「小麦を使っていないビール=グルテンフリー」ではない
暑い季節やイベント、食事の乾杯など、世界中で親しまれているビール。しかし、グルテンを避けている人にとって、一般的なビールは必ずしも飲めるものではありません。
「ビールなのに、なぜグルテン?」と思われるかもしれませんが、その理由はビールの主原料にあります。
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一般的なビールにはグルテンが含まれる
一般的なビールには、主原料として大麦麦芽(malted barley)が使われています。
グルテンというと小麦をイメージしがちですが、小麦だけでなく、大麦やライ麦もグルテンフリーの食事では避ける対象となります。
実際、英国のセリアック病支援団体Coeliac UKは、通常のBeer、Lager、Stout、Aleをグルテンフリー食には適さない飲料として挙げる一方、専用に製造されたグルテンフリービールやラガーが存在すると案内しています。
つまり、
「小麦を使っていないビール=グルテンフリー」ではありません。
ここは飲食店やホテルでも間違えやすいポイントです。
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What is the gluten free diet(英国のセリアック病支援団体Coeliac UKより)
では「グルテンフリービール」はどうやって作る?
グルテンフリービールには、大きく分けて異なる考え方があります。
一つは、そもそもグルテンを含む穀物を使わずに造る方法です。大麦や小麦の代わりに、米、ソルガム(モロコシ)、キビ、そば、キヌアなどを利用してビールタイプの飲料を造ります。
もう一つが、大麦麦芽などを使いながら、製造工程でグルテンを分解・低減する方法です。特に後者については国・地域によって表示制度や考え方に違いがあるため、「グルテンフリー」という言葉だけではなく、原材料や製造方法、各国の基準まで確認することが重要です。
英国・EUでは、グルテンフリー表示の基準として20ppm以下という基準が使われています。一方、発酵・加水分解された食品のグルテン測定については技術的な課題も指摘されており、Coeliac UKも大麦由来のグルテンフリービールについて、測定方法に関するさらなる研究の必要性を説明しています。米国FDAも、発酵・加水分解食品の「gluten-free」表示について、メーカーに対して原材料や製造工程、交差接触防止などを裏付ける記録を求めています。
「ビールはありますか?」の次に来る質問
訪日外国人への対応を考えると、重要なのは単にアルコールの種類を増やすことではありません。
たとえば、
「Do you have beer?」
には「Yes」と答えられても、
「Do you have gluten-free beer?」
となると、途端に選択肢がなくなる飲食店やホテルは多くありません。
しかし、食の多様性という視点で見ると、これは料理とまったく同じです。食でヴィーガン、グルテンフリー等を用意するのであれば、飲み物についても選択肢を考えることができます。特にビールは、大麦が原料であることを知らなければ「小麦を使っていないから大丈夫」と判断してしまう可能性があります。だからこそ、提供側にも最低限の知識が必要です。
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選択肢を提供する重要性
グルテンを避けているからといって、飲み物の選択肢が少ないわけではありません。
Coeliac UKでは、グルテンフリーの食生活で選択できる飲み物として、以下を挙げています。
- 果汁
- フレーバーウォーター
- お茶
- コーヒー
- サイダー
- ワイン
- シェリー
- スピリッツ
- ポート
- リキュール
さらに、専用に製造されたグルテンフリーのビールやラガーも選択肢として紹介されています。
大切なのは、「普通のビールが飲めないなら、ソフトドリンクを」という発想だけで終わらせないことです。ワインやサイダー、そしてグルテンフリービールなど、その人が自分で好きなものを選べる環境をつくること。「飲めるものを用意する」から、「選べる楽しさを提供する」へ。こうした視点が、食事制限のある旅行者の食体験をより豊かなものにしていきます。
「食」だけではない対応が感動を生む
フードダイバーシティというと、どうしても料理ばかりに目が向きます。
しかし、お客様がレストランで楽しんでいるのは料理だけではありません。ビール、ワイン、日本酒、ソフトドリンク。乾杯から食後まで含めて、一つの食体験です。
料理にはグルテンフリーの選択肢がある。そして、「ビールもグルテンフリーがありますよ」と案内できる。食事制限がある方にとって、こうした選択肢は単に「飲めるものが増える」というだけではありません。
「自分もみんなと同じように乾杯できる」
そんな体験そのものが、旅先での嬉しさや感動につながります。
もちろん、すべての飲食店やホテルが多くの種類を揃える必要はありません。大切なのは、「食べられる料理」だけではなく、その人が食事の時間そのものを楽しめるかという視点を持つことです。これからインバウンド対応を進める飲食店やホテルにとって、料理だけでなくドリンクまで含めて食体験を考えることが、もう一段上のフードダイバーシティにつながるのではないでしょうか。