代替食品市場の最前線「イケア・ジャパン」と「焼肉ライク」各社に反響を聞いてみた
こんにちは。
「プラントベースで日本と世界をつなぐ」をミッションに事業を展開しているプラントベースジャパン株式会社 代表の山﨑です。
昨今、テレビや新聞でも「代替肉」や「プラントベース」、「ヴィーガン」をテーマにした報道を頻繁に目にするようになりました。観光庁の調査(2020年4月)によると2018年時点の世界のベジタリアン人口は6.3億人に達しており、同市場の年平均成長率は2020年から2027年の間で11.9%が見込まれ、7兆4200億円まで膨らむと予想されています (Research and Marketsより)。日本においても「コロナ」や「野菜不足」をきっかけにヴィーガンに興味を持つ層が増え、大手食品会社や外食チェーンの市場参入が相次いでいます(詳しくは「コロナで急成長するベジタリアン市場」の記事をご覧ください)。
今回はその中でも最前線を駆け抜ける「イケア・ジャパン」と「株式会社焼肉ライク」の2社それぞれに取材をし、日本の代替食品市場の現状と今後の展望についてまとめてみました。
未来を見据えた戦略
代替食やプラントベースフードに取り組むきっかけは各社様々ですが、現在最も注目を集めているのは「サスティナブリティ」の観点といっても過言ではないでしょう。
スウェーデン発祥のホーム・ファニシングカンパニーイケアは、地球環境に配慮し、サスティナブリティの維持を目的として、2025年に向けて同社レストランのメニューで使用される原材料の約50%を動物性から植物由来のものへシフトすることをグローバルで目指しており、「イケア・ジャパンでも目標達成に向けて動いている」とイケア・ジャパン カントリーフードマネジャー 佐川氏は語ります。
また焼肉ライク代表取締役社長の有村氏は、「海外ではバーガーキングやマクドナルド等、グローバルチェーンでも続々と導入が始まっている。10年後、焼肉屋でも代替肉が当たり前になる時代が来る」と予想します。
代替食に取り組む企業は5年、10年先の「未来を見据えた戦略」が根底にあるようです。
広がる顧客層、今までにない感動
「日本で最初に2015年にベジボールを発売しました。昨年、今年とプラントベースフードが新たに加わった時期と、都市部(渋谷や新宿)への出店時期が重なるので正確なことは申し上げられませんが、体感的に若いお客さまが増えているかなと思います(イケア・ジャパン 佐川氏)」
「初めて焼肉を食べたというヴィーガンの方の利用が増え、熱狂的な支持を頂いている(焼肉ライク 有村氏)」
代替食やプラントベースフードの提供を始めることで「顧客層が広がった」という話はよく耳にしますが、イケア・ジャパンのように若年層や健康志向層の獲得に繋がる例も少なくありません。また、焼肉ライクのように、ベジタリアンやヴィーガンといった今までリーチすることができなかった顧客層獲得も期待することができます。
ポイントは「購入ハードル」、最後は●●●●で勝負
取材を通じて分かったことは「まず食べてもらうこと」の重要性。焼肉ライクは2020年12月に、焼肉フェイクミートの全店舗販売を開始しましたが、その前段階として、同年10月に渋谷宇田川店で先行販売を実施し、焼肉セットメニューの注文者に対して無償サンプルの提供を行いました。「敷居を低くして”まずは体験してもらう”」を優先させたことで、SNSやテレビを通じて拡散され、一躍大きな話題を集めました。
しかし、焼肉ライク 有村氏はまだまだ購入ハードルは高く、特に価格面は今後の課題だと指摘します。
「もっと多くの人に試して頂くには「安くて美味しい」を実現しなければならない。通常の匠カルビが290円なのに対して、NEXTカルビ(代替肉)は320円と30円の価格差が生じている。(焼肉ライク 有村氏)」
一方でイケア・ジャパンのこだわりを伺ってみると、面白いことが見えてきました。
「イケア・ジャパンではイケアのアイコンになっている人気商品にオルタナティブな商品を追加している。また、イケアは基本的にはプラントベースの方が安価な価格になるよう設定している。(イケア・ジャパン 佐川氏)」
イケア・ジャパンのレストランメニュー「スウェーデンミートボール」は(8個)税込599円で、植物由来の「プラントボール」は8個税込499円で提供されており、プラントベースの方が100円安価な値段設定になっています。価格戦略の効果もあってか、ミートボールの購入者が60~70%なのに対して30~40%の方がプラントボールを選択しているとのこと。代替食やプラントベースフードの普及において、「価格」は大きなキーワードになりそうです。
また、同社のこだわりの一つに「味気なくならないような味付け」が掲げられており、通常メニューと同様の「おいしさ」は譲れないポイントだとのことです。
新たなオプションとしてのプラントベース
「海外に比べて日本のベジタリアン・ヴィーガンの人口は限られており、イケアとしては、人口増加の中での共存のために、お客さまに赤肉を食べない生活に触れていただく。イケアのアイコンになっている商品にオルタナティブな商品を入れていきたい。」と語るのはイケア・ジャパン 佐川氏。今後プラントベースフードはベジタリアンやヴィーガン用ではなく、新たなオプションとして一般の方向けにも普及される時代になるかもしれません。
ポイント
著者
山﨑寛斗(やまざき・ひろと)
プラントベースジャパン株式会社 代表取締役
「プラントベースで日本と世界を繋ぐ」をテーマに事業を展開。 海外のプラントベース企業の日本誘致や訪日ベジタリアン向けメディアなどの事業を手掛ける。 著:東京食素!美味蔬食餐廳47選、關西食素!美味蔬食餐廳55選、東京および関西のベジタリアンガイドブックを台湾で販売中。
https://www.plantbased-japan.com/
お問い合わせ
info@plantbased-japan.com