日本の食品業界の未来を考える

食の多様化を支援するフードダイバーシティ株式会社の守護です。

昨今、日本の食品製造メーカーとお話をする機会がとても多くあります。そこで感じることは国内市場と、海外市場と、インバウンド市場を分けて考えている企業様が多く、これはかつてガラケーに固執し、スマートフォンの普及に乗り遅れた日本の携帯電話会社の失敗と同じ状況だと見ています。

市場環境の変化をどう見るべきか

多品種小ロットで失う競争力

国内市場専用商品、海外市場専用商品、インバウンド市場専用商品と、それぞれを製造する多品種小ロットの生産方法では、価格、販管費がどうしても上がってしまい、これだと世界市場での競争力が不足してしまいます。そうなると、大規模な生産体制を持つ海外企業に対抗するのは難しく、世界でシェアを取ることはとても難しいです。

国内事業部が聖域化

多くの食品製造メーカーの国内事業部は、日本市場に焦点を当てた商品開発とマーケティングに集中しており、アレルギーに対する知識はあるものの、海外市場への食品規制やフードダイバーシティに関して知識はほとんど持っていません。しかしながら、企業の売上のほとんどが国内である場合、国内事業部は聖域になってしまうことが多く「変化は悪」という社内文化になっていき、世界市場で成功するための戦略や商品開発が後手に回っています。

世界市場を目指す必要性

一方、世界の食品会社は最初から世界流通を見据えたグローバルな視点で商品開発を行っています。これにより、国境を越えた需要に対応し、広範な市場で成功を収めています。日本の食品業界も、同様の視点を持ち、世界市場をターゲットにした商品開発を進める必要があります。

未来への提言

日本の食品業界は国内市場に依存したまま、世界市場での競争力を失い続ける可能性があります。スマートフォンの普及に乗り遅れた携帯電話会社のように、革新と進化を怠ることで、世界市場から一気に取り残されていきます。

これを防ぐためには、以下のような対策が必要だと考えます:

  1. グローバル視点の導入:国内事業部の聖域化を防ぎ、全社員が海外市場の動向、輸出規制、フードダイバーシティに関する知識をつける
  2. 効率的な生産体制の確立:多品種小ロットではなく、世界流通スペックを見越して大規模かつコスト効果の高い生産方法を模索する
  3. 明確な経営方針:人口減の社会を迎える日本にとって、世界市場への展開が企業の重要方針であることを明確に発表する

日本の食品業界がガラケーからスマホへの進化を遂げるためには、これらの取り組みが不可欠です。国内市場だけでなく、世界市場を見据えた戦略を持つことで、真のグローバル競争力を手に入れることができると考えています。

著者

守護 彰浩(しゅご あきひろ)
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役
流通経済大学非常勤講師

1983年石川県生まれ。千葉大学卒業。2006年に世界一周を経験後、2007年楽天株式会社に入社し、食品分野を中心に様々な新規事業の立ち上げに関わる。2014年、多様な食文化に対応するレストラン情報を発信する「HALAL MEDIA JAPAN」を立ち上げ、フードダイバーシティ株式会社を創業。ハラールにおける国内最大級のトレードショー「HALAL EXPO JAPAN」を4年連続で開催し、国内外の事業者、及びムスリムを2万人以上動員。さらに2017年からはハラールだけでなく、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャ、グルテンフリー、アレルギーなどに事業領域を広げ、全国自治体・行政と連携しながら普及のための講演活動、及び集客のための情報発信を行う。2020年には総理大臣官邸で開催された観光戦略実行推進会議にて、菅総理大臣に食分野における政策を直接提言した。著書に「開国のイノベーション」(株式会社スリースパイス)。

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