ゲストはここを見ている
成功する接遇には、事前の準備が欠かせません。事前準備こそが全てといっても過言ではありません。ゲストの期待を超える満足を提供するためには、あらゆる場面を想定し、臨機応変に対応する準備が必要なのです。訪日客の増加が続く中で、日本の施設やスタッフが求められる接遇の質はますます高くなっています。しかし、ゲストが何を期待しているのか、どこを見ているのかを理解せずに対応してしまうと、「わかってないな」と思われる結果になりかねません。では、ゲストが実際にどのような点を観察しているのかを具体的に見ていきましょう。
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接遇の基本:施設と雰囲気
ゲストが施設に入った瞬間から、接遇の評価は始まっています。まず、席の配置やスペース。席が十分にゆったりとしているか、隣の席との間隔が狭すぎないかといった点は、プライバシーや快適性に直結します。また、BGMや店内の音楽が雰囲気に合っているかも重要です。例えば、高級感を演出する場面であれば、静かで洗練された音楽が適切ですし、カジュアルな場面では明るく軽快な音楽が求められるでしょう。
さらに、他のゲストの層も評価ポイントになります。特にビジネス目的の接待では、周囲にどのような人がいるかで安心感や信頼感が左右されます。これらの要素を整えることで、ゲストに「ここを選んで良かった」という安心感を提供できるのです。
食事メニューとスタッフ対応
次にゲストが注目するのが食事メニューです。ただ豊富な選択肢があるだけでなく、「今だけ」「ここだけ」といった限定感のあるメニューがあるかどうかも重要です。訪日客にとって、その土地ならではの体験は非常に魅力的です。一方で、ハラールやヴィーガン、アレルギー対応といった食の多様性に配慮した選択肢が十分に用意されているかも欠かせません。これらの対応が不足していると、ゲストの満足度を大きく損ねる結果となります。
また、食事メニューの表示方法も重要です。ピクトグラムが小さすぎたり、わかりにくかったりすると、ゲストは混乱します。英語対応も含め、視覚的に直感的な情報提供が求められます。さらに、スタッフがメニューについてしっかりと提案できるか、ゲストの好みに応じたアドバイスを提供できるかどうかも、接遇の質を大きく左右します。
スタッフの身なりや歩き方、話し方、知識の深さ、そしてホスピタリティやフレキシビリティも、ゲストが厳しく見ているポイントです。特に外国人ゲストが増える中で、英語で話しかけた際に英語でスムーズに対応できるかどうかは、大きな安心感を提供できるか否かの判断に直結します。
ゲストが注目する「流れ」
接遇の評価には、施設内の「流れ」も含まれます。入店時の案内がスムーズか、待たされることがないか、また会計が迅速に行われるかどうかは、ゲストのストレスを軽減する重要な要素です。これらの一連の流れがスムーズであれば、ゲストは施設全体に対して良い印象を持つでしょう。一方で、案内や会計で滞るようなことがあると、ゲストは「もう利用したくない」と感じてしまいます。
「わかっている」施設を目指して
接遇における最も重要なポイントは「ゲストファースト」の姿勢を持っているかどうかです。施設の配置、メニューの工夫、スタッフの対応、すべてがゲストの立場に立った視点で設計されているかが問われます。ゲストが「自分のことを理解してくれている」と感じることができれば、満足度は飛躍的に向上します。
しかし、日本の現状は必ずしも理想的ではありません。例えば、日本のデジタル競争力は67カ国・地域中31位、英語能力は116カ国・地域中92位と低迷しています。このデータは、日本がいかに世界の基準から遅れを取っているかを示しています。特に訪日客にとって、言語や文化的な不安は旅行の大きな障壁となっています。
こうした状況を改善するためには、ゲストの視点に立った接遇を徹底することが不可欠です。「わかっていない」と思われないよう、事前の準備を怠らず、細部にまで配慮した対応を心がけることで、日本の接遇レベルを引き上げることができます。ゲストファーストを実践し、「また来たい」と思わせる体験を提供できる事業者は、大きな需要を獲得できるでしょう。