インド 日本食市場のパイオニアに直撃インタビュー「多様なインドの食事情」
2021年2月25日付けのYahoo! Newsで「印ココイチ インド人客は55%」というタイトルの記事が掲載されました。
2020年にインド進出を決めた同社によると「開店当初は日本人駐在員の割合が高く、2021年に入ってからインド人客の割合が現地日本人の割合を上回った」とのこと。
興味深い内容であったため、当社フードダイバーシティグループが運営するFacebookグループで当記事をシェアしたところ、コミュニティメンバーの方から、下記のコメントを頂きました。
「インドCoCo壱さんの側にある私の焼き鳥店『くふ楽』でもインド人客の割合が半数を超えました。3年ほど前まではインド人客は寿司ばかりオーダーされていましたが、ここ最近は焼き鳥、餃子、ラーメンが人気です。以前と変わらずベジタリアン(ラクトベジタリアンが多い)の方も多いですが、食に保守的だと言われてきたデリー周辺のインド人の食習慣がここ数年で大きく変化してきています。(株式会社KUURAKUGROUP 広浜さん)」
インドは人口に対するベジタリアン比率で世界1位(約40%)と言われており、食の多様化をテーマにしている弊社としても興味深い国の1つでした。
しかし、当メディアでも「多宗教国家インド フードダイバーシティレポート」の回を最後に、なかなか報じられずにいました。
そこで今回はインド 日本食市場のパイオニアである『株式会社KUURAKUGROUP』の広浜さんに「多様なインドの食事情」というテーマでお話を伺ってみました。
ーまずは自己紹介/会社紹介からお願いします
株式会社KUURAKU GROUPの海外事業を担当しております広浜と申します。弊社は1999年に設立し、今年で22年目を迎えます。「おしゃれな焼き鳥屋」というコンセプトからスタートし、現在は寿司やラーメンからフルーツサンドまで、幅広い業態を展開しております。また、日本に加え、カナダ、アメリカ、インド、スリランカ、インドネシアでも出店しております。
ーインドビジネスを始めたきっかけについて教えてください
当時からインドで私の従兄弟がレンタルオフィスやサービスアパートメント、ホテルなどを経営をしていたのですが、そのホテル内での飲食店出店の話が挙がったことがきっかけです。現地に純粋な日本食レストランはほとんど無く、日本料理が食べられるのはオリエンタル料理(韓国料理・中華料理・日本料理のフュージョン料理)の一部としてが中心でした。インド人にとって日本食は未知であり、受け入れられるか不安もありました。
現地で頑張る日本人を食の面から支えたいという社会貢献的な意味合いもあり、弊社は日本食業態での出店を決めました。
ー客層に関してですが、ココイチのようにインド人の方も一定数いらっしゃるのでしょうか?
最初の3年間は95%が日本人で、駐在員の方を中心にご利用頂いておりました。
しかし、現地の口コミサイトで星4.0以上(5点満点)を獲得してからは、徐々にインド人の方の利用が増えていきました。その結果、ここ1年で3~4割、コロナ後には6割がインド人という状態になりました。
特に中高所得者層の方が多く、平均客単価はディナーだと1,000ルピー(1,500円)、お酒を飲まれる場合だと2,000ルピー(3,000円)です。年齢層は30代〜40代の方が中心です。
今年でインド進出6年目を迎え5店舗まで拡大しました。
ーインドの日本食事情について教えてください
現在、純粋な日本食のみを展開しているお店はデリー周辺で10-20店舗のみです。中国料理はインドでも定番化され始めていますが、韓国料理や日本料理はまだまだメインストリームではありません。
しかし、前出の通り、オリエンタル料理というジャンルが存在しており、その中でも日本食メインの飲食店が増えてきた印象です。日本食の中でも寿司やラーメンがとりわけ人気ですが、インドの郷土料理「モモ」に似ていると言われる餃子も人気です。
ちなみに「モモ」もスパイスの効いたソースで食べるのが一般的です。くふ楽ではお寿司、焼き鳥が定番ですが、ベジタリアンの方からはベジ餃子とベジ坦々麺が人気です。
ーインドはベジタリアンが多いという話を聞いておりますが本当でしょうか?
はい、本当です。人口の約28%がベジタリアンと言われており、ラクトベジタリアン(肉魚卵×、乳○)が大半を占めます。そのためくふ楽では全商品の3割をベジメニューとして提供しています。健康面からよりも宗教的な理由で(ヒンドゥー、ジャイナ etc)ベジタリアンである人が多いです。
ちなみに、同じ宗教でも宗派や村ごとに様々なルールがあり、食べられる肉の種類が違ったり、肉食できる曜日があったりします。中には宗教的な理由ではなく「ご褒美」として週に1回だけお肉を食べる人もいるなど、インド人の中にも多種多様な食習慣があります。
▼インドではベジメニューに緑丸を、ノンベジメニューに赤丸を付けるのが一般的です
ーインドでの注意点について教えてください。
ヒンドゥー教徒にとって牛は神様であり、州によっては牛肉を持っているだけで逮捕される地域もあります。宗教上の理由でベジタリアンになっている方がほとんどですので、料理の提供側も配慮が必要です。
間違ってベジタリアンの方に動物性の食品を提供したことで大クレームに繋がったというケースも聞いたことがありますので、細心の注意が必要です。
ー今後の市場の広がりについて教えてください。
コロナの影響による行政の方針で一時的に営業を止めざるを得ず、売上0が6ヶ月続きましたが、直近3ヶ月で単月黒字に戻りました。
宗教、法律、言語、流通等、日本の常識が全く通用しない国ではありますが、現在中高所得者層が増加しており、今後のマーケット拡大に期待が持てます。
ー日本の事業者へのメッセージをお願いします。
違う文化背景持った人の理解と尊重があってこそ、日本のおもてなしができると考えています。
弊社のインドの店舗では、使っているお肉はピクトグラムで表示するなど、情報開示するスタンスを意識しています。絶対的な正解はありませんが、このようにまずはお店の方から歩み寄り理解する姿勢であることが大切です。
現在私の拠点は日本ですが、海外事業全般に携わる中で、「インバウンド対策セミナー」「宗教対応の講習セミナー」「居酒屋英会話(くだけた表現etc実践的な表現を学びます)」なども開催しております。
ご興味をお持ちの方は下記までお問い合わせを頂けますと幸いです。
http://www.kuuraku.co.jp/contact/