2016年9月28日
日本から海外に出張する際に、お土産に悩んだことはありませんか。そのお土産がムスリム(イスラム教徒)へのものだとしたら、何を買えば良いのでしょうか。増え続ける訪日ムスリム客にとっても、旅の最後の悩みはお土産です。ハラールに対応した飲食店舗が増える中、母国へ持って帰って喜ばれる日本のお土産として、彼らは何を選んでいるのでしょうか。今回は日本からの出張者にも役立つ、訪日ムスリムのお土産事情をご紹介します。
日本の味、手軽に買えるお菓子が欲しい
まずご紹介するデータは「どんなお土産を日本で買いたいですか」に対する回答結果です。これはハラールメディアジャパンが運営しているFacebookグループ「ムスリムフレンドリーインフォメーション・イン・ジャパン」の調査によるもので、同グループには在日ムスリム、海外ムスリム、ハラール市場関係者の約4万人が参加しています。
ランキング1位はお菓子(スナック)、2位はスイーツ、3位がお茶という結果が出ました。5位のラーメン、7位のお餅を合わせると、食べ物で64.3%を占めています。この数字は偶然にも観光庁による「訪日外国人の消費動向調査」(2014年)による物品購入率・菓子類の割合が63.6%だったのとほぼ同水準ですが、いずれにせよ日本の味をお土産にしたいというのふぁ、訪日観光客全体の思いだといえます。
では、ムスリムが購入している菓子類の多くがハラール認証を得ているかというと、そうでもありません。塩やノリだけを使った米煎餅やあられ、天然酵母の饅頭、はちみつ味のスイートポテトなどは、ハラール認証を得ていなくてもムスリムに買われています。ハラール認証は、食品加工が複雑になったことで、何が入っているのか、何を使っているのかといったニーズが生じ、それに応えるために生まれたものですが、昔ながらの素朴な菓子類は余計なものが入っていないので、心配する必要がないと考えられているのです。
待たれるブランド菓子のハラール化
「日本のキットカットはハラールですか?」ハラールメディアジャパンを開設した当初、一番多く寄せられた質問がこれでした。キットカットはスイスのネスレ社が製造している世界的なブランド菓子ですが、調べてみると、日本のキットカットにはハラールマークがない上、季節限定のものや地域限定ものが数多く販売されていることが分かりました。マークがないものをハラールだとは報じられませんので、ハラールメディアジャパンでは日本語の成分表をできるだけ詳しく英訳して情報提供していましたが、それを見て購入するムスリムもいれば購入しないムスリムもいることが分かりました。購入しないムスリムにとっては、ハラールではないものをお土産として買って帰るのには、慎重にならざるを得なかったのでしょう。
キットカットに次いで問い合わせが多かったのがグレープストーン社(東京)の「東京ばな奈」です。インドネシアで類似品が出回るほどの人気商品ですが、本稿執筆時点でハラール認証は得ていません。成分表によると一部商品に洋酒が使われていますので、食べたくても食べられないといったムスリムもいます。空港でお土産として購入するムスリムが多数いる一方で、「ハラール化して欲しい」という声も少なくありません。
北海道の名産品「白い恋人」もハラール化が待たれる商品です。国内では超ロングセラーのこの洋菓子もまだハラール認証は得ていませんが、成分を英語で表記するなどして訪日観光客に対する情報開示を進めています。手頃な価格、美しいパッケージ、甘くて優しい食感といったお土産に最適な要素を備えているこの商品は、ヨックモック社(東京)のシガールに続く世界ブランドの可能性を秘めているというムスリムもいます。
スーパー、空港、免税店、そしてカフェでも?
ハラールメディアジャパンの調査で、訪日ムスリムがお土産を購入する場所としては、スーパー、空港、免税店の3ヶ所が多いという結果があります。価格帯の安いスーパー、最後のチャンスで買う空港、品揃えが豊富な免税店といったところでしょうか。スーパーでは来日中に自分が食べてみて美味しかったもの、空港ではお土産として有名なもの、免税店ではハラール認証品を求める傾向があるようです。
意外な場所としては、東京駅のカフェがあります。ハラール認証を取得済みのバームクーヘンが販売されており、一般客に混じってムスリム客が購入しているそうです。かくいう私も、先日訪日したムスリムの友人からお土産として一ついただきました。彼は「日本でハラールのお土産を買えるなんて今でも信じられない」と言っていましたが、この言葉通り、日本のハラール対応はまだ始まったばかりなのです。
次回は世界的に注目されているムスリムファッションについて取り上げます。意外と知らないその中身と市場動向について、また11月に開催される日本初のムスリムファッションショー TOKYO MODEST FASHION SHOWの見どころについてご紹介します。
<筆者紹介>
横山真也
Yokoyama & Company (S) Pte Ltd マネジングディレクター
ハラールメディアジャパン株式会社 共同創業者
ハラール関連事業としては2014 年元日に「世界初 の英語発信による日本ハラール専門ポータルサイト」HALAL MEDIA JAPAN を開設、同年にはハラール・ベジタリアンレストラン検索サイト・アプリHALAL GOURMET JAPAN をサービスイン。日本最大のハラー ルイベントであるJAPAN HALAL EXPO を14 年と15 年の2年連続で幕張メッセなどと共催、合わせて約1万人を動員した。