「できている状態」を目指すという視点

ヴィーガン、ハラール、グルテンフリー、アレルギーなど、フードダイバーシティへの対応は、これまで多くの現場において、一人ひとりの工夫や努力によって支えられてくるケースが多々ありました。これはもちろん素晴らしいことであり、日本の食の現場が持つ高いホスピタリティや責任感を象徴していると言えるのではないでしょうか。

一方で、現場の負担増や対応の属人化といった観点から見ると、こうした取り組みを長期的に継続していくことの難しさも、徐々に明らかになりつつあります。

そのため今後は、フードダイバーシティを「特別な配慮」や「追加的な対応」として捉えるのではなく、日々のオペレーションの中に無理のない形で組み込んでいき、「できている状態」を目指すという視点が、より重要になってくると考えています。

個人の知識やスキルに頼りすぎないための工夫

スタッフ個人の知識やスキルに基づく対応は大変素晴らしい一方で、担当者やその時々の状況によって、対応の内容や質に差が生じてしまうこともあります。こうした属人性は、長期的に現場の負担増加や対応の不安定さにつながる要因にもなり得ます。

そのため、誰が対応しても一定の水準が保たれるよう、あらかじめ仕組みとして整えておくことが重要です。

具体的には、

  • メニューや表示によって、何が選べるのかが分かりやすい状態にする
  • 判断を個人の裁量に委ねすぎず、ルールや基準を明確にする
  • 特別な対応をしなくても、日常業務の延長線上で対応できる形にする

といった工夫が考えられます。

このように、現場が無理なく回り、特別な意識を持たなくても対応が「できている状態」を目指すことが、結果としてフードダイバーシティを継続的に支え、現場の負担軽減にもつながっていくのではないでしょうか。

完璧を目指さず、分かりやすさを大切に

すべてのお客様が、常に完璧な対応を求めているわけではありません。むしろ、何ができて、何が難しいのかが事前に分かりやすく示されていること自体が、大きな安心感につながるケースも多く見受けられます。

対応の可否が曖昧な状態よりも、情報が整理され、誤解なく伝えられていることが、利用のしやすさを高める要素となります。

そのため、無理のない範囲で「できること」を明確にし、「できないこと」についても正直に伝えていく姿勢が重要です。すべての要望に応えようとするのではなく、現場の実情に即した対応内容を整理し、共通認識として共有していくことで、過度な期待や現場の負担を防ぐことにもつながります。

こうした分かりやすい情報提供を積み重ねていくことが、結果として多様な方々にとって利用しやすい環境を整え、フードダイバーシティを特別なものではなく、日常の選択肢の一つとして定着させていくことにつながるのではないかと考えます。

2026年に向けて

フードダイバーシティへの取り組みには、正解が一つあるわけではなく、地域や現場ごとに最適な形があるものだと感じています。だからこそ、無理のない範囲で、少しずつ運営の中に組み込んでいくことが大切なのではないでしょうか。

個人の知識や努力に頼り続けるのではなく、「特別な対応をしている意識がなくても、自然と選択肢が用意されている」そのような状態が、結果として多くの人にとって使いやすい環境につながります。

2026年を迎えるにあたり、フードダイバーシティを“頑張って対応するもの”ではなく、「できている状態」を目指す

そのような視点で、一歩ずつ取り組みを進めていくことを、皆さまと共に考えていければ幸いです。