもそも名前を知らない」という理由で注文につながらないケースが多く見られます。

もちろん、「せっかく我がまちに来てくれたのだから、地元の味を知ってほしい」という思いもとても大切です。しかし現実には、まずは“知っている料理”を選ぶ人が多いため、郷土料理だけで勝負するのは難しいことがあります。地域の魅力を伝えるためにも、最初の一歩は“訪日客が安心して選べる料理”から整えていくことが有効だと言えます。

これは、料理の価値や魅力とは別の次元にある“情報の量”の問題です。

まず取り組むべきは「すでに知られている日本料理」

こうした状況を踏まえると、最初のステップとしては 世界的に認知されている日本料理に多様性対応を施すこと が、もっとも効果につながりやすいと考えられます。

  • ラーメン

  • 寿司

  • 天ぷら

  • うどん・カレー・たこ焼き など

これらはすでに「食べてみたい」と思われている料理であり、フードダイバーシティ対応を行うことで“選ばれる理由”が明確になります。

差別化は、十分な土台ができてから

郷土料理や店舗独自のオリジナルメニューをフードダイバーシティ対応することは、観光地の魅力を高めるうえで非常に意義があります。しかし、最初からそこに力を入れると、期待したほど結果につながらないこともあります。

そのため、次の順序が現場では効果的です。

  1. 知名度のある人気料理でしっかり成果をつくる

  2. そのうえで地域らしさ・独自性をプラスしていく

地に足をつけて取り組むことが、結果として地域の魅力発信にもつながっていきます。