備えておくべき中国からのインバウンド対策

こんにちは。食の多様化対応を支援しておりますフードダイバーシティ株式会社の守護です。

2023年4月29日以降、中国本土向けも含めて水際対策がほぼ撤廃される形となりました。いよいよ「中国インバウンドの再開」が目前に迫っている昨今、弊社にも「どのような準備をすればいいでしょうか」という問い合わせが増えてきました。

弊社からは「コロナ前の中国とは異なります」とお伝えしているのですが、具体的には2点大きな動きがあったので、これを知っておく必要があります。

1、フードロスについて

「中国で食事に招かれた場合、料理を少しだけ残すのが一般的なマナーです」と言うことを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。それは、少しだけ残すことで「食べきれないほど十分に料理を提供して貰いました、本当にありがとうございます」という気持ちを伝えるためと言われていました。

しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るう最中の2021年4月29日、全国人民代表大会常務委員会においてフードロスを防止する「反食品浪費法」が可決され、施行されました。この法律はフードロス削減による食料安全保障を目的とし、飲食店のみでなく消費者やメディアに対してもフードロスの削減を求め、怠った場合には行政指導または罰金を科すことが定められているものとなります。

具体的には、飲食店に関して料理を大量に残したお客様に処分費用を請求でき、また大量に注文するように促した場合には、最高1万元(約20万円 ※2023年6月30日の為替にて)の罰金を科すとしています。同じくメディアに対しても、大食いや食品を無駄にするような番組・動画を放送した場合には、最高10万元(約200万円 ※2023年6月30日の為替にて)の罰金を科すとしています。

訪日再開後、上記の法案にて中国人の意識が変わったことをしっかりと把握し、食事の量についてや、食べきれなかった料理の持ち帰りについてコミュニケーションを取っていく必要があると考えています。

ちなみに日本では未だにフードロスに対して具体的なアクションはないですし、大食い番組もゴールデン枠で放映されている状況です。

2、食肉について

2016年に中国政府は、国民の健康管理と気候変動対策と食料の安定確保を目的として、食肉の消費を半分にまで減らしていく方針を定めました。その後、アジアの持続可能性に関する調査・研究を行う「Good Growth」社の2022年における最新調査によると、中国の消費者の40%近くが肉の消費量を積極的に減らしていることが判明しています。

もちろん人口の多い国ですので個人差はあれど、肉を消費することに関する意識については変化していると捉えるべきだと考えています。これまで、中国人観光客から言われることが少なかったかもしれないベジタリアン・ヴィーガンメニューについても、インバウンド再開後には求められると想定します。

See Also

肉消費量を50%削減する中国の計画(英語)

以上となります。中国からのインバウンド再開が間近に迫っています。観光客数ではなく、観光消費額が目標となった日本の観光業ですが、日本としては各国の変化にしっかりと順応して、着実に消費額を上げていくことが重要だと考えています。

著者

守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師

1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。

お問い合わせ
info@food-diversity.co.jp