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オーバーツーリズムとムスリム市場の拡大による多様化対策
2025年6月11日(水)、クレセントレーティング社(シンガポール)とマスターカード(米国)が主催する「Halal in Travel Global Summit 2025」が開催されました。三日間にわたる会期の二日目となったこの日、フードダイバーシティ株式会社の横山がパネルディスカッションに登壇し、議論に加わりました。
パネルディスカッションのテーマは「Managing Overtourism through Inclusion: Growing the Muslim Market to Diversify Visitor(包摂を通じたオーバーツーリズム対策:ムスリム市場の拡大による観光客の多様化)」。登壇者はスペイン、インドネシア、そして日本の三ヵ国から。それぞれの国が抱えるオーバーツーリズムの課題と、その解決に向けた取り組みについて議論が交わされました。
スペインの事例として紹介されたのは、イスラム教のカレンダーに基づいた観光誘致策です。祝祭日を基軸とした柔軟な受け入れ体制により、旅行者の来訪時期を分散させることに成功しつつあるとの報告がありました。インドネシアからは、混雑が常態化しているバリ島の代替地としてロンボク島を位置づけ、観光客を誘導する戦略が功を奏していることが共有されました。
横山は「日本はまだ観光立国の途上にある」と述べたうえで、「日本人自体が国際化の途上であり、今こそ多様な価値観を受け入れを見直す時期」と語りました。そのうえで、栃木県佐野市の一例を紹介しました。ムスリム対応のラーメンを提供した一軒の飲食店がきっかけとなり、訪問者が増加。モスクの建設やクリケット場の整備といった変化が地域に起こり、今ではアジア大会の会場候補にまで成長しているという地域が変化していく様子を紹介しました。
「オーバーツーリズムの解決に特効薬はない」という点では三者の見解が一致しました。しかし、それぞれの国で起きている成功事例を共有しながら、官民一体となった長期的な政策推進の必要性について合意し、本セッションは幕を閉じました。