ムスリム旅行者に求められる礼拝室
こんにちは、フードダイバーシティ株式会社の守護です。弊社はハラールなどの「食の多様性」をテーマにメディア、コンサルティング事業を展開しております。
いよいよコロナが明けてインバウンドが再開した昨今、日本全国の飲食店様、宿泊施設様、商業施設様より「イスラム教の礼拝室はどのように整備すればよろしいでしょうか」というお問い合わせを本当に多く頂いています。
本日は「イスラム教の礼拝室の整備方法」について、解説をさせて頂きます。
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まず最初に礼拝室に”正解”はなく、どこまで整備するかは各企業様次第となります。ここ日本はイスラム教の国ではないので、イスラム教徒の旅行者も「礼拝室があって当たり前」という考えでは決していませんし、または「自国ではこうだから日本もこうすべきだ」と考えている方もいません。基本的には「日本の受け入れ側が、できる限りの配慮をしてくれた」という姿勢に喜ぶ方が多いです。
ただし、旅行会社やツアーガイドの立場だと礼拝室の有無はお客様から必ず問い合わせを受けますので、旅行先や立ち寄り場所にも礼拝室のあるところを選ぶ可能性は非常に高くなります。
それでは早速どのような対応があるのかを見ていきましょう。まず礼拝室には大きく3つのパターンがあります。
パターン1 簡単なパーティションなどで仕切る
施設内の端や空いているスペースを活用して、簡単な仕切りで区切ります。飲食店様などであれば使用していない個室などを簡易的に貸し出すことも一つです。
パターン2 個室を作る(空き部屋の活用したり、建築前なら設計段階から用意)
商業施設などに多い形ですが、独立して礼拝専用の個室を作ります。
現在使用していない部屋を礼拝室にすることも可能ですし、これから建築予定の商業施設などであれば、設計段階から礼拝室を確保しておくといいでしょう。実際、最近OPENする商業施設の多くは礼拝室完備のところが多いです。
用意するもの:礼拝マット、足洗い場(可能であれば)、男女別室(可能であれば)
パターン3 多目的ルームにする
イスラム教徒のための礼拝室を作る際に「公共性の高い場所」においては「特定の宗教にのみ配慮することは、よくないのではないか」という内部意見が出てくるケースがあります。その場合は「Quiet Room」などの表記にして、礼拝もできる、瞑想もできる、静かに落ち着けるスペースにして、特定の宗教色を消す方法もあります。例えばDisney Seaなどでは下記のようなスペースを設けています。
番外編
多文化共生社会が当たり前に根付くイギリスのロンドンでは下記のように「Multi-Faith Room」として、礼拝室が用意されています。それぞれ12時から時計回りで「仏教」「キリスト教」「ヒンズー教」「イスラム教」「ユダヤ教」「シーク教」となります。
ただし、個人的には日本でこのようなスタイルはあまり馴染まないと考えています。
礼拝室に関してよくあるご質問
Q.水場は必須でしょうか?
A.必須ではありませんが、あればとても喜ばれます。
Q.キブラマーク(メッカの方向を示す矢印)は必須でしょうか?
A.自分のスマホなどで調べますので、必須ではありません。しかし、あれば喜ばれます。
Q.宿泊施設ですが、礼拝室は作るべきでしょうか?
A.宿泊者の場合は自室で礼拝を行いますので、特に必要ではありません。
Q.コンパスやクルアーンは用意したほうがいいでしょうか?
A.基本各自のスマホで対応しますので、必須ではありません。
Q.男女は必ず分けるべきでしょうか?
A.必須ではありませんが、分けられるのであれば分けたほうがいいです。
Q.個室の場合は、鍵をつけるべきでしょうか?
A.商業施設などであれば、セキュリティ上あったほうがいいと思います。
Q.礼拝室があることをどのようにPRすればいいですか?
A.イスラム教徒が普段から見る弊社サイトでプレスリリースを打つことが有効的です。プランBがお勧めです。
その他ご質問やお問い合わせはMail:info@food-diversity.co.jp までご連絡くださいませ(ご相談無料)。
著者
守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師
1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。
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